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七草日記

絵やマンガなどの創作物、WEB記事やTwitterに書ききれなかったこと。あとは映画やいろいろな作品について、ネタバレを含むのでTwitterなどに書けないことなどを書いていきた… もっと読む
絵やイラスト、身の回りのプライベートなこと、それからむやみにネットで拡散したくない作品への苦言など… もっと詳しく
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記事一覧

人生で初めて救急車で運ばれてしまった話

いきなりすまん。本当は西日本旅行や、映画のことを書こうと思っていたのだが、今月下旬の深夜に急激な体調の変化があり救急車を呼ばざるを得なくなってしまったのでそのことを書こうと思う。今は回復しています。

映画公開後の疑問『オッペンハイマーをプロメテウスに例えて本当にいいのか?』

映画『オッペンハイマー』が公開されました。試写の時はさすがに内容に踏み込んだことを書くのは控えたのですが、無事公開もされたことですし、あらためて内容について書きたいと思います。 Prometheus Stole Fire from the Gods and Gave It to Man. For This, He Was Chained to a Rock and Tortured for Eternity.” 映画『オッペンハイマー』はこの引用から始まります。 「プロメ

試写会で見た『オッペンハイマー』に日本の観客として感じたこと

映画『オッペンハイマー』の試写会に行ってきました。日本中の映画関係者が来ているのではないかと思うほどの大劇場満員の試写で、受付だけで大行列でした。 まずはこの映画の配給に手を挙げてくれたビターズ・エンド社にお礼を言いたい。アメリカで映画賞総なめ状態にも関わらずこの映画の公開はなかなか決まらなかった。『正欲』『熱のあとに』など優れた日本映画の配給を支える一方、こうした火中の栗を拾うような作品も配給してくれるのは映画ファンとして足を向けて寝られない。 『オッペンハイマー』の映画技

『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』伊藤健太郎の完全復活と、映画をめぐる論争について思うこと

伊藤健太郎の日本アカデミー賞優秀助演男優賞の受賞は嬉しい驚きだった。もともと僕は『冬薔薇』『静かなるドン』と伊藤健太郎の演技の良さについて書いてきて、去年の文春シネマのベスト10にも『静かなるドン』を入れた。映画を見ればわかるがあれは明らかにDVD媒体向けに作ったコンテンツを、伊藤健太郎の演技があまりにいいので劇場公開展開した映画だと思う。静かなるドンというのは漫画原作で、そんなに真面目にリアルな話ではない。ヤクザの跡継ぎ息子が昼間はサラリーマンという、昭和末期に連載がスター

今年の川崎モアーズ有名人慈善絵馬展の記録

毎年やってるので、今年も記録しよう 今年の目玉、羽生善治さん

大晦日なので、今年の初詣で絵馬にお願いしたことを書こう

中居くんは、どうやら大丈夫らしい。普通にテレビに出て、ロケにも行っている。 すごく正直なことを言うと、去年の年末から今年の年初にかけて、僕は中居くんの健康状態が気になって仕方がなかった。不思議なことだ。別に僕はそこまで中居くんのファンではなかったはずだから。彼の司会番組もそんなに熱心に見ているわけではなかった。でもなんというか、去年の年末の、彼が復帰を強行しようとして、週刊誌に何かしらの体調不良を報道され再び入院する、しかも病名は明かされないという展開の中で、これは中居くんを

見れば面白い『屋根裏のラジャー』、予告編はどこまでネタバレすべきなのか

スタジオポノックの新作アニメ映画『屋根裏のラジャー』を見た。「あんまり面白くなさそうだな…」という鑑賞前の印象に比べて、はるかに面白かった。 映画ライター、ヒナタカさんの記事に西村プロデューサーの貴重なインタビューがある。読んでみてほしい。 さて『屋根裏のラジャー』、面白いとは書いたが、ヒットしていない。それも少々の興行不振ではない。2016年の長編アニメ『メアリと魔女の花』の初動が32万4000人、4億2800万円。今回の『ラジャー』が4万9642人、6816万9730

東京芸術劇場で見た『DOJO wip』内の短編演劇、サヘル•ローズ氏演出の無言劇『  』にこめられたもの

東京芸術劇場で、俳優たちが短編演劇をオムニバスのように連ねた企画『DOJO wip』を見てきました。 東京芸術劇場の芸術監督・野田秀樹が立ち上げた東京演劇道場。藤井千帆さん、藤井咲有里さんなど、以前から各所で「この人はすごい」と思ってきた役者さんたちが次々と野田秀樹道場に集まるのを見ていると、やはり才能はいつか発見されるものなのだなと思いました。 今回は、俳優自身が演出を手がけるところが目玉です。フロアトポロジーのゲストで知った藤井千帆さんは『淋しいおさかな』の演出や音楽

