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【読書メモ】「Nのために」(湊かなえさん)

小説「Nのために」を読んでみた。

高層マンションにて夫婦が殺害されているところから物語が始まる。

その場に居合わせた4名のそれぞれの供述により、事件はあっさりと決着を迎えた、という印象を持つところからストーリーが展開する。

4名それぞれが過去も含め、事件当日のことを独白していく。

誰も、供述の時に嘘は行っていない。

起こった事実の一部分だけを切り取って話しているだけで、こうも都合よく事実をねじ曲げて伝えることができるのか、、!!の驚きの連続。

こんな素朴そうな空気感の子が、ここまで計算高く行動しているとは、、、

セレブ主婦で素敵な女性代表!みたいなこの方が、ここまでドロドロした生き方をしているとは、、、


人って見かけによらないなぁと、色々と考えさせられてしまう登場人物の目白押し。もう一度買うが、誰も嘘の供述はしていない。ここの部分が、本当にゾッとした。割とこれって、現実世界でも起きていることなのかも、と考え込んでしまった。殺人事件とか犯人とか、そこまでのスケールのものではなく、「あの人がこう言ってたよ」みたいな伝言ゲームで起こる問題って、ほぼこれに起因するのでは。途中、伝言をしている人は嘘はついているわけではなく(時折、悪意をもって捻じ曲げているケースは別として)、起こった事実の、ほんの一部分のみを主観をもって切り取って、伝えているのだ。

世の中の伝聞での情報は、往々にしてこの可能性があるのかも、と思うと、情報を受け取り際はスマートにならなくてはいけないな。やはり、まずはコツコツと本を読んだり、普段はタッチしないジャンルの何かに触れてみたり、教養を少しずつ身につけていくことで、伝聞の情報を精査して受け取れる人間になりたい。

知識や教養を身につけることで、自分がなりたい姿とは、を思いがけず考えることになった一冊。

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