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コンフィデンスマンJP英雄編の感想と、

 コンフィデンスマンJP英雄編の感想と、シリーズの主題歌としてこれまでに書き下ろされたヒゲダンの楽曲群を改めて聴きなおした感想とを書いています。
 元からヒゲダンが好きで楽曲の解釈をあれこれ考えていたんですが、コンフィデンスマンJPへの書きおろし楽曲はドラマ・映画の本編を見ないことには始められないと思い、一通り見てみたら見事にハマりました。ハッピーな話が好きという自分の嗜好を再認識しました。
 過去に他のところでも同じことを書いたんですけど、はやみねかおるの怪盗クイーンシリーズに近いものを感じました。シリーズ作品を見ていて謎の実家感があったので、たぶん何かが似ているんだと思います。はやみねワールドに小中高の間どっぷり浸かっていた私にとって、コンフィデンスマンの世界はどこか懐かしく、愉快な場所でした。
 私自身の話はこのくらいにして、英雄編の感想とコンフィデンスマンJPの楽曲として見たヒゲダン楽曲の話に移ります。バンドのファンでいる期間のほうが長いので、どうしても2:8くらいで曲の話のほうが多くなっていますがご了承ください。以下、常体・敬称略です。

※2022年1月25日 加筆修正しました。

英雄編の感想 編


・最高のコンフィデンスマンや〜い!ヌゥメヌメェ~!
 「コンフィデンスマン」とは信用詐欺師の意であるところを、むりやり“信用+人”と分解して考えたら、確かにボクちゃんは最高のコンフィデンスマン(雰囲気的には「しんようんちゅ」と書きたい)。嘘をついていなければ嘘がバレることも無いから最強。
 こじつけは置いといて、嘘をつくときはそこに真実を少し混ぜるといい、という話を思い出した。ダー子が嘘に混ぜている少しの真実は「またしても何も知らないボクちゃんさん」だろう。

・おつかれ五十嵐
 三人それぞれの補佐やってたけど途中で頭こんがらがったりしないのかなと思った。ダー子とリチャードはグルとしても、一人だけ仕事量がやばい。五十嵐がいなくなったら盗れるものも盗れなさそう。これは五十嵐に限らずだけど、みんなの行動を人物ごとに時系列順で表にしたやつが欲しい。

・負け惜しみ
 インターポールのオフィス(偽)のシーンで「世界レベルの捜査機関の内装がそんなクラシカルでお洒落なことある?」ってちょっと引っかかったけど結局スルーしちゃったな〜。もうちょっと考えたら偽マルセルもコンフィデンスマン説にたどり着けたな〜。あ〜惜しいな〜。

・丹波さんはヒロイン
 先に英雄編を見たフォロワーの「松重豊がヒロインだった」ってツイートを見たときは「出た〜おじさまだと見るとすぐ萌えキャラ扱いするやつ〜」と思ったけど(失礼)、確かにヒロインだった。歴代のヒロイン(コンフィガール)モナコとコックリは、当初は敵対しているか無関係の人物だったがダー子に惚れて/見初められて仲間になった人物。ならばただの同業者だったのがダー子の大ファンになりジャパニーズドゲザまでして仲間入りした丹波さんも紛うことなきヒロイン。異論は認める。

・「一生離さないからね!」
 ダー子の純粋さゆえの怖さを勝手に見出して少しヒエッてなった。どんなに奇想天外な方法も実行する人が、大好きな仲間を引きとめておくために何をするんだろう。そこまで怖いことはしないと思うけど。


主題歌として見たヒゲダン楽曲 編

だいたい「藤原聡すっごーい」という話になってしまった。

ノーダウト

・『神様もハマるほどの大嘘を』『Lie and lie そして少しの愛で』をはじめとして、ダー子の魅力を韻を踏みつつ簡潔に描いている。
・「仕方ないどうしようもない そう言ってわがまま放題大人たち どうぞご自由に 嫌ってくれて別に構わない」のくだりには藤原の書く詞に度々みられる「周りの言葉なんか気にすんなマインド」が垣間見える(という話もいつかしたい)が、この心意気も、奔放なダー子とよく合っている。ラテン音楽っぽいピアノのフレーズも、彼女の享楽的でテキトーだけど憎めない性格に合っていて最高。
・曲単体で聴いたときもテンションがあがる、イントロのデレレレレレレレデッデ〜ン!がタネ明かしのタイミングで聴こえるとアドレナリンが大量に出る。

