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神戸市東灘区のだんじりを曳き続けています。家族からは「ええ歳していつまでやるん?」「危…

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神戸市東灘区のだんじりを曳き続けています。家族からは「ええ歳していつまでやるん?」「危ないからそろそろね」と非難されていますが・・・足腰立つ間は続けます。

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  • 空區地車の力学

    意外と知られていない神戸のだんじり祭り。それは神戸の街の特長である「坂道」との闘いでもあった。強力伝の中に勇ましさもあり、曳く者に試練と共感を与え、見る者には「参加したい」という欲望を与える。しかし祭りは神事、曳いた者だけが神に出会える。曳き手の一人としてその想いをブログに載せて伝える。

最近の記事

空區地車の力学その79.2024年度の巡行コース

2024年度の例大祭は、住吉地車にとって大きな節目の年になる。 まず一つ目は、反高林區の地車が平成29年度より使われている子供地車と呼ばれる小型から、本年5月の例大祭では大型の地車にリニューアルする。初代地車は本体に比べて、曳き手が入って曳く「棒鼻(ぼうばな)」が異常に大きいが、2代目地車は本体と棒鼻のバランスが良い。 初代地車は小型故に、2〜3人の大人が本気で力を入れると地車の方向転換は行なえただろうが、リニューアルされた大型の地車ではそういう訳にはいかなくなる。 勾欄(

    • 空區地車の力学その78.無手勝流にもほどがあるが「神功皇后生存説」を私は支持する

      私が所属する空區地車は、神戸市東灘区にある「本住吉神社」の例大祭(神事)で巡行しています。 「本住吉神社」の祀神は、住吉三神といわれる底筒男命(そこつつのおのみこと)、中筒男命(なかつつのおのみこと)、表筒男命(うわつつのおのみこと)と、息長帯姫命(おきながたらしひめのみこと=神功皇后・じんぐうこうごう)です。 このブログの『その37.平仄に合わなくても「神功皇后生存説」を信じる!』でも書きましたが、今回も神功皇后について。 そもそも現在の歴史家の間では、初代の神武天皇から

      • 空區地車の力学その77.One for All、All for One

        祭りまであと1か月を切った。 さすがに自主トレが秘かに始まり、いよいよ祭りモードに身体も心もなってくる。遠くの方から聞こえる阪急電車の踏切・遮断機の「カン、カン、カン」の音が二丁鐘の音に聞こえ、脳内を駆け巡るようになる。祭りバカとはそういうものである。 取引先がラグビーチームを持っていたことから、私は40年ほど前からラグビー観戦をするようになった。 百キロを超える巨漢が防具なしにぶつかるので、ルールは厳しく、そのルールの難解さから馴染めない人もいる。 しかし急激にファンが増

        • 空區地車の力学その76.神は細部に宿る

          かって若中頭が祭り前の挨拶で何気なく発した 「今日は思い切り暴れましょう」と発した挨拶に 「アイツは何もわかってない」と 怒った大先輩の年寄り(若中の重鎮)がいました。 何故怒ったのでしょうか? 「神は細部に宿る」と言う言葉があります。 私がまだ駆け出しの頃、先輩に言われた言葉です。 「モノづくりにおいて細部まで気を配り、力を注いでこそ モノは目指した形になる。一つひとつ丁寧に積み上げろ、 神は細部まで見ているぞ!」という私に対する戒めの一言だったのです。 神が悪魔になっ

        空區地車の力学その79.2024年度の巡行コース

        • 空區地車の力学その78.無手勝流にもほどがあるが「神功皇后生存説」を私は支持する

        • 空區地車の力学その77.One for All、All for One

        • 空區地車の力学その76.神は細部に宿る

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        • 空區地車の力学
          79本

        記事

          空區若中の力学その75.ハレとケ。

          古来、日本人は日常を「ケ」、お祭りや年中行事を行なう日を「ハレ」と呼び、日常と非日常を使い分けていました。 ここ神戸市東灘区に住む者にとって、お正月やお盆、節供などの節目となる儀礼以上に特別な「ハレ」の日は「本住吉神社例大祭」です。 ちなみに地車の方向修正の時の掛け声は「ハレ(張れ)」です。意味合いは「張れ!張れ!張れ!」の掛け声で、地車を引く若中全員に力が入り、ハンドルの無い地車はコマの軋み音と共に方向転換します。 「ハレとケ」のハレとは意味合いは異なりますが、「ハレ」

          空區若中の力学その75.ハレとケ。

          空區地車の力学その74.スマホ禁止令発布なるか!?

