私の文体練習(終)
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no. 1 ひな形「蛾」
譜面立てに、美しい蛾が一匹、翅を広げてとまっていた。「私を弾いてごらん」そう言われた気がして、僕はピアノの前に座り指を構えた。一方、お母さんは殺虫剤を構えていた。
no. 91 ざわざわ
ぴかぴかの譜面立てに、きらきら美しい蛾が一匹、ひらひら翅を広げてとまっていた。「私をぽろぽろ弾いてごらん」そうはきはき言われた気がして、僕はどきどき、ピアノの前に座りおずおず指を構えた。一方、お母さんはいらいら殺虫剤を構えていた。
no. 92 名付ける
譜面立てに、美しいユキエが一匹、翅を広げてとまっていた。「ユキエを弾いてごらん」そう言われた気がして、ケンイチはピアノの前に座り指を構えた。一方、キョウコは殺虫剤を構えていた。
no. 93 金銭感覚
中古品の譜面立てに、値がつけられないほど美しい蛾が一匹、2枚1セットの翅を広げてとまっていた。「ノーギャラで私を弾いてごらん」そう言われた気がして、僕はローンがまだ残っているピアノの前に座り小銭くさい指を構えた。一方、お母さんは特価で売られていた殺虫剤を構えていた。
no. 94 聞き手
譜面立て?ああ、譜面台?に、綺麗な……蛾?蛾かぁ……。ふーん、蛾が、翅をねぇ……。え?そんなこと言ったの?ああ、言った気がしただけ?ふーん……。ああ、それでピアノに……。そうだね、ピアノの前だったら、指を、そうするかな。うん。ああ、お母さんが……殺虫剤を。へぇ……。それはそれは……。
no. 95 占い
「蛾」を選んだ人!気になる人を誘ってみよう!
「ピアノ」を選んだ人!新しいことにチャレンジしてみよう!
「殺虫剤」を選んだ人!思い切りよく行動することが大切!
no. 96 動画
【ピアノ】蛾「私を弾いて」→結果・・・【修羅場】
no. 97 性別を変える
譜面立てに、美しい蛾が一匹、翅を広げてとまっていた。「俺を弾いてごらん」そう言われた気がして、あたしはピアノの前に座り指を構えた。一方、お父さんは殺虫剤を構えていた。
no. 98 老いる
譜面立てに、若い頃は美しかったことがうかがえる蛾が一匹、翅を広げてとまっていた。「あたくしを弾いてごらん」そう言われた気がして、わしはピアノの前に座り指を構えた。一方、お母さんの幽霊は殺虫剤を構えていた。
no. 99 おまかせ
譜面立てに、美しい蛾が一匹、翅を広げてとまっていた。ここから先の展開は読者に委ねる。
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