Pretender
二重の意味でPretenderではないかと閃いてわくわくしている。
・まず歌詞の主人公の「僕」が「君」にとっての「運命のヒト」である“フリ”をしている。
《個人的な解釈》
 「僕」は「君」と幸せに交際しているが、「君」と自分は「運命のヒト」と言えるほどの強い結びつきはないと悟ってしまった。でも当の「君」はまだその事に気づいていない。しかし、今の幸せを少しでも長く味わっていたいがために、「君」に別れを告げるでもなく、「君」が「運命のヒト」と出会う可能性を無くす努力をするでもなくズルズルと関係を続けている。この先ふたりの関係がどうなるのか、「君」が「僕」のことをどう思っているのか何一つ分からないモヤモヤを相手にぶつけることもできず、唯一確かな事実である「とても綺麗だ」ということだけを伝える。
《解釈終わり》
ロマンス編のボクちゃんとダー子、ダー子とジェシー、ジェシーとランリウ(スタァ)の三組に当てはめて考えると、歌詞だけを読んだときの解釈よりは軽めのPretenderたちではあるものの、つかの間の疑似恋愛という設定の持つ儚さが曲に似合う(この中で唯一、ボクちゃんからダー子への感情だけが嘘でない説もあるけど、ここに書ききれないので省略)。
・ロマンス編に対するPretenderという楽曲そのものが、ただの劇場版主題歌と見せかけて、ロマンス編の展開をミスリードさせる仕掛けであり、「ロマンス編の要素すべてを描写している曲」という“フリ”をしている。

Laughter︎

・身を寄せていた詐欺師に酷い扱いを受け、潜入したフウ家でも家人にぞんざいに扱われながらも、決して腐ることなく周りを愛し自分の運命を切り開いたコックリと、周りの反対を押し切ってボーカルを始めた藤原。二者の歩んだ道は似ている。歌詞においてラフター(Laughter)は鳥の名前だとされているが、この「鳥」も夢を追う主人公=プリンセス編のコックリ、そして藤原のメタファーとみることができる。藤原の歌詞では比喩表現が度々用いられるが、Laughterはほぼすべてのフレーズが比喩。比喩によって物事が抽象化されていくとするなら、Laughter以外の主題歌は、物語を抽象化して藤原側に引き寄せ、自身と物語の一部を重ねるという形式だけど、Laughterは物語に加えて藤原自身の境遇も抽象化して、お互いに歩み寄っている構図である。
・映画の冒頭で「過去の自分を超えることこそが高貴」という旨の名言が出てきたとき、『人格者ではなく/成功者でもなく/いつでも今を誇れる人でありたい』というフレーズの真意を理解した。

Anarchy
合致する要素が多いから、おおむね偽マルセル(瀬戸康史)目線の楽曲だと考えられるけど、謎は残る。
・任務中はいけ好かない若きエリートという雰囲気だった偽マルセルが、やっと自分のコレクションに加わった踊るヴィーナスを目の前に理性を無くし幼稚な喜び方をする。「鍵付きの部屋の中で下品なポーズ」が比喩じゃなかった衝撃。ぜったい下ネタだと思ってた。
・「どうかしてる度を越してる/解りますか?何の価値も無い夜更け」は、いかにも彼が言いそうなフレーズ。オサカナを狙って試行錯誤しているダー子たちを高みの見物で嘲笑っているよう(実際はすべてダー子の手のひらの上だったが)。七日間で決着を付けるラストコンゲームという前提を踏まえると「夜更け」が単なる一日の始まりという意味の言葉ではなくなって、「何の価値もない」と修飾されていることでさらに焦燥感が強まる。「分かりますか?」ではなく「解りますか?」と書かれているのも、偽マルセルの高飛車な表情が目に浮かぶよう。
・劇中で度々偽マルセルのオッドアイ(とくに青い右目)がクローズアップされていたことを思うと「リーダーも英雄も信じるまいと怒れる暴徒の眼光」は偽マルセルのことではないかという気がする。やはり偽マルセル目線の楽曲?(通り名が作中で明かされなかった気がするので偽マルセルと呼ぶしかないの不便だな。)
・ルール無用、何でもアリのコンゲームにインターポールや日本の警察が絡んできた、と見せかけて、その実そいつも詐欺師。政府の「せ」の字もない英雄編を一言で表すのに、”Anarchy”以外ない。

主題歌シリーズ全体
・映画のストーリーを抽象化して描くことで、物語のキャラクターと藤原のパーソナルな部分とが、歌詞を介して繫がっていく。そのため、タイアップ曲の歌詞であっても、藤原自身についての話ではないかと推察できる箇所が見つかる。つまり、物語から切り離しても筋の通った解釈ができる。
・ドラマシリーズと映画三作(ちなみに運勢編は未視聴)を踏まえて主題歌を見つめなおすと楽曲の解釈が変わる感覚が、ダー子のタネ明かしを聞いたときの「こりゃ一本取られた!」という快感と少し似ていて楽しかった。

おわりに

 見終えたときの「身の回りのすべてが嘘なんじゃないか」と、地に足が付かなくなるような感覚がやみつきになる作品だと改めて感じました。これからもコンフィデンスマンの世界に遊びにいきたいです。
 こんなに長い感想を書くのもnoteを利用するのも初めてで、しかも深夜に一気に書き上げたので、読みづらかったらすみません。こうしてnoteを始めたのも何かの縁でしょうし、これからもTwitterで書ききれない文章量の考察(という名の深読み)はこちらに投稿します。
 お付き合いいただきありがとうございました。

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