禁酒6か月と7日目

禁酒してから半年が経過した。
あれほど好きだった酒をきっぱり辞められてるのは何故だろう。
もちろん本当に大きな事件を起こしてしまったし、
色々な方に多大なる迷惑をかけてきた。
それでもアルコールの依存性は大麻とかより全然高い。
日本社会に広く浸透しているから感覚が麻痺しているだけで、
ドラッグであることには変わりがない。
いつ、タガが外れて意識を無くなるまで飲む日が訪れるんだろうか
というのは本当に不安だ。

それは人事の人もそうなんだろう。
事件以来定期的に面談の機会を設けていただいている。
体調はどうか、精神的にはどうか、
そういった質問のあと必ず聞かれる質問がある。

お酒は飲んでいないか?
だ。
決まって、飲んでおりません。と答える。
年明けの面談では訝しそうに本当か、と確認された。
年末年始だとお酒の席も多い。
すすめられて一杯だけ、みたいなことは本当に無かったかと。

無い。

悔しかった。
ひたすら悔しかった。

あれだけの事件を起こしている。
人事の方の立場だとそこは厳密に確認するのは当然だと思う。

ただ、やっぱり悲しい。
一杯だけならいいや、だとかほとぼりが冷めればみたいな
生半可な覚悟で酒をやめているつもりはない。

フラれた彼女にも言われた通り、人はそう簡単には変わらない。
それでも、留置所での20日間は本当に辛かった。
大前提被害者様はもっと辛かったと思う。
それでも、23年間、自分なりには葛藤してきた。

貧乏な家が嫌でとにかく偏差値を上げてきた。
受験を言い訳に高2で辞める奴らもいたけど、
引退まで妥協なく部活はやりきった。
経済的に国立しか無理だったが第一志望にも受かった。
研究室でマウントの取り合いをしている奴らを尻目に
ESを出しまくった。インターンも20社近く参加した。
20代はスキルを稼ごうとベンチャー気質のある会社に入社した。
入社までの期間も遊び惚けずに資格試験に合格した。
入社後は順位の付くものにはとにかく1位を目指した。
土日は平日分からなった単語を調べる時間に当ててた。
入社後のテストは同期で1位を取った。

勉強ばかりじゃなく人間性も磨こうと思った。
就活で自分の協調性の無さを思い知った。
先輩方の飲み会の幹事は率先してやった。
行事ごとの後片づけも嫌な顔せず全力でやった。
つまらない、興味がないと思っても笑顔で先輩の話を聞いた。
嫌な飲み会でも楽しそうに振る舞った。

先輩、上司も評価してくださり1年目ながら沢山打席に立たせて貰えた。
コツコツ積み上げてきたものが形になっている実感が湧いた。

そんな中で事件が起こった。

それも、自分が全く記憶が無い中で起こった事件だった。

事実を受け入れる余裕もないまま檻の中に閉じ込められた。
風呂は1週間に1回。夏場はクーラーはあるものの少し汗ばむ。
着替えを貸し出す制度はあるが、事前にそういった説明は無い。
食事は1日3食だが半ば腐ったような匂いのする冷たい弁当。
臭い恰好をして臭い物を食べて臭いまま寝る。これを20日間繰り返す。
たまに裁判所へ連れていかれ、
検事に人間性を否定されるような尋問を受ける。

全部自業自得。自分が犯した罪を考えれば妥当な扱い、
むしろ20日程度で済んだのは寛大すぎる処罰だと思う。

それでも、頭じゃわかってても。悔しい。

檻の中ではどんな犯罪者も同じ犯罪者として扱われる。
ある売人は薬物の密売をしていることを彼女に密告されたことに激怒し、
彼女を暴行しているところを現行犯で逮捕された。
彼は自分の彼女を”クソ女”と罵り、周りは”運が悪かった”と男を宥めた。
まるで反省の意思などない。みんなそうなんだ。
彼曰く密売しているのは暇つぶし、バイトするのがだるいから。
自分の都合で人を傷つける人間と同じ犯罪者として扱われる。
風呂に入れないことよりこの方が辛かった。
オレオレ詐欺をして被害総額を売上と呼ぶ男に、
”酒で人に迷惑をかけるなんてレベルが低い、ガキじゃないんだから”
と説教をされた。
彼曰く、ストレスから酒逃げることは悪で、真っ当に働くことから逃げることは正義らしい。

何でこんな奴らと一緒の扱いを受けないといけないんだ。

何でこんなことになったんだ。

”本当に飲んでないのか?”
”本当に飲んでないんだ、心を入れ替えたんだね”

心を入れ替えるも何も、元来僕は真面目な人間だ。特に仕事に関しては。
事件が起きる前から、23年間、
貧困から抜け出す、そのために何ができるか、を考えて努力してきた。
それが部活、受験、バイト、就活、仕事と時期によって形を変えてきただけで根本に対する熱意は1ミリもブレてない。
今後もそれは変わらない。
だから信じて欲しい。
言葉でどうこう言うのは簡単だからとにかく売上で証明したい。


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