橘 春

覚えていてください

橘 春

覚えていてください

最近の記事

2024年2月自選

#tanka 君にならどれだけ脳をぐちゃぐちゃにされてもいいと思います まだ チョコレート全然いらない 通学路坂道だるい 誰かと死にたい 泣きながら話す いちばん大切な友達の目がきれいなことを 水・光・笑顔ばかりの展示室 君の影 ずっと一緒にいてよ 真夜中に真夏の風に撫でられて(殴られて)吉野家へ行きたい 鍵垢の君が見ている夕焼けを見たい 絶対良い空だから やわらかくやさしく春になる街の高速バスで帰郷する君  2月に入ってしばらくは、後輩の卒業制作展示会を手

    • 簡単に詳しく自分のことを話したい

      3月になったというのに寒いですね。風が冷たくて、外に出るのが億劫です。冬の真ん中より冬の終わりの方が寒いの、不思議だ。 大学の後輩の方々のnoteを読んで、自分もやりたくなったのでやります。 https://100mon.jp/q/4068 簡単に詳しく自分のことを話したい人に100の質問 名前は? 橘春 その名前の由来は? 春が苦手なので、自分の名前だったら好きになれるかな と。 あと漢字一文字苗字かっこいい 誕生日は? 3/1 歳は? 23 血液型は? A

      • 2024年1月自選

        #tanka 子宮頸がんのワクチン こんな紙切れ一枚で女に戻る おうとつにこぶしを入れてやわらかいかたまりを取り出した後輩 壊れた花瓶は弁償するけれど壊れかけの花瓶はそのまま 自分から傷つきに行く 君の家まで行くバスの減便を知る この町は君の記憶を持ちすぎてどこへ逃げても死にそうになる 好きだからもう触れないよ とげのあるおばけになって立つ枕元 穴 という余白が好きで 違ったらごめんね、君も雷が好き?  あけましておめでとうございました。もう3月です。春です

        • 空洞日記

           言葉を飲み込むのがうまくなった。と思っていたのに、体調を崩してからまた下手になってしまった。おそらく薬の副作用だろう。心配されていた発疹、口内炎、下痢の副作用は出ていないが、口渇、頭痛、吐き気がひどい。でも薬が錠剤で本当によかった。八月に飲んだメニエールの薬は、間違えて毒を渡されたのかと不安になるほどまずかった。「良薬口に苦し」とはまさにこのことである。ネット民風にいうと、良薬口に苦C   以下は、2023年11月頃からの日記です。 ・日記を書くのが下手になってしまった

        2024年2月自選

          宇宙、あるいは、夜の海

           三日ぶりにシャワーを浴びた。脂でネトネトの皮膚と髪の毛を洗い流し、ついでに鼻の角栓ケアもした。体はさっぱりしたが、相変わらず苦しい時間だった。  私はお風呂が大の苦手で、翌日の予定がなければ入らない日も多々ある。お風呂が苦手なんだよね、と話すと、ほとんどの人が「わかる!」のあとに「気持ちいいけどめんどくさい」「もっと早く入っておけばよかったと思う」と続ける。そのたびに、彼らと自分の間に境界線を感じてしまう。私が入浴後に感じることといえば「やっと作業が終わった!」であり「また

          宇宙、あるいは、夜の海

          神様は玉ねぎなんて平気

          神様は玉ねぎなんて平気      #tanka #短歌 痛くない心臓 だって少しでも君になりたいから、水を飲む 今日暇? と連絡が来た夜 伝書鳩も一緒に喜んでいる 平然を装っている本当は嬉し泣きするくらい嬉しい 入り口の近くの方の食堂がまずいと聞いてすこし悲しい 先輩に「ピーチフィズみたいな男だね」と言われて、それから、ずっと、 最終話の更新日が来週と気づいてタイムマシンが欲しい 助けたい、くらい好きだよ 神様は玉ねぎなんて平気だろうけど 久しぶり。うん久しぶ

          神様は玉ねぎなんて平気

          ヤンニョム消えないでチキン

           牛丼を食べに行こうという話になって、二十二時半に吉野家へ行った。明るい蛍光灯の下でチーズの絡まった牛肉を食べながら、私たちは記憶について話した。小学校の同級生の話から、近頃の儚い人間関係の話まで。  未だに縁が続いている小学校の同級生は、ほとんどTちゃんだけだ。ほとんどというのは、年に一、二回会うグループのうちの数人が小・中・高と同じだからである。だけどそれらは小さな同窓会や習慣のようなもので、Tちゃんとの自主的な交流とは違う。だからほとんど。  まんぷくー! と言いなが

          ヤンニョム消えないでチキン

          中学時代の日記を読んだ。あの頃確かに悩んでいたはずなのに、思い出すのは周囲の人たちとの鮮やかな記憶ばかりだった。私は昔から友達に恵まれている。今の苦しみも、時間が経てば眩しい光になるのだろう。卒業以来、はじめて中学時代に戻りたいと思えた。

          中学時代の日記を読んだ。あの頃確かに悩んでいたはずなのに、思い出すのは周囲の人たちとの鮮やかな記憶ばかりだった。私は昔から友達に恵まれている。今の苦しみも、時間が経てば眩しい光になるのだろう。卒業以来、はじめて中学時代に戻りたいと思えた。

          本当を 本当だけを伝え合う関係性の脆さ 逆にね?