          一昨年、私は長年使って愛着を持つガラケーからスマホに変えた。天命を全うしたのと、既にガラケーの新機種がなかったからだ。 とはいえガラケーの使用は、電話とCメールと記録用の写真に限っていた。扱いの悪い私にとって「二つ折り」というのがガラケー愛用最大の理由だった。 いざスマホを持つと電話はLINE電話に変わり、メールはLINEに、記録写真は高画質になった。進化している! 唯一デカいのがたまに傷で、扱いが悪い私のスマホのガラス面保護膜はパキパキだ。 もう一つ、スマホになり寝不足に

          空區地車の力学その74.スマホ禁止令発布なるか!?

          空區地車の力学その73.人を取り戻すから神に出逢える!?

          私が子供会の綱担当になって久しい。 それ以前は空區子供会の父、一二三(ひふみ)さんが担当していた。かく言う私は一二三さんに憧れて、曳き手から子供会の綱に移籍した。 一二三さんは私の師匠だ。 綱の中では一二三さんを先頭に、私が後方を担当した。その後しばらくは一二三さんの背中を見ながら動きを観察する日々が続いた。第2列の私にとって大きな責任もなく珠玉の時でもあった。 地車に触れることのない、このポジションに行きたがる人は、私の知る限り、少なくとも私が地車を始めてからは一二三さんと

          空區地車の力学その73.人を取り戻すから神に出逢える!?

          空區地車の力学その72.ジモピーだからこそ出来る"裏方"

          私が子供会の綱担当になって久しいが、私一人で子供会の面倒を見ているわけではない。私はただ地車の運行時に子供たちに指示を出しているだけで、途中休憩時に綱をしまったり、子供会にお茶を出したりしている“裏方”がいるから成り立っている。 今回は若中の中で“裏方”に徹する10代後半の若者たちの話をしよう。 10代後半から若中に初参加の青年は、たいてい空區に在籍する同級生から誘いを受けての参加だ。その多くは「誘ってほしい」と口を開けてその時を待っている。 そして、たいていは目立ちたがり

          空區地車の力学その72.ジモピーだからこそ出来る"裏方"

          空區地車の力学その71.プチっと音がした。

          私は大学生のとき左膝靱帯断裂で約3ヶ月入院した。 左膝靱帯4本のうち3本を切り、繋ぎ合わせる大手術だった。その後、約9ヶ月間リハビリを続けたが、正座は今日に至るまで出来ないでいる。以降、左脚を庇う右脚に相当の負担をおかけしている。 結婚し、長女、次女を授かり、長女が高校生だった時、父兄リレーに駆り出された私は1回目の肉離れを経験した。右ふくらはぎだ。 プチっと音がした。 ただただ父としての役割を全うするため父兄リレーに出場して、1回目のプチっ!となった。 その後約1ヶ月間、「

          空區地車の力学その71.プチっと音がした。

          空區地車の力学その70.もしかして地車はUFOか!? 本住吉神社はその交信基地か⁉

          住吉の地車にとって本住吉神社は聖地。高校球児にとっての甲子園と同じ。 にもかかわらず、本住吉神社は震災で崩壊する前から、威厳や荘厳という言葉が全く似合わない普通の神社でもある。分家の弓弦羽神社(神社とは全く無関係の羽生結弦の聖地となっている)の方が余程雰囲気の中に佇んでいる。祭りの日は、タイムズ化した境内の車はすべて撤去され、替わりに屋台が軒を連れる。が、それにつけても荘厳さは全くない。 しかし、本住吉神社は神功皇后が三韓凱旋時に建立した歴史ある神社だ。当時は祠があった程度

          空區地車の力学その70.もしかして地車はUFOか!? 本住吉神社はその交信基地か⁉

          空區地車の力学その69.空區の宮入りは神がかっている

          かって空區の地車は住吉一の巨体だったが、最近は地車の巨大化が進み空區地車と肩を並べる地車も増えてきた。 そもそも地車は神社の所有物ではなく、氏子が作る氏子の所有物なので、地車小屋に入るギリギリの大きさにしたくなるのが人の性。 こうして大きくはしたものの、巨大ゆえに持て余すこともある。 例えば宮入り。 神殿の前まで進んだ地車の前を持ち上げ(前輪ウイリー状態)、3回上げ下げを繰り返し、そのまま前を持ち上げた状態で時計回りに回す。その間、前を下ろしてはならず上げたまま時間内可能な

          空區地車の力学その69.空區の宮入りは神がかっている

          空區地車の力学その68.地車は体格・実力主義!これは不公平ではない!!

