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【美術】ハマスホイとデンマーク絵画

2日目はハマスホイとデンマーク絵画について。今年の初め、東京都美術館で観た展覧会のまとめ及び感想です。

ハマスホイは19世紀終わりから20世紀はじめにかけて活躍しました。その静謐で冒し難い空気を湛えた室内画から、「北欧のフェルメール」とも称されます。もっとも、どこか物憂げで冷たい雰囲気はフェルメールとは懸隔です。
そんな独特な雰囲気を持つハマスホイとはどんな画家なのでしょうか。


19世紀前半、ナポレオン戦争の煽りを受けてデンマークの王侯貴族の政治的経済的パワーが凋落しました。代わって力を付けたのが市民階級、この層が19世紀のデンマーク文化におけるパトロンとなります。
したがって、19世紀デンマーク芸術は市民階級の価値観、好みを色濃く反映し、風景画や風俗画など、身近な自然や日常を題材にした、わかりやすく親しみやすい絵画が好まれるようになりました。

1880年代頃からは、風俗画の中でも室内画が流行します。もともと、雪が多く室内で過ごす時間が多い北欧において、室内画は非常に親和性が高かったのでしょう。

これらは、同じくデンマークの画家ヨハンスンによる1890年代を代表する作品です。何気ない日常の幸せな一コマを描き出しています。

これに対して、上に載せた展示会のパンフレットにもなっているハマスホイの絵画は毛色が異なります。描かれた女性は後ろを向き、「日常の幸せ」を感じさせる要素を構成しているわけではありません。あくまで、ハマスホイの絵画においては主役は部屋であり、人物はそれを引き立てる脇役でしかないのでしょう。

自分はハマスホイの魅力は「音が聞こえない」ことだと思います。ヨハンスンの作品から子供達の声が聞こえてくるのとは対照的です。フェルメールの作品も、牛乳を注ぐ音や外の鳥の囀りが聞こえてきそうです。
パンフレットの謳い文句「静かなる衝撃」というのは、初めはそこまで有名でないハマスホイのセンスを評しているのだと思いましたが、こう考えると、その無音の画面のインパクトを表しているのかもしれません。

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