遠雷ノイズ

遠雷の周波数が届くから
眠るあなたの指先が
かすかに振れる

午後3時の早すぎる黄昏
カーテンを引くように
部屋の明度を落としていく

世界が変わる
わけではない
わたしが変わるのだ

あなたから引き剥がした
汚れのにじむシーツを
ベランダへ出して広げる

地面を行き交う人と車は
次第にスピードを速めて
やがて散らばって見えなくなる

回転数が変わった
レコードプレーヤーが
歪んだオペレッタを流す

あなたが変わる
わけではない
世界が変わるのだ

掃き出し窓は開けたまま
冷たく湿った風を
部屋に満ちるままにして

眠りすぎたこどもみたいに
目を閉じられないまま
あなたに寄り添う

熱を感じない光の明滅
この喧騒が通り過ぎて
遠雷の周波数が届くまで

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