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空區地車の力学33.大人の心情を子が察しんとあかんわなぁ。

2022年例大祭が無事終わった。コロナで反省会がないまま、打ち上げもないまま終わってしまった。でも曳けただけでも住吉の神さんに感謝しなければ・・・合掌、礼拝。

地車の屋根は「屋根頭」が統率するが、自力で地車の屋根に上られれば、誰でも屋根方になれる。素人でもOK。しかし、地上4mの屋根の上で命綱1本で踊ったり、迫りくる木々を避けたりと命がけの大変なポジションだ。
しかし、地車の最高峰で最も目立つので”目立ちたがり屋さん”には、たまらんポジションである。
果たして素人でも大丈夫なのか?それが問題なのだ。

2022年5月4日 町曳きより

本年度の例大祭では、空區地車の屋根から多くの提灯が落ちてきた。
木に当たったり、山形を取り外すときに提灯が外れて落ちるのだ。仕方ないちゃ仕方ないことなのだが、提灯を落とさないようにする気遣いや準備が必要だ。大げさかもしれないが、屋根方たるもの命に代えてでも提灯を守るという気概がなくてはならない。

実際、私の目の前に提灯が落ちてきて間一髪。頭に直撃した若中もいる。
「痛たたたた~!」という声を聞くに、怒りを通り越し悲しくなる。
ほんの10年ほど前なら「何しとんじゃい(怒)、屋根頭しっかりせんかー(怒)」と、年輩の若中から怒声が飛んでいた。
しかし、今は事なかれ主義、怒声はない。出る杭は打たれる時代から、出て倒れて自分で気づく時代になった。
私などはそれこそ辛い時代になったものだと思うのだが、打たれることの少なくなった最近の若い子は怒声に滅法弱い。

先輩について学ぶのはカッタルイし、ダサいと考えているのかもしれない?年輩の若中に「どうしたら上手くなれるのですか?」と聞けば、思っている以上に親切に教えてくれるのに勿体ない話である。地車を上手く曳くコツをネットで検索しても教えてくるSNSはないのだ、パイセンに聞こうよ!

「何しとんじゃ! (怒)」
実はこの怒声には愛がある。落ちて壊れた提灯の修理代がもったいないから怒声を浴びせているわけではない。
命の尊さを教えるための怒声だ。
想像してほしい。もし己自身が4mの屋根から落ちたらどうなるのか?提灯だから良かった、落ちた提灯は身代わり、己自身が落ちたら怪我ではすまない。もしかしたら命を落とすこともある。その下で曳いている若中の上に落ちてしまうこともある。
だから年配の若中は、大切な仲間に不幸がないよう怒声を浴びせるのだ。
でも口下手な年輩の若中は「何しとんじゃ!しっかりせんかー!!」と怒声を浴びせるだけ。
しかし、この怒声がなければ、貴方と年配若中との出会いは通り一辺倒の付き合いで終わってしまう。「何しとんじゃ!しっかりせんかー!!」の怒声は、一生懸命やる君への応援歌であり、誉め言葉だ。そして何よりも貴方に命の重さを伝える愛あるメッセージなのだ。
そして自分の命の大切さを知ったからこそ、「命に代えてでも提灯を守る」という気持ちが屋根方の若人に芽生えるのだ。

親にも叱られたことがない子供たちが大人から真顔で怒られたら、そりゃビビるわなぁ。しかし、これもまた祭りが教える「生きることの尊さ」だ。
大人の心情を子が察しんとあかんわなぁ。

2022年5月5日 本宮の空區の宮入

#神戸市東灘区 #空區 #空區地車

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