私の文体練習(7)

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no. 1 ひな形「蛾」

 譜面立てに、美しい蛾が一匹、翅を広げてとまっていた。「私を弾いてごらん」そう言われた気がして、僕はピアノの前に座り指を構えた。一方、お母さんは殺虫剤を構えていた。


no. 61 明言を避ける

 芸術活動に用いる器具に、客観的に調査してある一定以上の水準に達していると結論付けて差し支えないであろう昆虫が一匹ないし数匹、ある器官をある状態にして静止していた。「誰かをある状態にしてごらん」あくまでそう伝えられた気がして、男性は楽器の前に静止した状態になりある器官を用いてある動作をした。一方、男性の親族は容器に入った薬剤を用いてある動作をした。


no. 62 正確に

 歌曲または楽曲を一定の記号を用いて記載したものを立てる器具に、形・色などが快くこのましいチョウ目のチョウ以外の昆虫が自然数の最初の数と同じ頭数、昆虫類のつばさを幅・面積・空間を大きくしてそこにとどまっていた。「私(チョウ目のチョウ以外の昆虫)をかなでてごらん」そう言葉で表現された気がして、この物語の主人公は大きな共鳴箱中に金属の弦を張り打弦装置を施し鍵盤を指先で打つとアクションの働きによってハンマーが弦を叩き弱音と強音とを自在に発音し得る鍵盤楽器の正面にあたるところに膝を折り曲げて落ち着き、手先の末端の枝のように分かれた部分を準備しととのえた。一方、この物語の主人公のおんなおやは害虫の防除に用いる薬剤を準備しととのえていた。


no. 63 倒置法

 美しい蛾が一匹、翅を広げてとまっていた、譜面立てに。「弾いてごらん、私を」そう言われた気がして、僕は構えた、指を、ピアノの前に座って。一方、殺虫剤を構えていた、お母さんは。


no. 64 教科書

 フメン立テ ニ ウツクシイ ガ ガ 一ピキ トマツテ オリマシタ。「ワタクシ ヲ ヒイテ ゴラン。」サウ 言ハレタヤウナ 気ガ イタシマシテ ボク ハ ピアノ ノ マヘ ニ スワリ ユビ ヲ カマヘマシタ。トコロ ガ オ母サマ ハ サツチユウザイ ヲ カマヘテ オリマシタ。


no. 65 実況

 さぁ、譜面立てにその大きな翅を広げてとまっておりますのは、一匹の美しい蛾、その美しさはあの蝶にも劣りません。おぉ、何だ?何か言いましたね。「私を弾いてごらん」言いました!今、確かに蛾がそう発言いたしました!さぁ、そう言われた少年は、ピアノの前に座り指を構える!おっと、ここで乱入者お母さん!何と殺虫剤を構えておりますっ!


no. 66 エピソードトーク

 で、譜面立て、パッ、と見たら、うわうわうわ、すげーキレーな蛾がいて!一匹で!そう、一匹なんスよ。で、その蛾が、翅を、バッ、と広げて、とまってたんスよ、譜面立てに。そしたら!「私を弾いてごらん……」……言うんですよ……!いや、ホントなんスよ!いや、ホントに!で、そう言われちゃったんで、俺も、バーッ、てピアノの前行くじゃないですか。で、座って、こう、指構えたんスよ。弾くぞー、って思って。そしたら……何か、後ろに気配感じて。え?と思って。後ろ、ガッ、て振り向いたら……お袋が殺虫剤構えてました。


no. 67 頭韻

蛾が一匹譜面立てにとまっていた
我が強そうな目をしていた

翅が美しかったのを見て
跳ね炭のように心が反応した

私を弾いてごらん、と蛾が言った
綿埃が積もったピアノが目に入った

鍵盤の前で指を構えた
顕示欲がむくむくと湧いてきた

さっきまでなかった殺気を感じた
殺虫剤を構えた母と目が合った


no. 68 機械翻訳

 譜面台に美しい蛾が羽を広げて止まっていました。「遊んでください」誰かが私にそう言っている気がして、私はピアノの前に座って指を立てました。その間に母親は殺虫剤を準備していた。


no. 69 造語

 スコアキーピング装置に、単身美蛾が、展翅静止状態だった。「我弾せよ」そうふんわり伝令され、僕はピアノフロントセクションに指構え座りをした。一方、殺虫心の母がいた。


no. 70 暗喩

 音楽家の忠実なる執事の胸に、触角のある堕天使が光輝きながら、一時の安息を享受していた。「私とともに黄金の音色が響く楽園へと行かぬか」そう告げられた気がして、我は甘美なる吐息で幾人もの恋を彩ってきたシマウマの背中に、罪深き指を構えた。ああ、されど、一方、全てを司る者は、堕天使を切り裂く剣を天に掲げ、その時を待っていた。

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