平成29年司法試験・民法・設問1・解答に挑戦

平成29年司法試験・民法・設問1・解答に挑戦
【論点】
1、問題文は、法務省の司法試験から入手を。
2、Bは、甲1部分の土地について所有権に基づく土地明渡請求権
3、Cは、甲1部分の土地について賃借権の時効取得
4、短期時効取得
【解答例】
第1 設問1
1、Cの反論
 Bは、Cに対し、甲1部分の土地について所有権に基づく土地明渡を請求している。これに対し、Cは、甲1部分の土地の賃借権について短期(10年)時効取得(163条、162条2項)したことを反論することになる。
2、Cの反論の根拠
(1)163条は、所有権以外の財産権の時効取得ができることを規定する。土地の賃借権は、所有権以外の財産権であることから、甲1部分の土地の賃借権について時効取得できる。
(2)賃貸借の短期時効取得の要件は、①賃貸借の意思②平穏かつ公然③10年間占有④占有開始時に善意かつ無過失⑤時効援用の意思表示(145条)である。
(3)本問の検討
ア、①賃貸借の意思
Cは、乙土地と甲1土地、甲2土地を賃借する意思を有していたことから、要件①を充たす。
イ、②平穏かつ公然
 Cは、乙土地の所有者たるAに対し、診療所開設・運営をする目的で賃貸借契約を結んでおり、要件②を充たす。
ウ、④占有開始時に善意かつ無過失
 Cは、乙土地の登記簿を確認している。また、Aとともに本件土地を実地調査をしている上、甲1土地がAの所有であることを確認して賃貸借契約をしていることから、要件④を充たす。
エ、③10年間の占有
 この要件を検討するためには、実質的占有の開始時期が問題となる。A・C間の本件土地の賃貸借契約が交わされたのは平成16年9月15日であった。しかし、甲1部分で本件建物の工事が開始されたのは、同17年6月1日であり、甲1土地をCが実質的に占有を開始した時期は同日と評価できる。BがCに対し甲1部分の明渡請求したのは、平成27年4月20日であり、この時点ではCが本件建物の工事を開始して実質的占有を開始した同17年6月15日から、未だ10年を経過しておらず、要件③を充たさない。
オ、以上の事実から、Cの反論は認められない。
(平成29年司法試験・民法・設問2・関連基礎知識へ)

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