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メギドラルの悲劇の騎士と「二人の貴公子」についての考察

0.あいさつ

どうもこんばんは!
あるいは初めまして!
72これラジオアンバサダーの小豆です。

普段は、YouTube上で「メギド72」に関する
僕なりの考察を紹介しています。

1.結論

メギドラルの悲劇の騎士」は、

シェイクスピアとフレッチャーの合作
二人の貴公子/The Two Noble Kinsmen

下敷きに物語が展開していると考えています。

しかし、突然そう言われても、
シェイクスピアや「二人の貴公子」が分からない為に、
反応に困ると思います。

そこで、まずは前提となる話として、

・シェイクスピアの活躍した時代の背景
イベント内に暗示されるペストの存在
2人の貴公子」のあらすじと類似点

3つをお話しした上で、
僕個人の考察をお話ししていきたいと思います。

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それではやっていきます!

2.シェイクスピアとペスト

シェイクスピアイギリスを代表する劇作家で、

・「オセロ」 
・「ハムレット
・「マクベス  
・「リア王
・「ロミオとジュリエット
・「真夏の夜の夢

など、いくつもの名作を作り出した人物です。

作品を触れた事はなくても、
作品の名前は聞いた事があるのではないでしょうか?

そんな彼の活躍した、
16世紀のイギリスペストの流行と重なります。

ペストはペスト菌による感染症です。
肌が黒くなり対処が遅れると死んでしまうので、
黒死病とも呼ばれ、非常に恐れらていました

彼の誕生より少し遡りますが、
14世紀のヨーロッパでの流行では、
人口の3分の1以上が失われたとすら言われる、
非常に恐ろしい感染症です。

この14世紀の出来事は、
身近なもの変化させました

高い身分を獲得し、功績を挙げたとしても、
死の前では何の役にも立たない
という価値観が人々の中に芽生えたのです。

これが、
死の舞踏というテーマの誕生に繋がりました。

こうした変化は更に、

・メメント・モリ…死ぬ事を忘れてはならない。
・ヴァニタス…人生の意味は無意味。
・カルペ・ディエム…今日を精一杯生きろ。

などのバロックを代表する思想にも影響を与えました。

話を彼の活躍した時代へ戻しましょう。
時事ネタはいつの時代でも話題性があります。

ですから、
他の劇作家達はペストコメディーに描いたり、
具体的な病死を作中で描きました。

しかし、
シェイクスピアは※plagueについて、
相手を呪う言葉として1度だけ登場させたり、
plague/疫病。特にペストを指す。

But yet thou art my flesh, my blood, my daughter;
Or rather a disease that's in my flesh,
Which I must needs call mine: thou art a boil,
A plague-sore, an embossed carbuncle,
ーしかしおまえはわしの肉、わしの血、
わしの娘だ、
いやむしろ、わしの肉に巣くった疫病神、
それもわしのもの。
わしの腐った血にできた     
腫れ物、疫病のできもの、 膿んだ吹き出物だ。 
(「リア王」第二幕第四場より引用)

死の舞踏に関する詩に共通して登場した、
いくつかの語句を引用するに留めています

(「ハムレット」第五幕第一場)
いわゆる、墓掘り人夫の場面。
長くなる為引用は省略致します。

これがシェイクスピアについての紹介と、
その時代背景の説明です。

マスティマ大仰な言い回しを好む事と、
リリム舞台劇を好んで見ていた事から、
彼の作品関連性があるかもしれない点、

彼の活躍した時代がペストの流行と重なる点、
彼がペストに関する表現をほとんどせず、
暗示に留めた点を把握してもらえれば幸いです。

3.隠されたペストと死の舞踏

メギドラルの悲劇の騎士」に、
ペストは直接は登場していません。

しかし、
複数の箇所でペスト死の舞踏が、
暗示されているように思います。

それらを、3点ほど紹介したいと思います。

1.リリムの存在

Rshリリムキャラクターストーリーでは、
体が黒くなり、やがて死ぬ病が登場しています。

キャラスト内でリリムに対してシエラが、
死神?」と質問する事もペストを思わせます。

2.「ハーメルンの笛吹き男」モチーフ

ペストネズミを介して広まりました。
そのためネズミを引き連れる笛吹き男は、
ペストによる死や、患者の隔離暗喩として、
扱われます。


ヨニゲマン一家のエピソードが挿入されたのは、
ペストを暗示する為ではないでしょうか?

3.ヴェルドレの紡ぎの舞、フラメンコ

紡ぎの舞は、ビルド・バロック時代に、
者の国の住民を受け入れる為に、
披露された踊りとして説明されています。

受け入れる踊りは前述した通り、
リリムとも関わりがある点も気になります。

さらにデザイナーだよりvol41には、
メギド体はメリーゴーランドをモチーフにした、
と書いてあります。

メリーゴーランド死と生の循環を表すモチーフです。
そして死の舞踏死の生の循環を表すモチーフです。

上記2点から紡ぎの舞は、
死の舞踏暗示しているのではないでしょうか?

2章で説明したように、
シェイクスピアペスト暗示に留めていました。
ですから「メギドラルの悲劇の騎士」もまた、
このように暗示に留めたのではないでしょうか?