『舞台俳優殺し音響』の劇場で初舞台を飾った清原果耶の見事な実力の話

11月28日、東京建物ブリリアホールで舞台『ジャンヌ・ダルク』の初日を見た。朝ドラ『おかえりモネ』や『透明なゆりかご』などで知られる清原果耶の初舞台。もともと実力には定評があり(というか、10代から絶賛以外の評価をほぼ聞かないほどの才能である)心配はしていなかったが、初舞台の初日というプレッシャーを感じさせない堂々たる主演だった。 ただ観劇前に、不安要素として感じていたことがひとつあった。上演する劇場が東京建物ブリリアホールだったからである。池袋の超一等地に建設された新劇場に

『キリエのうた』に見る、主演でもヒロインでもない広瀬すずの可能性

『キリエのうた』の主演はアイナ•ジ•エンドである。新人シンガーに物語を与えるような音楽映画のスタイルというのは映画界に昔からあって、この作品もそのひとつだと思う。 広瀬すずが演じるのは一条逸子(広澤真緒里)役で、さまざまな色のウィッグを変装するように付け替えながら東京の夜を彷徨う若い女性。観客の目を引きつける役だが、主演でもヒロインでもない。見れば分かるけど、アイナ•ジ•エンドのための映画である。たぶん、広瀬すずはそういう「他人のための映画」で演じるのが嫌いではないと思う。パ

SNSで映画を批判することの難しさと、映画『月』に対する批判、そしてそれとは別に映画『TATAMI』のこと

アカウントを見失ってしまって引用できないけど、先週くらいにTwitterで映画宣伝アカウントによる「映画を批判しないで、良い感想だけ書いて」というツイートが話題になっていた。映画を愛するならポジティブな感想だけ書いてください!みたいなやつである。 当然のことながら、このツイートには批判も多くあった。批評するな、と言ってるのも同然だからだ。批評が宣伝になってしまった、という以前の指摘をそのままなぞるような内容の、ある意味では無邪気で迂闊なツイートだったと思う。 しかしまあ、

vimeoで無料公開された広瀬すずの自主制作映画と、普通をめぐる演技

奥山由之監督による、広瀬すずと仲野太賀の短編映画がvimeoで公開された。 自主制作映画、と言っている通り、短いエンドロールにはスポンサー企業の名前はない。映像も脚本も優れたものなので、ある程度の制作費は投じられていると思うが、インディペンデントに作られた短編なのだろう。 映画的にカットやアングルに凝る撮影は抑えめで、演劇のエチュードのようにベンチに座る2人の会話を追う内容になっている。Youtubeのように広告もなく、誰でも無料で見られる。つまり作り手には一円も入らない

文春オンラインで記事を書きながら思った『宮崎駿の原点 母と子の物語』を書いた大泉実成氏は今どうしているのか?

文春オンラインで『君たちはどう生きるか』の記事を書きました。 自分なりに思うところを書いた記事ですので上の記事も読んでいただけたら幸いなのですが、このNOTEでは記事の中で引用した大泉実成氏の『宮﨑駿の原点:母と子の物語』について書きたいと思います。 この記事が映画の公開からやや遅めの公開となった理由のひとつには、大泉実成氏がこの映画について記事を書くはずだ、とそれを待っているようなところがありました。 『君たちはどう生きるか』を語るにあたり、『宮﨑駿の原点:母と子の物

デパート敬語でスピーチをするそごう・西武労組の「静かなストライキ」に対する街の人々の共感、その前を視覚障害者が白杖をつきながら通った時に起きたこと

8月31日、そごう・西武労組が1日限りのストライキをやるというので、池袋まで野次馬見学に行った。ストライキという以上これはもうパルコは火の海になり、機動隊と高島屋は武力衝突を繰り返し、三越は人民の海に沈むに違いないという血湧き肉躍る期待を胸に池袋駅を降りたが、実に駅周辺は静かなものであった。 駅の地下街の西武デパートにはストによる休業の張り紙がしてあった。このようなものである。 この地下街の休業張り紙のシャッターの前に、多くの人が集まり写真を撮っていた。マニアやブロガーと