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no. 1　ひな形「蛾」

　譜面立てに、美しい蛾が一匹、翅を広げてとまっていた。「私を弾いてごらん」そう言われた気がして、僕はピアノの前に座り指を構えた。一方、お母さんは殺虫剤を構えていた。

no. 51　解説パネル

「蛾」

2020年　油彩・カンヴァス　81.3×65cm　個人蔵

　譜面立てにとまっている蛾の視線は歪められ、ピアノの前に座り指を構えている少年の視線とぶつかっている。ピアノにうっすら反射している女性は少年の母親であろう。彼女は(おそらく)殺虫剤を握りしめており、少年はそれに気付いているようにみえるが、一方の蛾はあいまいな表情をしている。

no. 52　英語のテスト

問1　次の日本文を英語に訳せ。

(1)　譜面立てにとまっているあの蛾は美しいです。
(2)　"私を弾きなさい"と彼女は言いました。
(3)　ケンイチはピアノの前に座った後、指を構えましたか。
(4)　ケンイチのお母さんは殺虫剤を構えているところです。

no. 53　レシピ(2)

あ・・・2つ
い・・・8つ
う・・・4つ
え・・・3つ
お・・・1つ
か・・・3つ
き・・・2つ
く・・・2つ
さ・・・2つ
し・・・3つ
す・・・1つ
そ・・・1つ
た・・・6つ
ち・・・1つ
つ・・・1つ
て・・・6つ
と・・・1つ
に・・・2つ
ね・・・1つ
の・・・2つ
は・・・3つ
ひ・・・2つ
ふ・・・1つ
ま・・・4つ
め・・・1つ
ゆ・・・1つ
ら・・・1つ
り・・・1つ
れ・・・1つ
ろ・・・1つ
わ・・・3つ
を・・・4つ
が・・・3つ
げ・・・1つ
ご・・・1つ
ざ・・・1つ
び・・・1つ
ぼ・・・1つ
ぴ・・・2つ
ぽ・・・1つ
っ・・・4つ
ゅ・・・1つ

no. 54　代用品

　車のフロントガラスにワイパーで固定した楽譜に、美しいチョウが一匹、栞を広げてとまっていた。「私を描いてごらん」そうテレパシーで伝えられた気がして、僕はオルガンの前に座り鼻を構えた。一方、お父さんは蝿叩きを構えていた。

no. 55　数字を入れてみる

　譜面立てに、美しい蛾が1匹、2枚の翅を広げて、午後3時、とまっていた。「わた4を弾いて5らん」6回程そう言われた気がして、当時7歳の僕は8年前に買ったピアノの前に座り指を構えた。そこへ9に現れたお母さんは、虫の数を0にするため、殺虫剤を構えていた。

no. 56　検閲

　譜面立てに、×××蛾が一匹、翅を広げてとまっていた。「×××××ごらん」そう言われた気がして、僕はピアノの前に座り指を構えた。一方、お母さんは×××を構えていた。

no. 57　人生はゲームだ

　コントローラーのスティックで視点を変えると、譜面立てに、美しい蛾が一匹、翅を広げてとまっていた。BGMが変わった。すると、「私を弾いてごらん」と、その蛾が言って、選択肢が出た。ここでいったんセーブした。再開して、一番下の選択肢を選んだ結果、主人公がピアノの前に座り指を構えた。その直後に、主人公の母親が殺虫剤を構えて現れた。リセットを押した。

no. 58　村の戦士

　オレ、蛾、見タ。蛾、言ッタ。我ヲ、弾ケ。オレ、ピアノノ前、座ッタ。長老、殺虫剤、持ッテキタ。

no. 59　死神

　譜面立てに、美しい蛾(余命8分)が一匹、翅を広げてとまっていた。「私を弾いてごらん」そう言われた気がして、少年(余命78年)はピアノの前に座り指を構えた。一方、母親(余命59年)は殺虫剤を構えていた。

no. 60　職質

「まず、蛾がいたんだ？」
「はい……」
「どこに？」
「あの、譜面立てに……」
「はぁ、はぁ。譜面立て……なるほど。で？」
「あの、その蛾が、何かあの、弾いてごらん、みたいな……」
「え？弾いて？」
「あ、はい、あのー……あの、私を、弾いてごらん、みたいな、こと、言って……あの、言われて、僕が」
「それは何、蛾を、楽譜的に見て、みたいなことかな」
「ああ、そうですね、たぶん……」
「はぁ、はぁ。なるほど。私を弾いて……はいはい。で？」
「あ、で、あのー、だから、座ったんですよ、ピア……」
「どこに？」
「ピ、あの、ピアノの前に……」
「はぁ、はぁ。で？」
「で、あのー……弾こうと思って、で、そしたら、母親が……」
「お母さん？」
「はい、あの、僕の、お母さん……」
「はぁ、はぁ。で？」
「で、お母さんが……あのー、殺虫剤……持ってて……」
「殺虫剤？」
「あの、はい、あのー、たぶん、蛾を……あの、さっきの蛾を、たぶん、殺す的な……」
「はぁ……はぁ……なるほど……で？」