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チーム分析のフレームワークによるフィンク体制の振り返り(ボール非保持編)

はじめに

今更感があるのは承知の上だが、この記事ではレナート・バルディ氏の考案した分析フレームワークに基づいて2019年シーズンのヴィッセル神戸の戦術的傾向について振り返る。
https://note.com/footballista_jp/n/n06a1bcfd951a
なおフィンク体制の神戸は時期によってかなりスタイルや特性が異なるため、できるだけ時系列に沿って変化を振り返ろうと思うがどうしても3バック期の分析が中心になってしまうのはご容赦いただきたい。

就任までの経緯

ファンマリージョが志半ばでいぶきの森を去り、監督に返り咲いたかつての英雄吉田孝行はチームに安定をもたらすことができず連敗を重ねてしまう。
サポーターの不満が最大限に募る中神戸にやってきたのがトルステン・フィンクだった。
https://www.footballista.jp/news/69114
所謂“バルサ化”を進める中でドイツ人のフィンクを招聘したことはこれまでの動きと矛盾するという声も聞かれたが、結果的に彼を招聘できたことが座礁寸前だった神戸の運命を変えていく。

プレッシング

基本形

バルディ氏の基準でいうなら神戸のプレッシングは守備的と攻撃的の中間と言えるだろう。
ロングボールを蹴らせて回収というよりはWBの所で奪い切るのが狙いで、そこまで猛烈なプレスをかけることはなかった。
体制初期ではGKがボール保持に関与するチーム(大分,マリノスなど)に対して超攻撃的プレッシングを行うこともあったが(後述)、気温が上がるにつれハイプレスを常時行うことが難しい外国人選手が復帰したため3バックが導入されてからはそういった選択をすることは少なく、ミドルゾーンからの守備が基本になった。
プレッシング時の基本陣形は5-3-2で、試合を追うごとに人につく傾向が強まっていった。
3バック導入当初は2トップでサイドに追い込みIHを敵SBに当てる守備を行っており、サイドに出ていったIHの裏を2トップの選手やHVが埋めるやり方でプレスバックに難があるイニエスタや機動力に欠けるサンペールをカバーしていたが(下図)、

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1トップ2シャドーシステムにシフトしてからは片方のシャドーやイニエスタを1列上げて敵CBを監視させるやり方が主流になった。(下図)

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この場合シャドーがCBに出てSBが空いたところをWBが迎撃する必要があり、主に右サイドの西が所謂“ジャンプ”する役割を担っていた。
このやり方に変更してからはより人につく意識が強まり、具体的には山口は敵CHが1列降りてもご丁寧に迎撃することが増えた。(磐田戦の先制点は彼のボール奪取から生まれた)
天皇杯準決勝の清水戦ではより積極的なアクションを見せており、彼が左CBの二見に食いつくところからプレッシングをスタートしていた。(下図)

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超攻撃的プレッシング

前述した通り体制初期によく見られたのがこの形で、就任2試合目の第16節大分戦や第20節マリノス戦でGKまでチェックに行くようなプレッシングを行っていた。
このプレッシングを行う基準としてはGKのボール出し関与度が関係しており、大分やマリノスのような自陣でのポジショナルな前進が得意なチームには前から嵌めていくものの風間政権期の名古屋や川崎などボールを持つことを狙いにしているにしてもGKがそこまで有効に活用されないチーム相手にはハイプレスをかけることはほぼなかった。
大分戦ではお馴染みのミシャ式4-1-5変形を見せる相手に対し2トップ+2SHで同数プレスを敢行し、空いたアンカーをCHと2トップが適宜監視。
2トップが所謂1人で2人見る守備を行うことでGK高木にもプレッシャーをかけ(特にビジャのシメオネ仕込の守備は絶品だった)、ビルドアップを引っ掛けて早い段階で2点を奪うことに成功した。(下図)

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マリノス戦では所謂“マルコスシステム”への対応のため中盤を噛み合わせる選択をし、山口をアンカーに配置。(下図)

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イニエスタは1列上がってチアゴを監視する動きとそのまま喜田を見る動きを使い分け、1列上がる場合は喜田へのコースを切りながらプレスを行い山口が連動して喜田を捕まえるといった具合に連動性は高かったものの肉体的負担も大きく、前半30分程で明らかに強度が落ちてしまっていた。

組織的守備

体制初期は4-4ブロックを敷き時折2トップの選手(ウェリントンなど)もMFラインに加わるやり方が主流だったが、失点が減らなかったことや夏に加入した選手に5バックに適した選手が多かったこともありディフェンスラインを5枚で構成し5レーンを気合で埋める人海戦術にシフト。シーズン終了まで基本線は変わらなかった。
一時的に失点は減少したものの、第28節の広島戦でHVを引き出されたスペースへのチャンネルランから好機を量産され(下図)、

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トップの選手を1人削って最も堅固な形と言われる5-4-1にシフト。こうすることで速攻を仕掛ける場面こそ減ったが5バックが崩される形がある程度減少し守備が安定したことが終盤の快進撃に繋がった。
5-3-2だろうと5-4-1だろうとイニエスタの守備負担を軽減する工夫は凝らされており、5-3-2の場合はなるべく中盤3枚のラインを中央から動かさず、スライドした場合は2トップの選手のプレスバックやHVの迎撃でカバー。(下図)

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5-4-1の場合もまずSH(シャドー)を中央に絞らせて(ポドルスキも最低限ブロックを形成する動きは見せていた)cH2枚の脇を固め、そこからボールにアタックする守備を見せていた。(下図)

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おことわり

執筆時間の関係上ボール保持編・トランジション編は別の記事にまとめることとする。