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オタクよグッズで身を飾れ

オタクは常に矛盾を孕んでいる。
そんなことないだろと言う人は胸に手を当ててよく考えてみて欲しい。オタク人生で己の中の矛盾に苦しんだことが、本当に一度たりとも無いだろうか。幸せになって欲しいけど欲しくない、早くエンディングを見たいが終わって欲しくはない、こんな話を書きたいけど書きたくない、等々等々。大抵の人は経験があるだろう。オタクじゃねえよって人は、オタクとはそういう生き物なんだと思っていてください。

私が持ち合わせるオタクとしての矛盾の最たるものが、「推しのグッズが欲しいけど欲しくない件」である。
生まれてから此の方、物に対する拘りに苛まれて生きてきた。オタクになるよりずっと前からの悪癖である。それはもう小学校に上がる時点から、指定の鍵盤ハーモニカケースが、絵の具セットが、書道セットが、裁縫箱が、家庭科で購入させられる、ランチョンマットやらエプロンやら巾着袋のキットが、嫌で嫌で仕方なかった。他人と一緒が嫌とかいう芸術家的な理由ではない。単純に見た目が好みじゃないものは持ちたくないのである。ギリギリではあれそこは平成世代、指定とは言いつつ数種類の中から好きなものを選べる仕様ではあったけれど、たった数種類の中にそう易々と気に入るデザインが存在するだろうか、いや無い(反語)。
かくして親の金で出来た数々の学童用品を、内心ブーブー文句を言いながら使っていた。家庭科に関してはやる気ゼロであった。誰がこんなダサいエプロン使うかという気持ちで作った作品に丁寧さがある訳もなく、私の成績はペーパーテストと縫取りの実技試験にかかっていた。

ここで一旦オタクの話に戻ろう。実に世間一般のオタクのイメージというのは、いつもグッズと共にある。痛バにTシャツ、部屋一面のポスターとフィギュア。実際女性向け男性向けに関わらず、近頃の公式はグッズをかなり豊富に供給するようになった。その象徴はランダム系のグッズだろう。箱買いロット買い交換譲渡、「集められるだけ集めています」という狂気。大量の缶バッジやアクキーを如何にして飾るかというライフハックがバズり、アパレルブランドが痛バ用バッグを販売し、グッズ拉致問題が発生する。最近は身に纏えるグッズも増えてきて、刀剣乱舞なんかはもうトータルコーディネートが可能なんじゃないだろうか。
但しアメコミジャンルに於いては、部屋に増えていくのは缶バッチではなく筋肉である。スタチューやフィギュアには質量がある。部屋の空間が筋肉で埋まっていくのだ。この事態を憂いてか、最近はデフォルメ系フィギュアも増えてきた(多分そんな理由じゃない)。

オタクとグッズには、切っても切れない縁がある。そう、小学生と学童用品のように。

ここに矛盾がある。「推しのグッズが欲しいが欲しくない」のだ。正確に言えば、「推しのグッズが欲しいが、自分も持ち物には自分の好きなものしか欲しくない」のである。悲しいかな、「推しのグッズ」と「物として持ちたい物」は必ずしも一致しない。そして持ち物に対するガチガチな拘りと、また整理整頓の能力が低いという自負から、数々の推しグッズを見送る羽目になる。オタクとして推しのグッズは欲しいが、私の中の人間の部分がそれを部屋には置けないし飾れないし買えないと判断したらそこで終わりである。オタクとしての私もまた、フィギュアのディテールやキャラクターのデフォルメの仕方に拘り、ちょっとでも納得がいかなければ見送りを決定するタイプである。SFオタクで劇中の武器やプラモデルを収集する父も同じことを言っていた。遺伝って怖い。
だから私はクリアファイルに傾倒するのだ。ありがとうクリアファイル。大好きクリアファイル。実用性と推しを推す機能を兼ね備えた上に嵩張らない最高のグッズである。