          5月5日の宮入りは1年に一度、運が良ければ神と出会える日。 しかし、この日は最も観客の多い日でもある。 したがって、不謹慎な若中は、観客に酔いしれ目立つことだけを考えてしまう。しかし、重さ4トンの地車の前を上げたまま、何十回となく落とさず回さなければならず、いくら不謹慎な若中とはいえ、否応なく汗だくになって必死で、担ぎ、回すしかない。 一日中曳いても塩を吹くこともなかった法被が、汗でぐしょぐしょ、ヨレヨレになる。宮入りが終われば見事に帳尻が合う汚れた法被となる。昼間サボった若

          空區地車の力学その68.地車は体格・実力主義!これは不公平ではない!!

          空區若中の力学その67.地車との物我一体(もつがいったい)化

          地車を曳くのか? それとも、地車に曳かれるのか? これは若中にとって永遠のテーマだ。 地車を「曳いてる」若中は、基本的に汗は掻かないし、 掻いても観客がいる場所でしか掻かない。 空區のユニフォームは黒の法被だが、決して塩が吹いて白く浮き上がることはないし、夜になってもアイロンを当てた折り目がそのまま残っている。いつも辺りをキョロキョロ見まわし、知人を発見するや手を振ったりしている。いわゆる己の勇姿を見せたいだけの輩である。 片や、地車に「曳かれる」若中は、地車が身体の一部にな

          空區若中の力学その67.地車との物我一体(もつがいったい)化

          空區地車の力学その66.合図は一人で正確に!

          高速道路の工事現場で活躍する大型クレーン。そのアームに目を凝らすと「合図は一人で正確に!」という標語が記されています。 これほどのクレーンが吊るものは相当大きな荷になるので、安全のために数人の監視者が付きます。しかしながらクレーンを上げたり下げさり回す合図は一人で行なわないとオペレーターは困惑します。場合によっては大惨事にもなります。よって合図は一人が責任を持って行なわなければならないと標語になっているのです。 日本三大祭に数えられているお祭りの一つが日枝神社の「山王祭

          空區地車の力学その66.合図は一人で正確に!

          空區地車の力学その65.伝統と現実の狭間で

          地車は「だんじり囃子」に合わせて動かします。 リズムは、歩いている時はゆったりゆっくりと、坂道を上ったり走ったり地車を回したりする時は早く激しくと変化します。 鳴物については、空區の場合は大太鼓・小太鼓・半鐘・二丁鐘の4つですが、同じ住吉地区でも地車の大きさで小太鼓がない地區もあります。 日本全国でみても地域によって異なり、中には基本の大太鼓・小太鼓・鐘に加えて、笛や三味線などが含まれる地域もあります。しかし、笛や三味線は鐘の大音響に負けるため、徐々に用いなくなった地域もある

          空區地車の力学その65.伝統と現実の狭間で

          空區地車の力学 その64.御幣(ごへい)と紙垂(しで)

          だんじり祭りでは紙を細長く雷の形に切ったものを槍先に付けますが、総称して「御幣(ごへい)」と言います。 御幣に付けられた細長くの雷の形に切った紙の部分は「紙垂(しで)」と言います。 「御幣」は「紙垂」を木製の棒(枝)に挟んだ神具で、細長く雷の形に切った和紙などに挟み、神主がお払いをする時に使い、お払い後は神前にお供えします。 「御幣」とは神々への捧げ物を意味し、貴重な品を示す「幣(へい)」に、尊称の「御(ご)」を付けたものが語源となります。 ちなみに「貨幣・紙幣」の「幣」も

          空區地車の力学 その64.御幣(ごへい)と紙垂(しで)