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あなたの階級と絶望

つい先日、
ジブリ作品の「君たちはどう生きるか」が
アカデミー賞を受賞しましたね。
実に素晴らしいことです。
(私はまだ見てないので、早く見たい)

そこで、
知人にネタバレなしの感想を聞いたところ
人によって評価がバラバラなのです。

「何が言いたいのかよく分からなかった」
「つまらなかった」

はたまた、いい意見もチラホラ。
おそらく鑑賞する人によって、
評価が分かれる作品なのでしょう。

芸術は鑑賞した人によって、
全く違った評価があるものです。

例えば、
有名なミケランジェロのダビデ像↓

オモロいのでコレにした

ダビデ像は彫刻芸術として
世界的に名高い作品です。

手に浮かぶ血管は
解剖学的に、かなり正確に掘られています。
また、
眉間に刻まれたシワや
力強い目は多くの有識者を唸らせたそうです。

しかし、
そんなことはどうでもいい
知識のない人々が思うことは
大体これだとおもいます。
ちんちんだ.........」
(気持ちは分からんことはない)

さて、
前述した映画や彫刻
はたまた音楽など
芸術とは数多くあると思います。

しかし、
何故それらへの感動に
バラツキが発生しやすいのか??

この理由には、
とある残酷な現実が背景にあります。

今回は、
フランス哲学者ピエール・ブルデューの著書
「ディスタンクシオン」をベースに
考察してみます。

芸術による感動の正体

誰しもに、
趣味というものが少なからず
あると思います。

趣味とは自分で選んだものというのが前提
かと思いきや

ピエール曰く、
「それは思い込みですよ(プスッ)
ハビトュスのせいですから(笑)」

は?💢 ハビトュスってなんぞや。

彼は、
「ハビトュスとは、
 成長過程の家庭や学校で培われた経験による
 身体に染みついた、
 個人ごとの、好みの傾向や習性である。」

と述べています。

例えば、
子供時代に美術館に連れて行かれ
彫刻芸術を数多く見た子供は
「彫刻をみて評価し、感動できる」
というハビトュスを獲得した。
って感じです。

冒頭で
親指立ててたダビデ像で言えば、

芸術的要素に感動するか
ちんちんばっかり見てしまうかは、
ハビトュスによって左右されてしまうのです。
(芸術の評価が人によってバラつく理由がコレ)

また、
貴方がダビデ像に感動して
彫刻が趣味になったとしても、
それは
貴方の感性で趣味になったのではありません。

貴方のハビトュスが感動させ
彫刻を趣味にさせたのです。

週一度の楽しみにしている
釣りや飲み会なども同じです。

貴方の成長過程で得たハビトュスが
多いに影響を及ぼしている
ことになります。

そして、
このハビトュスは
社会的階級に大きく関わっていきます。


ハビトュスと階級を
見える化したピエール

ピエールは、
趣味とは成長の過程で培った経験による
個人の傾向や好み

いわゆるハビトュスによる影響が
大きいと述べました。

その上で、
個人の趣味と社会での階級/職業を調査し、
図にしたみたいです。

図の画像をそのまま持ってくると
権利がこわいので、
本書を元に作成しました。

注意なのですが
正確性を求めた図ではなく、
相関関係を何となく分かってもらう
ための図になります。

頑張って作っただ

皆さんの職業は
どこに当てはまるでしょうか??

この図から分かるとおり
階級や職業で趣味が違います。
つまり、
それぞれで次世代メンバーが誕生するのです。

その次世代メンバー達は
親や家庭からのハビトュスを受け取って
同じようなグループに属す。

という流れですね。

分かりやすく書いてみた⭐️

上記の図は捕捉ですが、
普通労働者の円を始めとして、
外側になるほど
豊かな人たちということになります。
(いわゆるすごい人・成功者)

要は、
豊かさの元である資本とは、
単純な経済資本(お金)の多さのみでなく、
文化資本も大きく関わっています。

これについては、
次の章で詳しくお話しします。

さて、
日本の多くの方々が従事している
飲食店・販売・建築・美容系・会社員などは
普通労働者に当たりますね。

個人で店を構えたり
小規模で経営を行っている方々は
小商人に当たります。

実は、
この図の調査自体は
1960年ごろにフランスで行われたものなので、
多少言葉に違和感があるかもしれません。

ですが、
かなり現代と似た趣味と職業で、
ほとんど当てはまるはずです。

相関関係自体は変わっていないようですね。


何故、お金が大事なのか?