           世界のすべての人が幸福に見えます  というと主語が巨大すぎるので、もう少し小さくしておきます。TLのすべての人が幸福に見えます。  今日、推してから初めて推しの配信をリアタイしました。そもそも生きている人間を推すということ自体が珍しい私には、なんだか啓示的なものを感じました。それでなんとなく その推しとはまったくの無関係なのですが、メンヘラ神のブログを見に行きました。  彼女のことは本当に好きで 憧れで 故人に対してそう言っていいのかはわからないけれど、彼女の言葉を読んで

          本当を 本当だけを伝え合う関係性の脆さ 逆にね?

          がらくた

           三叉路で、檜山はわざと右に曲がった。家を出て五分、普通に歩けば約束の時間に充分間に合う。せかせかと歩けば、二分ほど余る。しかし、檜山が選んだのは五分遅れる道だ。  一昨日、美穂から着信があった。大学の講義中で出られなかったのだが、そうでなくとも気づかないふりをしていただろう。後からかけ直すことはせず、メールで用件を尋ねた。久しぶりに会ってみるのはどうか、といった内容だった。  別の高校に進学するまで、檜山と美穂は桜桃のように過ごしてきた。中学卒業後もしばらくは連絡をとってい

          がらくた

          頻繁に夢に出てくる人に「あなたが虚しいのは、本物に会いたいからじゃない?」と言われて目が覚めた。ほぼ毎晩夢で会っているからまだ大丈夫だと思っていたけど、思おうとしていただけなのかもしれない。会いたい人全員「会おう」「いいよ」で解決できたらいいのにな。

          頻繁に夢に出てくる人に「あなたが虚しいのは、本物に会いたいからじゃない?」と言われて目が覚めた。ほぼ毎晩夢で会っているからまだ大丈夫だと思っていたけど、思おうとしていただけなのかもしれない。会いたい人全員「会おう」「いいよ」で解決できたらいいのにな。

          行きたい場所や見せたい映画がたくさんある。教えてほしいことも、聞いてほしいことも。それらはまだ過去形ではない。それなのに、関わることが怖くなったのは何故だろう。ずっと繋がりが切れることに怯えていたのに。本当に世界のすべてだったのに。

          行きたい場所や見せたい映画がたくさんある。教えてほしいことも、聞いてほしいことも。それらはまだ過去形ではない。それなのに、関わることが怖くなったのは何故だろう。ずっと繋がりが切れることに怯えていたのに。本当に世界のすべてだったのに。

          君から人として扱われたいし、君を人として扱いたい

           嘘の夢をよく見る。まぼろしの夢と違うところは、現実味があって、ふと目が覚めたときに(夢だったんだ……)と落ち込むところだ。まぼろしの夢は、途中でこれが夢だと気づく。嘘の夢は起きるまで気づかない。ときどき、いや結構頻繁に、夢か現実かわからなくなって混乱する。スーパーへ買い物に行って友達と会う夢なんてほぼ現実で、「この前スーパーで会ったときさ」と話して、相手の眉尻が下がってようやく気づく。夢だったんだ。それを理解するときの、肌のひとつ下の層が冷えていく感覚が、少し苦手だ。  今

          君から人として扱われたいし、君を人として扱いたい

          博愛主義者たちの偏愛

           うーん、まあ、でも、自分以外の誰かが自分の言葉を百パーセント正しく理解してくれるのかっていうと不可能だろうし、そうでないなら落ち込んだりするだろうし、誰にもなにも言わないで、無かったことにする方が賢明なんじゃない?  と、彼は答えた。私の「ぜんぶがつらい。ぜんぶぐちゃぐちゃにしてもいいかな」という感情任せの質問に対して。 「落ち込んだときの橘は隕石みたいになるからなあ。ちょっと深呼吸して、世界は何一つ自分の味方になってくれないことを思い出してみよう」  彼、といっても、

          博愛主義者たちの偏愛

          死や虹や愛について

           ゆっくりと傾く地球に合わせて、千夏の肩へ頭を預けようとしたときだった。死や、虹や、愛について分析した本を読んでいる千夏の眉毛が歪んだ。彼女がすっぴんではないことに気がついて、僕は声を上げた。千夏はため息をついた。どうやら、僕は疲れているらしい。  僕は惑星か、惑星だとすれば土星か、と訊いた。千夏は瞼を輝かせながら「あんたは惑星になれない」と言った。惑星になれないことを知った僕の脳は、混乱して、揺れる。少しだけ千夏から目を離す。  白いローテーブルの上には、数枚の履歴書が重な

          死や虹や愛について

          地獄学生

           ここのところ、私は世界の夜にいる。くらやみ。孤独。小説が、というより文章が、書けない、というよりわからない。これまで、作品をつくるときはトンネルの中にいて、光の差す方が出口で、それに向かって歩き続けるという感覚だった。今はスマホの明かりすらなく、自分がいったいどこにいるのか、句読点の打ち方もなんだかキモいような気がしてくるし、本当にこんな文章をインターネットに公開していいのかどうかさえわからない。きっかけは、自分の中では確かにあった。だけどそれを思い出しながら整理して書く、

          地獄学生