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花粉症で死にかけた話

もはや国民病と言っても過言ではない花粉症、コイツのせいで高校生時代、毎年3ヶ月間ほどの間毎日死にかけていたという、ただそれだけのお話です。


涙と鼻水にまみれた高校生活


我等、スギ林と共に在り

通っていた高校の裏手が、スギ林だった。
このたった1つの事実があってしまったが故に、私の高校生活はハードモードを余儀なくされました。

こちらが校内のどこにいようが何をしていようが、そのスギ林は堂々と校舎裏で生い茂っていらっしゃり、私たちの頭上にわんさと花粉をふりかけてこられるので、「スギ林がその場所にあること」自体が致命的だったのです。

特に外で行う体育の授業などは控えめに言って地獄で、その日行う授業に取りかかる前に、なんなら準備運動よりも前にノックアウトされていました。

なんせウォーミングアップとして、準備運動の前に校舎の周りをグルリと1周走らされていたので、その時点で致死量の花粉を浴びているワケですから。

黄色は花粉


諦めた自転車通学

もともと自転車通学をしていましたが、約4キロの道のりを風を切って爆走するので、それはそれはおびただしい量の花粉を受け止めることになります。

登校するだけで体力と気力の8割以上が削がれてしまうので、新手の拷問か何かでしょう。
花粉症患者が自転車をこぐというのは、それだけで自殺行為になりかねません。

もちろん学校に着いた頃には瀕死の状態でしたから、その後の授業などに身が入るハズもありませんでした。

ということで、学業に支障が出るどころか、もはや生命活動に支障が出始めていることに気づいた頃から、親に土下座をして頼み込み、車で送迎をしてもらうようになりました。


授業は修行、そして苦行

しかし、送迎をしてもらったところで花粉を完璧にシャットアウトできるのかと言われれば、そんな上手くはいきませんよね。
学校の自転車置き場に駐輪した途端に力尽きるという惨事が起こらなくなっただけで、学校生活は普通に地獄でした。


学校の授業といえばそう、座学
そして座学といえば、ノートと教科書を開き、先生が黒板に書いていく文字を板書したり問題を解いたり、出席番号と日付が一致した生徒はその日の犠牲者となって指名される…という感じですよね。

鼻水と涙を垂れ流し、かと思えば鼻が詰まり、満足に呼吸すらできなくなる…あと喉も痛い…
こんな状態で授業なんぞに集中できるワケがありません

前に出て問題を解くようにご指名を受けた時にも、「ヘァ!?」と寝起きのウルトラマンのような声で返事してしまうほどには頭が回っていませんでしたし、板書なんて普通の方法では鼻づまりのせいでとれないので、頭の位置を極力動かさずに眼球だけをノートに向けて文字を書くという、凄絶な努力が必要になりました。


薬漬けの生活


当時(今もだけど)マスクが死ぬほど苦手だったので、頑なに付けることを拒んでいました。おバカなのは承知です。
マスクさえ付けていれば、私が抱えていた花粉に関する弊害の7割ほどが解決した気がしますが、そんな美味い話に飛びつく気すら起きないほどにはマスクが苦手でした。

もともと眼鏡を掛けていたのでせめて目は守護(まも)れるか?と思ったこともありましたが、あんなモンで防げるなんて考えない方がよろしいです。
眼球正面からの花粉をガードできるというだけで、上方から下方から側方から、ヤツらはジャバジャバと侵入してきますからね

ならば、と次に私は市販薬を試す方向に動きました。
が、しかし、人生とはなんとマア上手くいかないことでしょう。
その時使っていた市販薬でアレルギーを起こし、花粉症で起きるそれとは比べものにならない勢いで肌が荒れてしまいました。


こりゃどうにもならんということで、とりあえず黙って行きつけの内科医にかかり、涙ながらに訴えることでついに処方薬をゲットすることに成功しました。

この日から、私にとって頼れる存在はこの薬だけになりました。

朝起きて薬飲んで、ほねっこ食べて薬飲んでという生活を繰り返し、飲むのを忘れた日には高校で「ああ!薬!薬飲んでない!ああ!!」と叫びながら恐慌状態に陥り、狂ったようにカバンをまさぐるという要注意人物に成り果ててしまったワケです。


家に持ち込まれる悪魔


地獄のような学校生活を終え、屍となりながら帰宅した先でも花粉からは逃れられません。

なぜなら、ヤツらは服とか皮膚とかに引っ付いてくるからです。
玄関に入る前にバタバタと服を払い、頬を平手打ちし(おそらく意味はない)、部屋に戻って即座に服を着替え、風呂でザブンザブンと全身を洗濯する。
以上の全行程を終えるまでは、清浄なる肉体は取り戻せません。

ただ、ここまでやったとて安息がもたらされるワケではございません。
私には、家族がいるからです。

察しの良い方はお気づきかもしれませんが、家族も花粉をワンサカ引き連れてくるのです。
仕事帰りの父や母、時には回覧板を持ってきてくれたご近所さんまでもが、これでもかと我が家に花粉を撒き散らしてきます。
「なんでンなもん連れてくるんだよォーッ」と叫ぼうが癇癪を起こそうが、私の家族もご近所さんも、1粒30μmの花粉を全て回避しながら外を闊歩できるバケモンではありません。


気絶で終わる1日


ついに長く苦しい1日を終え、あとは寝るだけ…という、あの副交感神経がバチバチに優位になる時間でも安心できません。
身を横たえた瞬間、呼吸手段が完全に機能しなくなるからです。


というのも、寝転がった瞬間、待ってましたと言わんばかりに鼻が両方完全に詰まります
こうなると我々人間に残された呼吸手段は口呼吸ということになりますが、喉にも花粉がビッチリこびりついていますので、息を吸う度に言葉にできないような不快感と痛みが襲ってきます

つまり、ジエンドです。
エラ呼吸とか耳呼吸を会得しない限りは、私に安らかな眠りが訪れることはありません。


というワケで、結果的に就寝なのか気絶なのかわからない状態で1日を終えるのが、3~5月にかけての約3ヶ月間続きました。

ちなみに「気絶」と「失神」は同じような意味の言葉として使われますが、厳密には「気絶」の方が重篤なものらしいです。

私のケースにおいてどちらがより的確な表現なのかはわかりませんが、毎夜窒息死していたようなものなので、日に日に精神状態が怪しくなっていたということだけは確かです。

おやすみ世界

花粉症じゃないからと高をくくっている皆様へ


最後になりますが、現在花粉症ではないからと鼻をほじっているそこのアナタ、アナタは常に狙われている立場にあることをまずご理解ください。
ヤツらは不意に襲ってきます。

花粉の抗体量が一定以上作られると発症するみたいですが、ホンマにいきなりきます。
私も中学に入るまでは花粉症と無縁の生活を送ってきたので、これは胸を張って言えます。

ア○ロさんなら「身構えているときには死神は来ないものだ」とかほざきそうですが、ヤツらは普通に来ます。なぜなら死神じゃなくて花粉だからです。

もし気の毒にも花粉症にかかってしまったら、まずは素直に現実を受け入れて、黙ってマスクを付けて、あとはお医者サマに任せましょう
彼らはスゴイので、きっとなんとかしてくれます。

もしくは、外界との交わりをすべて断って引きこもりましょう
なんたって花粉症は命に関わるのですから。
死にたくなければ皆さん、引きこもりましょう。


ここまで長々とお付き合いいただき、本当に感謝しております。
読んでくださった皆様が、この先もしっかり呼吸して生きていけますように。
ご閲覧ありがとうございました🌸👃

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