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『もののけ祭りのようかい屋台』②〜暗黒労働おとぎ話〜



※ 暗黒労働おとぎ話とは:あまりに酷いため、ブラック企業の実態をありのままに書けず、物語にして伝える試み

【1つ目小僧の危険な焼きそば】

ある夏の終わりのお話です。

一つ目小僧がお寺の境内で、やきそば屋台を出しておりました。ここのお寺のお祭りで、毎年、やきそばを売っているのだそうです。

夕方、そろそろお祭りも始まるという時のことです。
 
はげしい 夕立が降りました。

むきだしの裸電球がやきそばの上に、ぶらんとぶらさがっておりましたが、雨つぶがポツンとあたったとたん、ガラスの電球が ぱぁん と大きな音をたてて割れ、あたりにガラスの破片が飛びちりました。

いっしゅん法師は一つ目小僧に、このことを話しましたが、一つ目小僧はめんどくさがって「もうお祭りが始まっちまう。いいから、売るんだ」と言って、飛びちったガラスを調べもせずに、もう一つの屋台のところに行ってしまいました。
 
そのいちぶしじゅうを見ていた近くのにんげんの警備員さんが、いっしゅん法師と一緒にガラスの破片がないか、一生けん命探してくれました。

すると、やきそばパックの近くでいくつかの破片が見つかりました。
 
その破片を割れた裸電球にパズルのようにあててみると、見事にかけらが合わさりました。
 
にんげんの警備員のおじさんのがんばりのおかげで、お祭りに来ていた子どもたちや大人たちが、やきそばを食べて口から血を流すことはありませんでしたとさ。


【肉人の腐れ牛串】

春の連休のことでした。
まだ春でしたが、夏のような暑さが続いておりました。

肉人という腐った肉のようかいが、串焼きの屋台を出しておりました。

連休のはじめの日は肉が冷凍で届けられたのでよかったのですが、つぎの日、そのつぎの日は、発泡スチロールに少量の氷を入れた箱を"れいぞうこ”にして、そこに売り物の肉を入れて、ふつうの車のトランクに保管しておりましたので、連休のさいごの日には、肉はすっかり腐れておりました。

肉人は自分たちも”腐れ肉のようかい”であるので「これは高級"熟成肉”だ」と、ひらきなおって、なかば腐れた肉の串を堂々と売っておりました。

でも、それでもあまり売れなかったし、買った人も変な味がしましたが、文句をつけるのもめんどうだと思い、何も言わずにおりましたので、その後も肉人は、全国あちこちの「食のもののけ祭り」で同じことをし続けたのでした。


【おおかみ男のぶるぶる ふわふわ かき氷】


ある日、いっしゅん法師がはたらいている屋台のすぐ横のテントから、この世のものとは思えない怒鳴り声がひびいてきました。

いっしゅん法師は、テントの幕のうらで何が行われているのか気になって、ぶるぶる ふるえておりました。

どうやら屋台の手伝いにきた青年が、おおかみ男が思っていたほど、てきぱき準備ができなかったようです。

「テメーっ!なにやってんだ!しばくぞーっ、おんどりゃあ!」
「ぶん殴ったるか、このやろぉ?ああ?!」

おおかみ男の怒鳴り声は、しつこく20分ほど続きましたが、青年がテントから逃げだすと、ぱったり声は止みました。

おおかみ男は、まだフーフー怒っていましたが、青年をおい出すと「ふわふわいちごかき氷」を売りはじめました。

見るからにガラの悪そうなおおかみ男でしたが、お客は「ふわふわいちご」という文字につられて、ほいほいと集まってきていました。

おおかみ男の怒鳴り声はとっても怖かったのですが、もののけのお祭りでは、まだまだこんなのは、じょの口なのでした。

続く

不運な人を助けるための活動をしています。フィールドワークで現地を訪ね、取材して記事にします。クオリティの高い記事を提供出来るように心がけています。