誰が一番乗りするかって
朝いちばん
運動場はいつもまっさらで
凍りついた冬の朝
校門へとたどり着く
坂道のカーブの
さしかかりのところ

自転車組がよく滑って転ぶ
教頭先生の車もいちど脱輪した
内股に力を入れて歩む群れ

白が黒に切り裂かれた轍
ナイフを入れたように
幾筋も幾筋も
世界は斜めに傾いでいく

誰が一番乗りかって
競い合って駆けっこで
ときには滑って転びながら
手を取り合って登っていく
みんなの背中が見えなくなった
午前9時半、ひとりで坂へむかう

長靴に
革靴に
運動靴に
スタッドレスタイヤに
踏まれ
噛み砕かれ
ぐちゃぐちゃと練り散らかされ
アスファルトとほとんどおんなじ色に染まった
汚らしい融けかけの雪のように
ニヤニヤわらって
だらだら坂を滑り降りる

ぼくを追いかけてくるのは
2時間目の始まりのチャイムだけ

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