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Tr.01 いわゆるJazz曲とはなんぞや?

Jazzでよく演奏される曲をスタンダード・ナンバーと呼ばれる。
それはJazzミュージシャンのオリジナル曲以外にも、古いポピュラー音楽や当時ヒットした映画のテーマ曲なんかも多い。
ミュージシャンたちははその曲を元にして、アレンジを加え、アドリブで演奏し、作品として発表してきた。多分こんな感じだったんじゃないかな。
* こんな曲作ったんだけど、一緒にやらない?
* あの曲いい感じだからアレンジしてみたんだよね
* どうだ、この演奏!俺のアドリブを聞け!

その作品に対して他のミュージシャンは刺激をうけ、あるいは反発しながらJazzは発展していった。
そうしたインスピレーションの交換をしていくうちに、徐々に最大公約数的な共通認識が生まれ、淘汰されずに残ったものがスタンダードとして定着をした。
そのスタンダードに挑戦していくのは、今日のジャズマンも同じ。
(共通のお題を自分の解釈で演じる、という点でジャズと古典落語の類似性はよく引き合いにだされる)

Autumn Leaves (ビル・エヴァンス / キャンノンボール・アダレイ)

今回紹介するのはAutumn Leaves(枯葉)というスタンダード中のスタンダード。
演奏はこれもまた有名なビル・エヴァンスのピアノ・トリオ演奏。(pf: ビル・エヴァンス, b: スコット・ラファロ, dr: ポール・モチアン)
僕のJazz原風景の一つに父親のレコード部屋にあったこのアルバムJazzのジャケット絵がある。
きっちりと髪を固め、縁眼鏡のビルがが気難しい顔をこちらを見ているポートレイト。
まずは聞いてほしい。これは最後まで聞いてほしい。6:00分間の演奏だ。


Jazzってかっこいいでしょう?
よくわからないけど、すごい!と思わせる力がこの演奏にはある。
でもよくわかった上で、すごい!のほうがよいでしょう。というわけで、解説する。

イントロ
アップテンポ。8小節のイントロで、引き込まれる。
前テーマ
たっぷり情緒的な演奏、テーマを逸脱しない範囲でアドリブが入る。
疾走感のあるランニングベースだが、決して軽くはない。
ブラシによるスネアのアクセントが際立ち、とても気持ちがいい。
ベースソロ
一般的にはピアノのソロから始まることが多いが、いきなりベースのソロ。ビルのスコットに対する期待と信頼が感じられる。
ピアノの雰囲気を引き継ぎメロディアスなフレーズが紡がれる
徐々にピアノがベースの音色に絡みだし、呼応するかのようにドラムもフレーズをだす
誰かが主ではない、3者が対等な立場で掛け合いが行われる。
優れた演奏家が相互に触発しながら演奏を行うインタープレイがここに完成した。
ピアノが存在感を増していき、主導権を握っていく。
ピアノソロ
自然なカットインからのピアノソロ。ビルの本領発揮
ベースも高い緊張感は持続したまま。
ドラムスはブラシからスティックに持ち替え、ビートを押し出す。
そして、インタープレイは続く。
ああ、なんて美しいのだろう。
最後はベースに譲る形でピアノのソロを終える。
後テーマ
たっぷりとアウフタクトで枯葉のメロディーに戻る。
緊張からの開放。僅かな安堵のあとに、アレンジたっぷりのテーマ。
アウトロ
引っ張りすぎない、けれども十分に余韻に浸れるエンディング

ジャズは同じ曲を別の演奏者がどのように演奏するかを聴き比べることが楽しい。この連載のポイントも聴き比べだ。

次に紹介するのはキャノンボール・アダレイのアルトサックスをフロントにしたクインテット
この時点でジャズ難しいって感じている場合は、全部を聞かなくていよい。
イントロから前テーマ(-2:02)まで聞いてほしい。

ビル・エヴァンスは照明の灯火が揺らめくバーの演奏だとしたら、こちらはミッドナイトの漆黒、都会の闇だ。

このようにJazzはプレーヤによって曲の顔つきが大きく変わる。(同じ曲には聞こえない!という人も多い)
気に入った曲が入っているアルバムを探すのも良い。
あるいはミュージシャンを軸として広げていくのもよい。
どちらもAmazon Musicなら簡単だ。
この文章をきっかけにJazzに興味を持つ人が増えれば嬉しいことはない。

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