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映画『仮面ライダーギーツ 4人のエースと黒狐/王様戦隊キングオージャー アドベンチャー・ヘブン』 感想


概要

『仮面ライダーギーツ 4人のエースと黒狐』

脚本:高橋 悠也
監督:中澤 祥次郎
アクション監督:藤田 慧 (ジャパンアクションエンタープライズ)
特撮監督:佛田 洋 (特撮研究所)
音楽:佐橋 俊彦
主題歌:湘南乃風「Desire」

『王様戦隊キングオージャー アドベンチャー・ヘブン』

脚本:高野 水登
監督:上堀内 佳寿也
アクション監督:渡辺 淳
音楽:坂部 剛

劇場公開日:2023年7月28日(金曜日)

映画公式サイト リンク

感想

※上映は『王様戦隊キングオージャー』→『仮面ライダーギーツ』の順です。
※本文はネタバレを含んでいる可能性があります。

『仮面ライダーギーツ 4人のエースと黒狐』

前半「こんな浮世英寿はいやだ」
後半「それでこそ浮世英寿だ」

『仮面ライダーギーツ』がメタフィクション的作品だということを存分に活かした作品でした。冒頭で推しの魅力を語りまくるただの鈴木福くんさんジーンや、中盤でのプリキュア映画さながらに「(スクリーンの前の)みんなで想いを届けるんだ!!」という展開、ギーツワンネスの力の根源など、「作品内外で大勢から見られていることが前提となる作品」だからこそのストーリー運び。「みんなの想いを背負って戦う」にここまで説得力を持たせられる、そして観客を"ただの観客"にとどめない腕前に感動しました。

 そして、本作オリジナルヴィラン・メラ(演:長田庄平(チョコレートプラネット))が"愉快犯系の極悪人"として模範的と言ってもいいくらい、クレイジーかつ外道な、それでいてどこか小物感漂う立ち居振る舞いをしていました。Ⅹギーツの変身経緯を踏まえると"小物感"が特に重要で、長田さんの他者をおちょくるような、それでいて"ウケ狙い"感のない演技も相まって、彼が強ければ強いほど「盗んだ高級品を身に着けて上等な人間になった気でいるような滑稽さ」が強調されていくのがものすごく印象的でした("神殺しのメラ"自身の力がほとんど描写されていなかったというのもありますが)。
メラ/Ⅹギーツ役に長田さんを起用したのはニチアサ史に残るレベルの慧眼だと思います。

 物語開始早々、メラの目論見によって、英寿が世界もろとも4人に分裂してしまいます。それぞれ彼の一要素のみを有したな状態(例えば"運"のみを有した英寿は、力も知恵もてんで駄目だが滅茶苦茶な強運の持ち主)で、普段とは打って変わって頼りにならない。別々の世界に飛ばされ別々の英寿と行動を共にした景和、祢音、道長、ウィン、冴、ツムリは口を揃えて「こんなの英寿(ギーツ)じゃない!!」と嘆きました。そりゃそうだ。普段の落ち着きと余裕はどこへやら、四者四様で暴走したりライダーたちの足を引っ張ってしまったり。
 特にひどいのは"力"英寿。脳筋バカにも程がある。なんだよマグナムバックルを蹴飛ばして攻撃って。ミサイル攻撃(バッファを投げ飛ばしただけ)って。顔立ちの系統は全然違うのに、岸優太くん(元 King&Prince)が重なって見えました(同時に「流石の岸くんもここまでではない…はず」とも思いましたが)。これと一緒だと、流石の道長くんもリタ様なみに叫び散らしながらフォローに回らざるをえない(「勝手にしろ」じゃないあたり、そしてバッファを肩車しながら「俺が馬だー!」とのたまうギーツに「いやお前は狐だ!!」とツッコむあたり、やはり彼は真面目だよ…)。中盤でいつも通り自分だけで無謀に突っ込もうとした道長くんが冴さんから「力だけじゃⅩギーツには勝てない。あの英寿を見ていたならわかるはず」と反論されて黙ったのが、「俺あそこまでアホじゃねーもん…(´・ω・`)」と拗ねているように見える始末でした。ご苦労様です。

 Ⅹギーツとの戦いの最中で4人目の英寿が有していたものが判明します。それは英寿の"心"。ここに関しては彼の"真っ直ぐな瞳"から最初にそれを見抜いた一徹おじいちゃんはまさに"影のMVP"です。一徹おじいちゃんはテレビ本編でも本作でも戦力としては…なんですが、「長い人生経験を積んだからこその深み」によって精神的に支えたり物事の"奥"を見抜いたりする。そういう"適材適所"なキャラの活かし方も本作の味だと感じました(ちなみに一徹/ケイロウは腰痛で自滅というパターンが多いですが、演者の藏内秀樹さんは足腰元気な方だとか。そして藤岡弘、さん(1946年生まれ)より年下(1954年生まれ))。
 そして、仲間やオーディエンスの"想い"を背負って変身したギーツワンネスがとにかくかっこいい。(ライダーズクレストてんこ盛りなのに全然ダサく見えない)デザインもそうですが、"英寿らしさ"が戻ってくる感じもいい。最初は押され気味だけど、徐々に形勢逆転していく。そして、いつも通りスマートにフィニッシュ。「『盗んだ高級品』は『本物』には勝てない」っていうことが伝わってきました。

 エンディングでは世界が元通りになったその後が描かれています。個人的に、仲良しな桜井姉弟とすれ違い、彼らの方を振り向いて微笑む道長が凄く良かったです。本編ではあんなことになっただけに。

 例年通り映画で先行登場した仮面ライダーガッチャード。本作での変身シークエンスを見ると、基本フォームのモチーフは"バッタ"と"蒸気機関"なんですね。制作発表などで最初に見た時「1号2号(知っての通りモチーフは"バッタ")をポップかつメカニカルにしたような出で立ちだな」と感じたんですが、ちょっと当たってた。

『王様戦隊キングオージャー アドベンチャー・ヘブン』

 いやもう、熱い。熱すぎです。熱すぎて泣けました。いいんですか40分ないのにこんな満足感。
 ギラの即位に伴い、「死の国・ハーカバーカ」へ訪れた5人の王様。(1人を除き)それぞれが"死者"との因縁に対面する…というあらすじです。CGはきれいだし、アクションシーンも大迫力だし、何と言っても台詞回しが熱い。ギラが最終的に掲げた「小さな幸せを守る王」とか、怯えるリタ様にヤンマ総長がかけた言葉とか、「登場人物の心」が伝わってくる、まさに「生きた台詞」だと思います。

 初代シュゴッダム国王・ライニオール・ハスティー(演:中村獅童)が見た目も主義主張も正統派の「初代にして最強」って感じでかっこよかったです。チキューに大災厄が訪れると知って「優しいギラでは乱世の王にはなれない」として現世への復活を目論みつつ、最終的には「お前たちの手で救って見せろ!」とギラたちを認めたかのような言葉を放つのも良い。怪人態の重厚感あふれる姿や立ち回りはもちろん威風堂々としていて良い。そして、変身する時の台詞「王骸武装」がキングオージャーの「王鎧武装」と同音異字。なんですかこの某死神漫画なみのオサレセンスは。
 正直、本作だけで済ませるのがもったいないレベルのキャラクターでした。本編でも出てほしいです…(ちなみに名前だけなら第21話に登場している)。

 余談ですが、今回ジェラミーがヤンマ総長にこっそりつけた糸が現世とハーカバーカをつなぐキーアイテムになったのって、ギリシャ神話に出てくる「アリアドネの糸」が元ネタですかね?

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