本書では、
資本を
社会において価値を持っていて
元手にすれば増やす事ができるもの

と紹介しています。

そして資本には2種類あります。

1つ目に、
経済資本です。
分かりやすく言えば、金銭や株ですね。
投資すれば増やせますし、モノを購入できます。

2つ目に
文化資本があります。
読書週間という文化資本があれば、
知識を増やせますし、
知識があれば尊敬が集まります。

二つの違う点は
経済資本は人と人で譲与できます。
しかし、
文化資本は個人の努力が発端です。

そして、
文化資本は2つの要素で
成り立っています。

相続文化資本と学歴資本

1つ目は相続文化資本です。
これは家庭で培われるものになります。

例えば、
子供のころから
美術館へ彫刻を見に行っていれば、
ダビデ像の芸術的要素に感動できる
という素養(相続文化資本)
を獲得できますね。

一方で、
彫刻芸術を
いっさい見たことのない人達にとって、
ダビデ像とは
ちんちんがついた石像でしかない
かもしれません。
彼らは(彫刻においての)
相続文化資本を持っていないからです。

2つ目に、学歴資本があります。
これは、
個人の勉強(学校含めすべて)によるものです。

私は、
大っ嫌いな勉強をして
学力を高め、
学歴資本を獲得できたために
国家公務員試験をクリアできたのです。

しかし、
相続文化資本が少ない人は
学歴資本を獲得するのが難しい

傾向にあります。

理由は簡単で、
子供へ与えうる相続文化資本が多いのは
圧倒的に上流階級(高所得層)だからです。

また、
元々持っている知識などが多いのは
上流階級です。

そして、上流階級は金銭的余裕があるため
子供に学費などの労力(これも相続文化資本)
を注げます。

つまり、

かねかねかねかねかねかねかねかねかね

こうなりますね。

我々は資本主義社会で生きています。

金やがモノを言う世の中で、
この現実に異を唱えても
どうしようもないのです。

しかし、
金が全てではないのは確かな事実。

スティーブ・ジョブズが
身体(人生)を張って証明してくれました。


結局、生まれや育ち・金
次第じゃんか!

案ずること勿れです。

前述のスティーブ・ジョブズを筆頭に、
人生においての幸せに、
階級や職業、はたまた裕福さなどは関係ない
と偉大な先人達が証明しています。


ここでとある人物を紹介します。
ニルヴァーナというバンドの
カート・コバーンです。

彼は幼い頃に、親の離婚を経験しました。
その後、
カートは内向的な性格になり
友達と遊ぶことはせず
ロックを聴いたり、
小説を読み漁っていました。

彼は青年期になると
ニルヴァーナというバンドを結成し
「Smells Like Teen Spirit」
という曲で大ヒットしました。
カートは、
世界を熱狂させるアーティストになったのです。


しかし、
彼はヘロイン中毒や双極性障害に
苦しみ、
1994年にショットガンで自殺します。

彼は、「Smells Like Teen Spirit」が
「自分のメッセージや芸術的ビジョンが
 世間に誤って解釈された」

と嘆き、恨んでいたそうです。

カートの苦しみは上記のみではないでしょうし、
他人の心を解釈しようとするのは
間違っています。

しかし、
世界を熱狂させる曲を発表し
一躍大スターとなった彼でしたが、
自身の心の中で葛藤し苦しんでいたことは
紛れもない事実でした。

つまり、
成功者(裕福)であることと、幸福であることに
因果関係はないのです。

人生において
成功するための努力ではなく、
幸福を得るための努力に
フォーカスを変えましょう。


さて、
この本書は
人々に現実を叩きつけました。
それは絶望を含んでいたかもしれません。

自分が選んだ趣味や仕事は、
社会的階級に大きく影響されていました。

しかし、
重要なのは自分が幸福であるかどうか。
不幸な成功者に魅力はないでしょう。


絶望をただ噛み締めるだけでなく
幸福を得る未来を目指すべきです。

現実の行先は、
ハビトュスではなく
貴方の行動のみで決まります。

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