4.「二人の貴公子」のあらすじと類似点

 4a.登場人物とあらすじ

登場人物

Theseus アテナイの王、テセウス
Hippolita ヒポリタ。テセウスの妻。

Emelia エミーリア王女。ヒポリタの妹。
女性間の友情を大切にしており、
男性を愛する事はない」と明言している。

Arcite アーサイト
パラモンと強い絆で結ばれた若者。
エミーリアに恋をする。

Palamon パラモン
アーサイトと強い絆で結ばれた若者。
エミーリアに恋をする。

あらすじ

(前略)
アーサイトとパラモンは、捕虜として、
牢屋に閉じ込められる。

二人は互いに騎士の誓いを建て、
決して失われることのない友情を確認し合う。

しかし、二人はエミーリア王女に一目惚れをし、
友情は反転し、互いに憎み合う

(中略)
アーサイトはアテナイから追放される。
道中旅の騎士を襲い、自分を偽って騎士として、
エミーリア王女に近づく。

一方、
パラモンは自身に恋する牢番の娘の手引きにより、
脱獄する。

(中略)
アーサイトパラモンは結婚をかけて決闘をするが、
テセウスに見つかり、二人とも処刑されかける。

ヒポリタやエミーリア王女の嘆願により、
結婚をかけて正式な決闘を行うことになる。

勝者はエミーリア王女と結婚し、
敗者はチームメンバー共々処刑されることになる。

(中略)
アーサイト軍神マルスに勝利を祈る
パラモン愛の女神ヴィーナスに愛を祈る
エミーリア純潔の女神ダイアナに
最も正当な権利のあるのものと結婚するか、
出来ないのなら処女のまま居させてほしい、と祈る。

(中略)
アーサイトは勝利するがエミーリアを得る為に
パラモンとの友情を失う事嘆く

(中略)
落馬してしまったアーサイトパラモンに、
「自分は不実だったが、友を裏切った事はない
と伝え、死んでしまう自分の代わりに、
エミーリアと結婚するように言って、絶命する。

テセウスはエミーリアを盗まれた宝石に例えて、
正式な持ち主に戻った、と説明し、幕が下りる。

 4b.類似点

類似点についてざっくりと説明すると、

アーサイト偽りの騎士であるマスティマ
パラモン
によって、脱獄したアマイモン
エミーリア王女
結婚を拒絶したヴェルドレ

基本は上記の通りに対応していると考えています。
ざっと類似点を4点ご紹介します。

まず1点目は物語の冒頭です。

捕虜として捕らえられたアーサイトとパラモン

捕虜として捕らえられたヴェルドレ

このように時系列上で、
最初に物語を動かすきっかけになるのが、
両方とも捕虜なのです。

2点目は騎士に関しての類似です。

アーサイトは騎士を倒して偽りの騎士となる。

マスティマはアマイモンを倒して偽りの騎士となる。

どちらとも、
戦闘を通じ騎士という立場を獲得しています。

ただし、アーサイト立場を偽るのに対して、
マスティマ心を偽る点で差異が見られます。

3点目は脱獄類似です。

パラモンは牢番の女の手引きによって、
脱獄する

アマイモンはまつろわぬものの手引きによって、
秘密の古戦場を脱する

どちらとも危機的状況を打破する為に、
他者の力添えがみられます。

そして、
4点目は結婚と決闘とそれに関する結末です。

アーサイトパラモンエミーリア王女との、
結婚を賭けて決闘をする。
負けた方はチームメンバー共々処刑となる。

オルバイラートッカルオヴェルドレを、
理由決闘をしようとするが止められる。
ヴェルドレを傷つけた関係者を処刑する。

とりあえずの共通点をざっくりと説明してみました。
他にもいくつもの類似が見つけられるはずです。

物語の構造に関する類似とは別ですが、
マスティマのキャラストに登場する女性、
メアリ」は、
シェイクスピアの母、メアリ・アーデンから、
名前をとったと考えると筋が通るはずです。

5.考察

これまでの推理が仮に事実だと仮定すると、

自身が女性であった為に、
望まない結婚受け入れたエミーリア王女

過去の後悔から女性の手による
魂の死受け入れたヴェルドレ

という対比構造を見つける事ができます。

これによって、

望まない結婚をする

腕と足を折られ、顔を焼かれる

という風に言い換えているのです。

これはつまり、

望まない結婚魂の死

と言うことを暗に描いている事になるはずです。


さらに、
ヴェルドレ攻撃したのが女性という点も、

エミーリアは女性故に不自由になった。

ヴェルドレは女性の手で不自由になった。

ということを言い換えた表現なはずです。

この事を裏付けるような情報があります。

というのも「二人の貴公子」は、
男社会への痛烈な皮肉がこもった作品なのです。

ホモソーシャルおちょくったコメディ要素が、
随所に散りばめられています。

例えば作品内で執り行われる、
異性愛による結婚式は三つとも失敗しています。

テセウスとヒポリタ
式の途中で邪魔が入り、中止される。

アーサイトとエミーリア
アーサイトは落馬して死んでしまう

牢番の娘とその婚約者
パラモンを失った牢番の娘は気が触れてしまう。
医者の勧めによって、
婚約者はパラモンの格好をして床に入る

こうした点を拾い上げていくと、
更にわかる事があります。

男性社会に振り回され、
やりたい事をして生きていく事が許されない
それはだから。

こうしたヴェルドレ魂の死は、
現実世界に溢れた呪いでもあります。

ソロモン王の指輪と純粋な友情が、
遠い情景へと導き彼女は自由になるのです。

自由になるのはヴェルドレだけではありません
このイベントはイベントを読んだ全ての人が、
自由になる事を願って書かれたはずだからです。

もう一つ付け加えたい点があります。
ソロモンがヴェルドレを召喚したがる理由です。

これは、

召喚でさえヴェルドレを縛る事は出来ない

女性を苦しめる理不尽な男性社会からの解放

という事を、
書くための前フリではないでしょうか?

今回の考察は以上です。
少しでも楽しんでもらえたなら幸いです。
また別の場所でお会いしましょう。

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