アニメ『ゴールデンカムイ』36話(終) 生きる

 キロランケが鯉登にのしかかり、鯉登が右腕で相手の攻撃を防ぐ体制に。はぐれたソフィアは、そんな二人を双眼鏡で見つけます。
 そんな中、アシリパも思うところはある。アチャは何をしたかったのか? 杉元からキロランケがウイルクを撃たせたと聞かされます。彼の狙いは何? 

決戦

 鯉登はキロランケの腹部に刺さったマキリを抜き、相手の頸動脈を狙います。咄嗟のところでキロランケが防御したものの、やはり鯉登はおそろしいところがある。敵の急所なり、正中線をきれいに反射的に狙いに行けます。とはいえ体重差もあり、キロランケは鯉登に刺したマキリに全体重をかける、このままでは危険だ!
 すると月島と谷垣が、キロランケを撃つのでした。倒れたキロランケにとどめを刺すべく、鯉登は銃身に刺さった軍刀を回収する。と、ここでキロランケが爆弾を投げる。鯉登が軍刀で敵の爆弾を真っ二つに切り裂いて、威力を低下させます。原始的な爆弾ですので、二つに割って点火する爆薬を減らすとダメージが低減されます。鯉登の戦闘力が高いとわかる、そんな局面です。
 月島が谷垣に撃てと命令すると、アシリパがここで追いつく。聞かなきゃいけないことがあると言います。ここで遠くからキロランケの死を見ていたソフィアと、彼女を比べてください。


 アシリパのほうが冷静で、涙ひとつこぼさず、父の死の真相を掴むべく質問をしている。少女ということに騙されるかもしれませんが、彼女は本当に賢いのです。
 アシリパが、アチャの教えてくれたことを思い出したと聞き、キロランケはホッとしています。その脳裏には、樺太の旅のことが思い出される。この一行も、スチェンカやバーニャめぐりをしたようです。
 北海道。そして樺太のアイヌはどうなるのか。そう思ったところで、彼の未来はもうない。ただただ、故郷の光に包まれて、彼の目から光が消えてゆきます。
 白石は、この氷はアムール河が凍ったものだと語る。故郷の水とひとつになるキロランケ。真面目すぎる男だったと白石は語ります。白石という作中随一のトリックスターがそう語ると、胸に迫るものがあります。

キロランケの戦う理由とは?ゴールデンカムイ19巻を深堀り考察! https://bushoojapan.com/jphistory/kingendai/2019/09/19/131440 #武将ジャパン

 そうかもしれない。自分には何もできないと静観する人生だってあっただろうに。彼はそうできなかったのです。
 キロランケの遺体を氷で覆ったあと、杉元とアシリパは人影を見つけて走ってゆきます。鯉登が自分の判断をあおげというものの、初対面でアシリパからなめられてしまいます。ちょっと寂しい顔の鯉登です。
 ソフィアは自分を追いかけてくるはずだと、アシリパは言います。ひとまず北海道へ戻ることに。確かにソフィアは、坊やことキロランケを葬り、アシリパを追いかけてくることがわかります。

帰国へ

 そこにいたのは岩息でした。鬱陶しいほど暑苦しいとはいえ、負傷した月島を抱えるためにも便利といえば便利。次あったら殺すと伝えた相手に抱き抱えられた月島の心境はいかばかりか。まあいいんじゃないのぉ。なんでも海沿いに入国しようとしていたそうですよ。

 このあと先遣隊は、ニヴフの村へ。尾形も連行してきました。尾形の目的はなんだろう? しょうもねえ目的なら気兼ねなく殺せると目をぎらつかせる杉元です。
 月島はスヴェトラーナに、島を出たい気持ちへの理解を示しつつ、親に手紙を書くように伝えます。必ず届けると。生きていることさえわかれば暗闇から抜け出せると語る月島。彼の中でいご草ちゃんの生死がどうなっているかについても、気になるところです。
 スヴェトラーナはサンクトペテルブルクで成り上がると野心を見せます。このあとすぐ、ロシア革命ですね。さあ、どうなることやら。ひとまず彼女は岩息とともに大陸浪人になるそうです。満洲国近辺で大暴れすると。馬賊だよ、馬賊。2008年の韓国映画『グッド・バッド・ウィアード』が、彼らの生活を伝えてくれるとは思います。オススメです。
 そうそう。かつては満洲だ、大陸浪人だ、そう言い日本人がテンションあげて渡っていたんですよね。

もすっ!

