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空區地車の力学 その64.御幣(ごへい)と紙垂(しで)

だんじり祭りでは紙を細長く雷の形に切ったものを槍先に付けますが、総称して「御幣(ごへい)」と言います。
御幣に付けられた細長くの雷の形に切った紙の部分は「紙垂(しで)」と言います。

「御幣」は木製の棒(枝)に「紙垂」を挟んだ神具

「御幣」は「紙垂」を木製の棒(枝)に挟んだ神具で、細長く雷の形に切った和紙などに挟み、神主がお払いをする時に使い、お払い後は神前にお供えします。
「御幣」とは神々への捧げ物を意味し、貴重な品を示す「幣(へい)」に、尊称の「御(ご)」を付けたものが語源となります。
ちなみに「貨幣・紙幣」の「幣」も、御幣の「幣」が由来です。

「紙垂」は御幣や榊(さかき)、注連縄(しめなわ)などに付けられる紙の部分

「紙垂」は御幣や榊(さかき)、注連縄(しめなわ)などに付けられます。
「御幣」に使われる「紙垂」の起源は古く、古事記の天の岩戸伝承のなかで書かれています。
串に挿んだ捧げ物の布と、その神聖性を示す木綿と麻が使われていました。木綿と麻の時代には「幣帛(へいはく)」「布帛(ふはく)」と呼ばれていました。
時代が経つにつれ、布に代わって和紙が使われるようになりました。もちろん当時の和紙は貴重な品でした。これ以降、細長く雷の形に切った紙を「紙垂」と呼ぶようになったのです。
紙垂が雷の形なのは、落雷があると稲が育ち豊作であるということから、雷光・稲妻をイメージし雷の形になりました。これにより聖域から邪悪なものを追い払うのです。
御幣や玉串につけた場合は「神具」としてですが、注連縄(しめなわ)に垂らして神域・祭場に用いた場合は「聖域」を表す印となります。

紙垂を注連縄(しめなわ)に垂らし、神域・祭場に用いた場合は「聖域」を表す印

江戸時代以降は、祭のたびに紙垂が新調され、また木綿・麻と同様に細かった紙垂は、徐々に太く大きくなり、挿む位置も上部になる例が多く見られるようになりました。

今でこそ、「紙垂」こそが御幣の象徴とされますが、神話の時代から現代まで神々への捧げ物が「御幣」なのです。

巡行前のお払い