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空區地車の力学51.毎日が同窓会

神戸の街は北に六甲山系、南は神戸港に挟まれた南北約5kmの東西に細長い坂の街だ。
この長細い街に海側から数えれば、国道43号線、阪神電鉄、JR神戸線、国道2号線、山手幹線、阪急電鉄と、わずか5Kmの街に3つの幹線と3油の鉄道が走り、東西の移動は他都市にないほど便利だ。
一方で南北の移動はバス路線も少なく徒歩しかない。
ダラダラと登りになり、JR神戸線を過ぎると一気に登りになる。JRを過ぎると高い建物が少ないので六甲山系の緑深い稜線が目の前に迫る。稜線は東西にどこまでも続いているように見え、高い壁となって行く手を阻む。
さらに山手幹線を過ぎると、もはや山登り。
しかしこの辺りからが山の手の一等地になる。かっては財閥や政界重鎮の邸宅だらけで、いまでもその名残があり、街は人工的に作られたにも関わらず、時が経ち緑が街に定着して落ち着いた雰囲気になっている。

東灘区の公立小学校や中学校の校区は、南北の縦割りなので、下町から山の手の子供がひとつの学校に集まってくる。
当然のことながら下町(海側)のゴンタレやヤンキー予備軍と、山の手のお坊ちゃん、お嬢ちゃんが混在し、住吉の地車がその架け橋として介在するため、良くも悪くも子供たちは逞しく育つ。

私の子供たちもここが母校だ

灘中、甲南小学校、神戸大附属など、住吉地区は日本を代表する文教地区ではあるが、ほとんどの子供たちは公立に進む。住吉小学校→住吉中学校か、渦が森小学校→住吉中学校となり、最終的には住吉中学校で合流することになる。

住吉地区8台の地車にいる子供たち(子若)は、中学生になるとそれぞれの地車の若中の所属となり、法被とおこし、地下足袋姿が許され、いわゆる若中デビューを果たすことになる。
この8台の地車デビューした中学生若中のほとんどが住吉中学校生である。普段から学校で顔を合わせている同級生や先輩たちと汗を流して曳くのだ。巨大なるクラブ活動とも言えなくもない。
彼らのお父さんの多くも住吉中学校の出身なのだから、巨大なる同窓会の場
が祭りとなる。よって同窓会の必要性はない。祭りの寄り合い自体が同窓会と言ってもよいからだ。

2016年5月22日 襲名披露巡行

最近は行政もだんじり祭りを一押しにしている。東灘区長が祭り好きならなお盛況になる。
今年はコロナ禍で伸び伸びになっていた例大祭に加え、東灘区政70周年記念巡行が行われた。あと9年経てば80周年記念巡行も行なわれることだろう。
東灘区政80周年記念巡行では、私は70歳。果たしてその時まで曳いていられるのか、それは地車の神さんのみが知る。