見出し画像

令和3年司法試験・民訴・基礎知識

令和3年司法試験・民訴・基礎知識
【登場人物】
A=本件土地の元所有者で、元貸主
B=本件土地の借主、本件レストラン経営者
X=Aから本件土地を譲渡を受け、本件土地の賃貸人
Y=B死亡によって、本件土地の賃借人としての地位の承継人
C=Xの息子、歯科医で開業を予定
Z=X・Y間の訴訟継続中に、Yから本件土地を賃借した者
L=Zの弁護士
J=裁判官
P=司法修習生
Q=司法修習生
【時系列】
1、X息子Cは、本件土地に歯科医院用の建物を建築を計画
2、XはYに対して、1000万円立退料を支払う用意がある。
ⅰ、Xは本件契約の期間満了後、本件契約の終了に基づき、Yは、Xから1000万円の支払を受けるのと引き換えに、Xに本件建物を収去して本件土地を明け渡せ」との判決を求めて訴訟を提起(本件訴訟)
ⅱ、第1回口頭弁論にX、Yは出頭。Xは前記1、2を主張。これに対し、Yは本件レストランの移転は困難、また立退料は不十分であると主張
ⅲ、Jは、Xに対し、立退料1000万円という額にどの程度のこだわりがあるか、を釈明を求めた。これに対し、Xは1000万円という額に強いこだわりはない。この額は早期解決の趣旨で若干多めに提示した。早期解決が亡くなった以上、より低い額が適切。しかし、裁判所がより多額の支払が必要であると考えるならば、検討する用意がある」と答弁。
3、JとPの会話
ⅰ、J=立退料は借地借家法6条の正当事由の有無を判断する上で、どのような役割を担うのか。
ⅱ、P=立退料は他の諸般の事情を総合考慮され、相互に補充し合って正当事由の基礎となる。(最判昭和46年11月25日)
ⅲ、J=裁判所が、Xの申出額よりも多額が正当事由と考える場合、どういう判決なるか
ⅳ、P=最判46年は、立退料300万円を500万円増額した判決を是認。したがって、Xの申出額と格段の相違の無い範囲内で増額した立退料の支払との引き換え給付判決が許容される。
ⅴ、J=その範囲を超えて増額した立退料の支払との引き換え給付判決はどうか。
ⅵ、P=最判昭和46年に照らすと難しい。
ⅶ、J=範囲を超えて増額した立退料の支払との引き換え給付判決について最判昭和46年は直接判断はしていない。また、そのような増額立退料を拒否するとはXの意思であるとは直ちにいえない・
ⅷ、P=確かにそうだ。
ⅸ、J=引換給付判決ができないときは、どのような判決なるか。その判決と、増額立退料との引換給付判決と対比して上で、後者の判決の許否を検討せよ「課題1」
 ところで、Xの申出額より少ない立退料の支払との引換給付判決はできるのか。
ⅹ、P=違和感があるが、Xは申出額より少額が適切とも陳述している。
ⅹⅰ、J=申出額より少額の立退料との引換給付判決は許容されるか「課題2」
【設問1】
課題1、2を答えろ。
【基本知識】
★処分権主義=訴訟の開始、審判対象の特定や範囲の限定、判決によらず訴訟を終わらせることについての処分権能を当事者に委ねる建前をいう。
★246条=裁判所は、当事者が申し立てていない事項を判決できない。
語呂→処分権主義は、当事者の文読む(246)通り
{判例}
最判昭和46年11月25日=京都市中京区の果物屋の家屋を巡る不動産会社と借家人との建物明渡訴訟
【要旨】 〔最高裁判所民事判例集〕
借家法1条の2に基づく解約を理由として家屋の明渡を求める訴訟において、その正当事由として、右家屋が京都市屈指の繁華街にある店舗でありながら老朽化して建替えを要する等原審認定のような諸事情(原判決理由参照)があるほか、家主がその補強条件として300万円もしくはこれと格段の相違のない範囲内で裁判所の決定する額の立退料を支払う旨の意思を表明し、これと引換えに家屋の明渡を求めている場合には500万円の立退料の支払と引換えに右明渡請求を認容することは相当である。
ポイント
①原告としては申出額より多少多めの立退料を支払ってでも、被告に建物を明け渡してもらいたいと考えるのが原告の合理的意思といえる。
②立退料が多額になることは被告に不意打ちにはならない。

