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【社内報】なぜ、“魅力”を感じているのか?

化石になる瞬間

私が社内報というものに従事してからかれこれ15〜6年は経つかと思います。製鉄、空調機器、医療機器、医薬、造船、センサといったメーカー系もあれば、小売、外食、人材派遣といったサービス系、ちょっと変わったところでは高速道路のパトロールという企業もありました。

昨日は世界的企業のトップの取材、今日はスーパーのパートのおばちゃん、明日は工場のベテラン社員……とまぁ、幅広く、いろいろな方を取材しました。

私が共通して伝えたかったのは、皆さんの“眼差し”です。例えばパートのおばちゃん。取材中、カメラ目線で写真を撮ると照れがあるのか、ビシッと決まってくれないんですが、いざお客様の前に出ると無茶苦茶いい表情になるんです。「作られた笑顔」じゃない、まさに「真剣な笑顔」なんです。

私が敬愛するライターに山際淳司という人がいました。彼がスポーツを描くときにこういうことを意識して書いていたそうです。――一瞬が化石になる瞬間を描きたい。

まさに、私も仕事中の一瞬一瞬が消え去るような瞬間を書き留めておきたいという思いがありました。その人がどんな思いで仕事をしているかは他人には分かりません。でも、その瞬間を書き留めておくことは非常に重要です。そういうものを広く社内に伝えていき、どんな仲間が仕事をしているのかを知らしめていくことは大切なことだと感じました。

「企業はモンスターではない」

現代の社内報は、さまざまなモチベーションを持った社員を同じ方向へと向けていくことが重要な役割としてあります。しかし、そこには社員一人ひとりが存在していることを忘れてはいけません。

「人間」がいるということは、それぞれ仕事に対する思いの強弱もあり、方向性もバラバラです。それが「人間」ですからね。それらをどのように折り合いをつけていくかが大切ですし、そういう人たちをひっくるめて同じように方向へ持っていくかが企業の大きな役割でもあります。(だから経営理念・企業理念というものがあるはずなんですが、かなり蔑ろになさている企業様もあおりのようで……)

社内報の仕事を遂行する中で、影響を受けた考えがあります。それはダイキン工業の「人基軸」という考えでした。

企業は一見するとモンスターのように一人でに勝手に動いているように思えるけど、それは大きな間違い。そこに集う社員一人ひとりがいてこそ、初めて企業が成り立つ――そんな感じです。井上会長に取材をさせていただいた際にそんな説明を受け、「だから社内広報は重要だ!」と私が思うきっかけとなった考えです。

経営層はとかく、自分たちが考えた戦略が正しいと思うことがあります。しかし、その戦略を実行に移し、成功へと導くために重要なのは、社員の思い・理解・モチベーショなどです。

社員が後ろ向きなのに、前へ前へ行こうとする経営戦略は果たして成功するでしょうか? 経営層はイケイケドンドンと思っていても、そもそも離職率が無茶苦茶高かったらその会社はどうなるでしょうか? 言わずもがな空中分解しますよね。成功どころの騒ぎじゃありません。会社存亡に関わる危機ですよ。

そこには、社員の理解がないといけません。「会社はナニを考えているんだろう」「社長はどう思っているのだろうか?」などと社員が口にするような会社は、社内広報が充実しているとは言い難いでしょう。

もう一度言います。企業はモンスターではありません。

社内報は単なる福利厚生ではない

こう考えると、社内報は単に福利厚生的に発行されている媒体ではないことが理解されるかと思います。それこそ「昭和の社内報」はそれでよかったのかもしれません。

しかし、21世紀の社内報は、企業内の課題解決に向けた取り組みを行うための「組織編成」、「人材研修」、「経営会議」などと同等の扱いになっていくべきなのです。それだけ社内報に経営課題を解消するための役割を負荷させていくべきだと考えます。

なので、以前にも書いていますが社内報のコンセプトに経営理念、中期ビジョン、経営課題を反映させていきましょうというのはそういう意味合いからでもあります。

単なる「企業内情報誌」的な扱いなら、私は「じゃ、廃刊しましょう」というでしょう。だって、労力とコストの無駄です。その浮いた労力とコストを他のところに使った方がどれだけ有益か分かりません。そもそも一般書籍の情報誌でさえ部数を大きく落としています。「企業内情報誌」なんて誰が読むんですか?

21世紀の社内報は「経営戦力ツール」です。経営資源を使って制作する社内報ですので、「今回の社内報、面白かったね〜」だけじゃダメなんです。その戦略ツールにどれだけの「戦略」を考えられるかが、社内報担当者としての“力量”かもしれません。

「人基軸」の中心となる社員にどのような影響力を持たせることができるか、どう感じてもらいたいか……そんなことを考えて、形にすることこそが社内報の大きな魅力、だと思うんです、私は。

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