下降の一途をたどる製造現場の品質

下降の一途をたどる製造現場の品質


まずは、いまの日本企業の製造現場の現状について、一例を交えて書こうと思う。


1.設計現場

製品の設計においては、既存技術の流用をすることが多い。
それは当然で、すでに開発済みの技術を新たに一から作ることは非効率であるからだ。

しかし、設計者がその流用技術がどういったものかを詳しく知らずに流用してしまい、製品に問題を生じるケースが後を絶たない。

例えば、開発技術が比較的換気のいい条件で使用される製品に適用されたものであったが、狭い密閉構造の製品へ流用したり、雨や雪などにさらされる環境下で使用される製品へ流用したことによる動作不良、腐食、浸水などの問題の発生はよく耳にする。
あとは、ただ単にその技術の流用先へのミスマッチで求める性能がでず、再設計になったり、回路的に使い方を間違っている等がある。


そうなった理由は様々で、普段の業務が忙しくてその技術の開発者に詳しく話を聞けていない、開発者が遠方に職場移動したか退職している、上長のレビューが盲印で終わっているなどがある。

また、設計者が途中交代した場合で、前任者との引継ぎ不十分で見落としていたなどの問題も多い。


2.検査現場

製品の検査にはいくつかの項目があるが、その検査項目の目的を理解せずに作業を進めていては、製品に内在する問題のシグナルを見落としてしまう。
特に個産のもので、機械ではなく人が介在して品質を維持する割合が大きい製品ほどあてはまる。

例えば、ある信号の「周波数を測定する検査項目」があるとする。
これは、かなり周波数の精度が高い能力を要求される製品なので、これを検査するにはその能力に見合った精度を持つ測定器を準備して検査しなければならない。
まず測定器選びだが、この場合は高性能の周波数カウンターが妥当であり、これをオシロスコープやスペクトラムアナライザなどでを選んで検査しようとすると、正確な測定はできない。

また、その検査項目の中に、周波数の連続性や信号のタイミングを要求されている場合は、周波数カウンターのみでなく、波形を観測するオシロスコープ(とりわけデジタルオシロスコープ)が必要となる。

第一にこれらの測定器選定で間違うと、適切な検査はできず品質は保てない。
そして、検査項目が必要なのはなぜか、目的は何か、この製品はどういう条件下で使用されるのかということを知っておかねば、検査段階で信号波形の異常などの内在する品質問題を検出できない。



これらは、どこの企業の製造現場でもよく耳にしているのではないかと思う。
そして、今はもっと深刻になりつつある。


それは、既存エンジニアの高齢化と、若手エンジニアの人手不足だ。


ただでさえ、前述したような品質問題が増えている中、世の中は少子高齢化もあり色々な産業で人手不足にある。
企業が人材確保に力を入れているが、なかなか優秀な人材は集まらない。
そうなってくると、必然的にエンジニアの平均レベルも以前に比べ低くなるのは避けられない。


設計力、製造力(工作力)、品管力。
どれをとっても、既存エンジニアが若かった時代からは、歴然とした差が生じている。

作業している途中での気づき、問題意識を持ち、発言して、より良い製品にする。

この以前は入社間もない担当でも行っていた意識や行動は、今となっては皆無に近い。
まずものを作る前のレビューをしても発言しない、普通気づくだろうと思うことも気づかない。そのまま再確認せずに次工程に流してしまう。

まさに、末期状態だ。


なぜこうなっているかというと、本人の資質的な部分に加え、上司や先輩がちゃんと教育・指導できていないことが挙げられる。

当たり前だったマンツーマン指導は時の流れとともに、消えうせた。
マニュアルは整備されたが、いくらマニュアルを整備したところでやはり限界はある。
以前は数か月かけて行っていた作業引継ぎも、今では数日、ひどいケースではドキュメントを手渡しして少し申し送りするだけ。

企業側は人を育てるというスタンスから、欧米式の即戦力を求めるスタンスに移り変わり、研修や引継ぎにかける時間は削減された。


大量生産するような製造ラインでは、ロボットや自動検査・試験機の投入で作業効率化と安定品質を達成できる。
しかしながら、単価は高いが受注数の少ない個産もの、特殊性の高い製品などは、携わる人の能力に品質が左右される。


職人技といわれるハンドメイド技能は、未だに存在し必要とされているのだ。

これらの製品は、表立って有名になることはあまりないが、日本のインフラシステムやライフラインの基盤を支えている。

だからこそ、危機感を感じている。
これらの品質の低下は、知らず知らずに我々の生活に直結しているのだ。


扱う技術はより複雑になり、高度化し、進化している。
けれどもそれを支える人間力は退化している。

今、若手エンジニアを育てたいという思いが日々増している。
そして、探している。

モノ作りをして社会に貢献したいという金の卵を。




※こちらの文献も的確に書かれていて参考になります。
製造業における品質の現状


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