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【特集:みんながつながるケアのまち①】市民の居場所の視点から~コミュニティ喫茶『元気スタンド・ぷリズム』の取り組み~

※この記事は「ケアラータイムズ 第5号」(2023年4月号)からの転載です。

2025年問題を目前に、「超高齢化社会」となる日本に住む私たちにとって、介護の問題はもう待ったなしの状況です。全人口の4人に1人が75歳以上の高齢者となり、医師・看護師の不足そして介護人材の不足が深刻化していきます。また、1世帯当たりの人数の減少も深刻で、2020年の国勢調査では全国平均が227人。一人暮らしの高齢者は、5年前の前回調査に比べ133%増の671万人を超えました。これまで家庭に丸投げされてきたケアから、まち全体、社会全体でのケアに転換していかなければ、日本社会はもはや立ち行かなくなるでしょう。では、私たちはどんなまちを目指していくべきなのか、参考となる先進事例や新しいシステムはあるのか、今回はさまざまな視点から、目指すべき“ケアのまち”について考えていきたいと思います。

コミュニティ喫茶『元気スタンド・ぷリズム』
2007年、埼玉県幸手市の幸手団地の一角にオープン。「押し付けない介護予防」をコンセプトに、団地で一人暮らしをする高齢者が立ち寄れる、温かい居場所を提供している。『いろどり弁当セット』(650円)など、豊富なメニューが揃う。2012年には、『暮らしの保健室』(毎月第3水曜日)をスタート。2022年に15周年を迎えた。

◆回答者・小泉圭司さん(元気スタンド・ぷリズム合同会社代表社員/NPO元気スタンド代表)
◆聞き手・吉良英敏、ケアラータイムズ編集部

Q 『元気スタンド・ぷリズム』をオープンしたきっかけは?
A きっかけは、「2007年問題」。家庭より仕事を頑張ってきた団塊世代が大量に定年退職して、家庭にも地域にも居場所がなく孤立してしまうという問題が発生しました。生きがいをなくして外出しないと、食欲も出ず、筋力が下がり、病気や介護リスクが高まります。病気や要介護になると、外出しなくなるという悪循環…。社会からの孤立が介護リスクを高めるため、「地域でコミュニティがつくれる喫茶店をつくりたい!介護予防を広めたい!」と思い、当店をオープンしました。
当店に声を掛けていただきました。現在は毎月第3水曜日に開催しており、「何かあった時にすぐ相談できる場所」となれるのが理想ですね。

Q 「介護予防」してくれる喫茶店はなかなかないと思います!
A そうですね。当店は、「押し付けない介護予防」がコンセプトです。だからうちでは体操もしません(笑)。でも、昭和の懐かしい曲をBGMとして流しているので、頭の体操が自然にできますよね。ここに来れば誰かと話せる、ここに来ること自体も運動。こういう場所が地域にたくさんあれば、新しいつながりができて、高齢者が元気でいられるのではないかと思っています。

Q 『元気スタンド・ぷリズム』は、『暮らしの保健室』を実施した1号店なんですよね?
A そうなんです。『暮らしの保健室』は、医療や健康に関するよろず相談所。カフェや体操教室など人の集まる約50か所で実施しています。なぜ当店が1号だったかというと、東埼玉総合病院の中野智紀先生との出会いがきっかけです。2012年の病院移転の際に、地域密着型の病院を目指すべく、様々な地域活動をしていた当店に声を掛けていただきました。現在は毎月第3水曜日に開催しており、「何かあった時にすぐ相談できる場所」となれるのが理想ですね。

Q ヤングケアラー支援の事業も始められたそうですね。
A はい。『みらいファンド』という企画をスタートしました。大人のお客様から500円寄付いただき、250円の『みらいファンドチケット』2枚に換え、ヤングケアラーが食事や家事支援に使える仕組みです。幸手市には『幸せ手伝い隊』(困っている人をサポートする有償ボランティア)という地域支え合い事業があるのですが、その家事支援30分分を、チケット1枚で依頼できます。ヤングケアラーにとっては食事と生活支援となり、高齢の方にとっては地域の子どもの成長を喜べる機会になります。

Q 小泉さんには大きな構想があるんですよね?
A 一つは、世代間交流型コミュニティモール。シャッター商店街に、高齢者向け・子育て支援カフェやお惣菜屋さんなど多店舗をつくって、様々な課題解決をしたいです。もう一つは、独居生活支援型コミュニティモール。身体機能が落ちても、地域に住み続けられるようにしたいです。洗濯代行、見守り付きのお風呂、とろみ付きのお酒やソフト食がつまみのスナック、リハビリするとゲームができる施設など、夢のような場所をつくりたいです!

Q 構想の中で実現できたこともありますか?
A 私は「コミュニティづくり」「生活安心づくり」「生きがいづくり」の3本柱が揃えば、健康寿命は自ずと延びると思っています。NPO元気スタンドでは、コミュニティカフェ『元気スタンド・ぷリズム』以外にも、2010年にみんなのお惣菜『元気スタンド・ぷライス』、そして2022年には子どもと親の居場所『元気スタンド・ぷれいス』の運営を開始しており、構想が一つずつカタチになっています。「地域がつながるといろんなことができる!」をこれからも続けていきたいですね。


・元気スタンド・ぷリズム http://genki.cafe.coocan.jp/

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