だが転機はやってきた。2019年1月開幕、Fate/Grand order On The Stage、絶対魔獣戦線バビロニア。リアルの肉体を用いて推しを拝む日の到来である。
そう、リアルの肉体だ。ツイッターという2次元で2次元を推している分には、呟きと画像欄が推しで埋まってればそれでオッケーである。現実世界でふなっしーのTシャツを着ていても、ツイッター上でエルキドゥとキングゥ*の妄想を垂れ流し作品をあげていれば私はドゥとグゥを推す人だ。ふなっしー推しではない。(ふなっしーTシャツは持ってません。念のため。)
*FGOのキャラクター。私が推し推しに推している。

だが3次元で2次元を推す場合はそうもいかないのだ。マーベル映画にDCコミックのTシャツを着ていったら、炎上するか逆にガチのアメコミファンと見做されるかのどちらかである。即ち、3次元で推しを推している主張をするなら、推しのグッズが必要である。他には名前を叫んで回るかパネルに齧り付く以外に方法がない。社会的尊厳は失いたくない。
だが私には推しのグッズがない。頼りになるクリアファイルも今回は無力である。平成も終わりに向かう中、舞台チケットも電子化されているのだ。出番はない。
結局、舞台には手作りのイヤリングを付けていった。ハンドメイドなんて言うにもおこがましい、幼稚園児の工作レベルのアクセサリーである(実際当日に壊れた)。私が自分に身に纏うことを許せる推しグッズはそれしかなかったのだ。鉾型のパーツに推しの宝具*イメージを託し、馳せ参じた会場はゴールドアクセの女の子でいっぱいだった。ギルガメッシュ**強しである。
物販ではやはりクリアファイルを買った。クリアファイルは強い。ありがとうクリアファイル。
*Fate世界における必殺技。私の推しの場合は自身を鉾の付いた鎖に変幻させての攻撃。
**別名金ピカ王。顔も財力も能力もなんかもう色々と強い。

長々と書いてきたが、言いたいことは1つである。「『推しの』『日常的に使えて』『自分の趣味に合い』『オタクとしての拘りも満たしている』グッズ」なんてものはそう簡単に見つからないのだ。最近はそんなグッズを公式が出してくれたり、はたまた才能豊かなファンが生み出してくれたりするので嬉々として買っているが、アクセサリーとなると途端に少ない。舞台を経て経験したのだ。それとなく推しを推せて、かつおしゃれで、普段使いできるアクセサリーなんてそう簡単に…

ありました。

こちら、むつ様(Twitter:@62_mu2 )によるサークル『OM NOM』さんのFGOイメージアクセサリーである。今回購入させて頂いたのは、左がエルキドゥ、右がアビゲイルイメージのもの。そう、今回の本題である。本題までの前置きが長いのはオタクの性だ。全部私がオタクなのが悪い。私は悪くない。
でも、とにかく、
これだよこれ!
「『推しの』『日常的に使えて』『自分の趣味に合い』『オタクとしての拘りも満たしている』グッズ」はここにあったのだ。しかもひとつひとつに篭ったキャラ愛がすごい。日常的に使えるどころかオシャレすぎて普通に売ってても絶対買いなアクセサリーなのに、なおかつキャラクターの雰囲気や宝具、能力を盛り込んであるんだから買わない筈がなかった。下にBoothのリンクを貼っておくので見てください。本当にキャラ愛が凄い。個人的にはアルトリアイメージのピアスを自由に組み合わせ可能に制作していらっしゃるところに感銘を受けた。Fateの中でもアルトリアほど作品やマスターによって変化するサーヴァントは他に居ない。その可能性の広さをこう表現するのか……すごい…。