判決内容が246条に違反するかどうかの一般的な基準になる。
【設問2】
事例
Yは、Zに本件建物を賃貸し、引き渡した。
Xは、Zに対して建物退去土地明渡請求を定立し、Zを引受人として訴訟引受の申立てをした。
J=本件で、民訴法50条の承継は認められるか。
P=同条にいう承継とは訴訟物である義務の承継を指すと理解すれば、Zがこのような義務をYから承継したとはいえない。
J=そのような承継の理解は狭すぎる。訴訟制度の趣旨を踏まえて、同条の意味内容を明かにして、承継したか否かを検討せよ「課題」
【設問2】
上記課題を答えろ。
【基本知識】
(義務承継人の訴訟引受け)
50条
だ1項=訴訟の係属中第三者がその訴訟の目的である義務の全部又は一部を承継したときは、裁判所は、当事者の申立てにより、決定で、その第三者に訴訟を引き受けさせることができる。
第2項=裁判所は、前項の決定をする場合には、当事者及び第三者を審尋しなければならない。
第3項=第四十一条第一項及び第三項並びに前二条の規定は、第一項の規定により訴訟を引き受けさせる決定があった場合について準用する。
語呂→訴訟引受けは、ご縁(50)の義務を引き継ぐこと
{判例}
最判昭和41年3月22日=福岡県醤油工業組合の土地明渡訴訟
【要旨】 〔最高裁判所民事判例集〕
土地賃貸人が賃貸借契約の終了を理由に土地賃借人に対して建物収去土地明渡を求める訴訟の係属中に、土地賃借人から右建物を賃借し、これに基づき右建物およびその敷地の占有を承継した者は、旧民事訴訟法第74条第1項(現50条)にいう「其ノ訴訟ノ目的タル債務ヲ承継シタ」第三者にあたる。事案
福岡県醤油工業組合がその所有地をO氏に賃貸した。同組合は契約違反賃貸契約を解除し建物収去土地明渡訴訟を起こしたが、その訴訟中に死亡。妻や子どもらが相続し、また、別の女性にも一部を賃貸した。同組合は、これらの者が訴訟引受人としたが、被告らがそれを否定して争った。
ポイント
①訴訟承継の制度趣旨は、訴訟継続中に紛争の主体に変化があった場合に、従前の訴訟資料を流用しつつ、紛争の一回的解決を実現するところにある。
②紛争継続中に、紛争の主体たる地位を承継したといえる者があれば、訴訟の目的である権利又は義務を承継したものとして当事者の地位を承継するものと考える。
【設問3】
事例
1、Zの弁護士Lが改めて本件レストランについて調査したところ、Bは本件土地を賃借した際、Aに対し1500万円を払い込んでいた。
2、この1500万円は本件契約の際に権利金として払い込んだ。
3、この権利金には、賃料の前払の性質だけでなく、更新料の前払の性質を含んでいた。
L=BからAに対して更新料の前払の性質を含む権利金を払い込んでいたことを本件新主張をする。Aの証人尋問について期日指定もらう。
Q=Xは、時機に遅れた攻撃防御として、却下決定を求めるのでは?
L=①Y自身が本件新主張をしたら、時機に遅れた攻撃防御として、却下決定を求める。②そうであるとしたら、Zによる本件新主張も却下されるべきと主張してくる。Xの立場から、①について、その結論を得る理由を説明せよ。また、XがYに対してすることができる訴訟法上の行為を言及せよ。「課題1」
 その上でXの立場からZによる新主張は却下されるべきとの立論を立てよ。さらにZの立場からの反論をせよ「課題2」
【基本知識】
{条文}
(時機に後れた攻撃防御方法の却下等)
157条
第1項=当事者が故意又は重大な過失により時機に後れて提出した攻撃又は防御の方法については、これにより訴訟の完結を遅延させることとなると認めたときは、裁判所は、申立てにより又は職権で、却下の決定をすることができる。
第2=攻撃又は防御の方法でその趣旨が明瞭でないものについて当事者が必要な釈明をせず、又は釈明をすべき期日に出頭しないときも、前項と同様とする。
語呂→時機に後れたので、イチゴはなく(157)なった
★157条の要件は①攻撃防御の方法の提出が「時機に後れ」たこと②前記①の際に「故意又は重大な過失」が認められること③前記①の結果、「訴訟の完結を遅延」させることとなる認められることである。
(審理の計画が定められている場合の攻撃防御方法の却下)
157条の2
 第百四十七条の三第三項又は第百五十六条の二(第百七十条第五項において準用する場合を含む。)の規定により特定の事項についての攻撃又は防御の方法を提出すべき期間が定められている場合において、当事者がその期間の経過後に提出した攻撃又は防御の方法については、これにより審理の計画に従った訴訟手続の進行に著しい支障を生ずるおそれがあると認めたときは、裁判所は、申立てにより又は職権で、却下の決定をすることができる。ただし、その当事者がその期間内に当該攻撃又は防御の方法を提出することができなかったことについて相当の理由があることを疎明したときは、この限りでない。
(弁論準備手続終結後の攻撃防御方法の提出)
174条
 第百六十七条の規定は、弁論準備手続の終結後に攻撃又は防御の方法を提出した当事者について準用する。
語呂→弁準後の攻撃防御は、いなし(174)て行え
(準備的口頭弁論終了後の攻撃防御方法の提出)
167条 準備的口頭弁論の終了後に攻撃又は防御の方法を提出した当事者は、相手方の求めがあるときは、相手方に対し、準備的口頭弁論の終了前にこれを提出することができなかった理由を説明しなければならない。
語呂→準弁後の攻撃防御には、いろんな(167)理由を述べよ。
{課題2の考え方}
1、訴訟の引受人は、従前の訴訟状態を引く受けるところ、Yの新主張が時機に遅れた攻撃防御として却下されるものならば、Zも同様
2、Zの反論としては、Yが漫然として主張しなかったことまで、承継人の責任にするのは承継人に不利益である。この点については訴訟状態を引受け義務は生じていない。
以上

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?