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[64]古都散歩 三首

砂利のを重ねるごとに清々せいせい
空開きゆく建礼門

ハレとケと古今ここんの糸が織る錦
町家小路まちやこうじを通しゆく

鴨川の流れは絶えず水清し
碧眼へきがん亭主ていしゅ茶碗にクラゲ


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毎朝散歩をする。
普段は一人だが今日は特別だ。
一緒に歩く人がいる。

秋とはいえ、
早朝の京都はシンと冷えて身が引きしまる。
新鮮な朝の陽射しが心地よい。

京都御所には早朝にもかかわらず、
散歩をする人、ベンチでくつろぐ人が散見される。
この清浄な空気を味わっているようだ。
あるいは粛々と祈りを捧げているようにも見える。

堂々たる樹々に囲まれた
清らかで広々とした砂利道の先には、
建礼門が静かに待っている。
まるでこの門が空を高く開いていくように、
その背後の空が陽が昇るとともに益々高くなっていく。

ささやくように語らう言葉が
静かに重なる砂利の音とともに空高く昇り、
心まで澄んでいくようだ。


市中の寺社をめぐりながら、
まだ目覚め切らない町家小路を散策する。
道を探り小さな発見を集めながら、
歴史が生活の一部になっている様子に触れ、
古都の懐の深さに感銘を受ける。

徐々に町が目を覚ます。
犬を数頭連れたご婦人が、
ご近所の方と思われる方と静かに談笑している。
その側を、微笑みながらそっと通り過ぎる。

軒先にお地蔵様の祀られた昔ながらの町家、
真新しいモダンな町家風の家。
非日常を味わいに来た旅人とここで生活する人々。
古の都人や歌人も、この小路を歩いたかも知れない。
私もその時の流れの中で、
この小路を歩き横糸を通し
歴史を織っているのかもしれない。


そろそろ一息入れようと、
坪庭があるというカフェを探していると、
門から奥へと続く、
水打ちがされた石畳の細い路地に惹きつけられた。
その奥には更に門があり、暖簾が揺らめいている。
二人とも引き込まれるように入っていった。

町家を会場に和菓子の展示会が開かれていた。
これも何かのご縁ということで、
お庭を拝見し、
和菓子とお抹茶をいただくことにした。
私たちと同席したのは、
着物を着た品のあるご婦人方。
いかにも京都らしい場面に出会えた偶然に、
二人で感謝する。

すっかり京都の風情に浸っていると、
お茶を出してくれたのは、
着物を着た所作の美しい金髪碧眼の女性だった。
また、
私の茶碗は、
つややかな黒地に紅葉を掃く、
烏帽子に水干葛袴の男性という
伝統的な絵柄だったが、
お隣の彼女の茶碗は、
なんともかわいらしいパステルピンク色の地に、
クラゲとビキニ姿のダイバーの柄だった。

茶碗について説明する
主人と思われる和服姿の男性は、
風格の中にも茶目っ気が垣間見られる方だった。
伝統は伝承と革新だと聞いたことがあるが、
実際にその姿を目の前にして、
京都の底力としなやかさを
しみじみと感じたことだった。


今日は早朝から歩き続けた。
一緒に歩いてくれる人がいたからこそ、
歩き続けられたし、
思わぬ発見や経験ができた。

様々な宝物を抱く京都に、
一緒に見付けて味わってくれる仲間に、
一日つきあってくれた自分に、
心から感謝する。

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