 鮭の皮をなめして使う文化のお勉強です。ニヴフの模様や色彩感覚までアニメは再現しますから、大変ですよね。ニヴフの村で、モスという料理をふるまわれます。魚の皮をすりつぶし、コケモモ、ガンコウランを加え、アザラシの油で味をつけたゼリー状のもの。寒天みたいでおいしいと杉元と白石も味わっています。
「もすっ!」
 父の口癖を思い出し、ハイテンションになる鯉登。こいつはしょうもないことで浮かれるからさ。父上を思い出したとウキウキワクワクしていると、月島が父上も喜ぶ、鶴見中尉殿も喜ぶというもんだから、鯉登ははしゃいでモスを月島にも食べさせようとします。口でなく、顔面にのっけられますが。このあと、顔の筋肉を使ってなんとか食べたらしい。鯉登は手伝っていない。鯉登はやることが割と雑というか。キロランケのマキリも無造作に抜いていましたが、ちょっと乱暴なんですよ。で、痛覚が鈍いからそういうことにますます雑になると。
 シロヨモギで治療しようにも、尾形は治らない。そうニヴフの村人から聞かされ、杉元は医者に見せようとします。密航者で日本兵なのに、そんなリスク冒してどうするんだと鯉登。ただ、月島もちゃんと治療した方がいいだろうと言われると渋々でも従うしかありません。彼なりに負い目はある。ただ、尾形は心底どうでもよい、それが鯉登だからさ。

手術室からの逃走

 かくして、鯉登が文句を言いつつ医者のところへ。変装したものの日露戦争に従軍した医者からすぐさま見破られ、杉元は銃をつきつけニヴフの村まで医者を連れてきます。ワイルドですな。
 医者は月島の「女の子を取り戻しに来た」という説明を聞きつつ、尾形は治せないという。医院まで行かないといけないって。リスクが怖い、慎重な鯉登は尾形ごときにそんなことしたくない、いいかげんにしろと反対するものの、杉元の迫力に折れたかたちで医者に従うことに。
 尾形を救ったとしてもどうにもならんと文句たらたらの鯉登。医者は明日の朝まで持たないという。杉元もアシリパも複雑な顔なのに、鯉登は死ぬのを確認するとそっけない。まあ、生きていると何やらかすかわからんし、死ぬのを確認するんだという、前向きな彼なりの問題解決思考だとは思う。
 あと鯉登。作中でも屈指の猜疑心の強さがある。樺太編後半でそれがむくむくと顔を出してきた。

 尾形はどうなるのか? 杉元がなんとか助けられないか頼もうとすると、手術室には尾形がいない! 窓が空いている、ここから逃げたと杉元は銃を装填しつつ外に飛び出します。
 しかし、鯉登はまず手術室を確認する。これも鯉登らしいのですが、自分の目で、出発地点から確認しないと気が済まない性格なのです。極端に慎重か、雑か。そういう振り幅がでかい奴なのです。

バルチョーナク

 鯉登は倒れた医師を介抱します。彼は「後ろ……」とつぶやく。振り向くと、看護婦に刃物を突きつけた尾形がいました。銃を咄嗟に向けるものの、尾形は医者に鯉登を殴り倒すように命令します。ロシア語を尾形が話せることにハッとする鯉登。尾形は鯉登の手から拳銃を奪い取り、こう言います。
「バルチョーナク」
 杉元らの気配を察した尾形は、鯉登に蹴りを入れてそのまま逃走。手術着でよく逃げられるもんです。凍士しない? 褌もつけずに馬に乗って大丈夫? そう心配したくもなりますが、杉元もなんかうれしそうだし、尾形もうっとりしているし。気持ち悪ィ。いいんじゃないすかね。問題は、何か思い出しちゃった鯉登ですが。そのあれやこれやはシーズン4! 鯉登少年期の声優はさあ誰だ! 鹿児島の色彩や風景も担当するスタッフも大変だ! でも、できれば来年には頼む!

相棒契約更新、そして次へ

 このあと、原作から時系列をずらしつつ、最終回らしい確認へ。金塊争奪のことを話し合う杉元とアシリパ。杉元は言えません。ウイルクが、アシリパをアイヌを率いて立つ戦士として育ててきたことを。相棒の契約更新を確認して、次のシーズンへ向かいます。

 幕末京都から、樺太まで。新選組と維新志士の斬り合いから、アムールトラまで。声優さんはロシア語をマスターしなければならないし、ともかく無茶苦茶大変だったと思います。次のシーズンも応援しています。こんなに努力しているよいアニメはそうそうないと思います。傑作です、お疲れ様でした!

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『ゴールデンカムイ』アニメ、本誌、単行本感想をまとめました。無料分が長いので投げ銭感覚でどうぞ。武将ジャパンに掲載していました。歴史ネタでより楽しめることをめざします。

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