死者偲び

最近、『この闇と光』という小説に出会った。
うわ〜この本すごく欲しい....!と思っていたわけじゃない。
表紙の絵が佳嶋さんだったのと、解説が私の女神である皆川博子先生だったのが興味を引いたのだ。
いつも通りたくさんの本の面白そうな本として私はそれを手にした。

それから2週間ぐらいだろうか。ゲーム、落書きとだらだら休日を堪能していだが、やがて飽きた。何故か休日は読書ばかりだからと無理やり読書をしないで過ごそうとしていた。
しかしながら本読まないでは休日を終わらすことなどできないと、やや、飢餓状態で何気なく取った本を読み始めたら止まらなくなった。

何をどうしてこんなにもこの本を求めてやまないのか。私は『この闇と光』の虜になっていた。
甘い甘い毒は私を恍惚とさせ、麻薬のよう。私の中にレイアが創られ、アブラクサスは神となる。
なんて贅沢で、美しい書物、絵画、音楽。なんて醜い、穢らわしい人間。
その中で描かれるレイアとおとうさまの世界のなんと美しいことか。

私は服部まゆみ先生に魅力されていた。彼女こそ私が求めていた本なのかと密林を探検し、3冊ほど購入。

♠ハムレット狂詩曲
♠時のかたち
♠シメール

それがもうびっくりするぐらい期待を裏切らないのだ。もう、彼女が描いた作品全部貪り読みたいという欲望が止まらない。どうして、彼女の本はもうあまりないのだろう。何故、彼女はもういないのだろう。そう思うと涙が出そうだった。何故、ろくに知らない癖に泣きそうなのか不思議だが、たぶん私が彼女を書籍として認識しているからかもしれない。

何はともあれ『この闇と光』は素敵な作品だ。いつまででも眺めていたい。
願わくばこの本の一部に、いや一つになってしまいたいと思う。
そんな作品を描いて下さった服部まゆみ先生に感謝せずにはいられない。

服部まゆみ先生に葡萄酒で乾杯を。きっと葡萄酒は甘い甘い毒の味。

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