OM NOM様:

https://mu2.booth.pm/

今回は両方ともイヤリングを選択した。ピアス穴?あいつは死んだよ。
▶︎エルキドゥ

こちらはフープイヤリング。見た目に反して軽い素材で出来ていて、お陰で1日付けて歩いたが落ちることも耳が痛くなることもなかった。“2重のフープは鎖を、中央のチャームは鉾部分を”表しているそう。このたゆたゆとした形のフープ、個人的にはエルキドゥが造られてすぐの不定形な獣の姿も思い起こさせる。
FGOきっての推し鯖、唯一のLv100。常々「伊勢丹の包装紙で包んだC4爆弾」「切れた斧」と呼びつつプリヤコラボでは魔法少女バスター・エルキドゥとして大変活躍して頂いた。幕間2章待ってます。バレンタイン自爆ボイスありがとう。そんな推しのイメージアクセがこんなにかわいい幸運ってある!?
そもそも抽象的な形で大ぶりアクセが大好きなのでまずそこでもう嬉しい。存在感があって、ショートヘアに付けるにはぴったりだ。金具に至るまでゴールドなので、モノトーンコーデの主役として付けたい。その上で目元に金色を持ってきても絶対可愛い。今度付けるときはTHREEのウィスパーグロスフォーアイ18番を合わせようと思う。キャライメージで緑や紫のライン引くのもかわいいだろうな…。夢が広がりすぎる…。

▶︎アビゲイル・ウィリアムズ

こちらはネジバネ式。レース素材なので本当に軽い!付けていて落としていないか不安になるくらいだ。蝶やお花のレースを束にしてあるのがもう再臨後のあのお洋服そのままなのだが、そこにぽつぽつと縫い付けられたオレンジのビーズが光っているのがぐっとアビーちゃん感を天元突破させていると思う。我がカルデアのバスターゴリラ第2位、対処に困るバーサーカーを「面白そう♡」で倒してくれる頼れるフォーリナー・アビーちゃんだ。
深い青が繊細なレースの可愛らしさとボリューミーさを程よく抑えてくれている。だから一見シンプルなのに、よく見ると他には見ないアクセサリーでこちらも存在感がある。そんなところにもアビーちゃんを感じる。一見無垢なかわいらしさだが混沌・悪だ。本当に頼りになるう…(「もっと、もっと、楽しませてね…♡」)
どんな服で付けてもしっくり馴染む上、顔周りの紺色は締め色になって良い。あと絶対に人に褒められる。でへへぇ…良いだろ…かわいいだろコレ…。欲しがってもあげねえからな…。
ちょうど先日の記事で書いたオレンジリップを購入した日に届いたのだが、ビーズのオレンジと相まって相性バッチリだった。オールネイビーコーデの刺客として潜り込ませるもよし、夏になれば白Tジーンズの主役になってくれるだろう。フォロワーさんのご厚意でカラポのネイビーリップを入手予定なのでそちらとも是非合わせたいし、第3再臨のアビーちゃんをイメージして唇の血色をコンシーラーで消したメイクに合わせるのも絶対に有りだ。ああ〜楽しみ〜…。

今回は「在庫を食い尽くしてはならない」という理性が働いたため2点のみ購入させて頂いたが、前述した通り全てのアクセサリーがお洒落でキャラ愛に満ちているので是非是非見てみてほしい。
何よりこんな長い記事を書きたくなる程の作品を産んでくださったむつ様に感謝しかない。本当にありがとうございます…お陰で推しグッズ難民を抜け出せました…。これからも応援してます…。

オタクとグッズの旅は未だ続く。池袋で痛バと共に闊歩するオタクに若干の羨望を抱えつつ、耳に推しをぶら下げ、スマホから推しをぶら下げ(7章舞台物販のエルキドゥチャーム)、クリアファイルを抱えながら進んでいく。オタク、人それぞれ。グッズとの関係もそれぞれ。私とグッズの関係もまだまだ変わっていくのだろう。いつの日かランダムグッズ箱買いオタクやニコラス・ケイジ*になるのなら、それはそれで面白そうな未来である。

*アメコミが好きすぎてアメコミから芸名と息子の名前を取り、一大レアコミックコレクションを築き上げた上で財政難になった俳優。私が好きなニコラス・ケイジは『天使がくれた時間』と『ナショナル・トレジャー』。アメリカ独立宣言書を手に入れた暁にはズボンに隠して逃げようと思います。

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