見出し画像

「雲海の舟」坂口寛敏+柳井嗣雄 二人展 宇フォーラム美術館

国立にある宇フォーラムで開催中の「雲海の舟」坂口寛敏+柳井嗣雄二人展に行ってきた。お二人とは1989年から参加した「白州・夏・フェスティバル」の美術部門でご一緒した。坂口さんは、農場の車検切れのダットラ(日産だったかも)を小川を越えた森の中に引き入れ、土と苔を塗りたくられたトラックの上方には沢から引いたホースが螺旋状に吊利下げられ、ぽたりぽたりと水が滴るように穴が開けられている。苔むして朽ち果てるまで設置し続けると話していた。柳井さんのものは一見石ころのような、あるいは大きい鬼灯のようなファイバーワークの立体物がいくつも林の中の地面から生えでたように並ぶ作品。風雨にさらされながら設置し続けやがて土に還っていくというもの。二人とも共通することは、どちらも身体性と密接に関わるドローイングの延長としての作品が、あるときは平面に、ある時は立体に、フィールドワークやパフォーマンス等々に展開されていく幅の広い作家だということ。

柳井さんは、昨年秋に「野良の芸術」で2mほどの大層太い切り株を並べて燃える壁を製作していた。近年「壁」が気になっているという。柳井さんの壁は分断される構造を打ち破りたいということらしい。壁を作るけれど、その壁は壊れるあるいは打ち破られるものとしてあるようだ。今回製作された燃える壁の延長として赤い染料で染めた「壁」は、舞踏のパフォーマンスが加わることで完結するようだ。(余談だが、白州で制作された榎倉康二先生の作品は壁だった。特に2作目の壁は樹木に沿わせるように立ち上がる不思議な壁だった。)
坂口さんの、特に有明海の干潟での映像は、潟スキーに乗った坂口さんが移動してく軌跡をドローンが撮影していく。平面も「炙って焦がしてるんだよ」とぼそっと言っていたグリット状の焦げ跡のある絵画も、画面に何らかの図像を描くというよりも、その形や線が生まれる経過を焦げやそのとき立ち上る煙や湯気など周囲のもの動きの全体をも含めた痕跡として定着しているようだ。
そのとき身体は、干潟を這うようにあるいは支持体とその上に広がる空間の中を泳ぐように動いてるのではないか?

今回の展覧会タイトルは「雲海の舟」。展示の打ち合わせの折、柳井さんが舟と言う言葉を出し坂口さんは雲海という言葉でつないだと言う。「壁」は垂直に起立し「雲海」は水平に広がる垂直と水平が交わる場。少しゆっくりとこの場所に佇んでいれば、倍音が聞こえてくる、そんな展覧会だった。
・● 3月7日(木)~24日(日) 「雲海の舟」坂口寛敏+柳井嗣雄 二人展
 
13:00~18: 00 月火水曜日休館
・イベント
3/9(土) 17:00~ 対談: 坂口寛敏+柳井嗣夫
3/16(土) 18:00~ 徳田ガン(舞踏)
3/23(土) 18:00~小林嵯峨(舞踏)
https://u-forum-museum.com/custom19.html

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?