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マーキング=言葉

   1267 文字

 2023年の7月だっただろうか ?
 8月だっただろうか ? 
 風もなく青空が冴え渡る緑豊かな、殆ど雑草がはびこる実家の相当広い庭、家の前にはダンプカーが6台位は駐車出来るからかなり広い庭の片隅、我が愛車の横にネネ婆ちゃんがちょこんと座っている午前7時30分頃。
 20歳にはなっているかもしれないネネ婆ちゃん猫の、しなやかな背中に朝日が毛並みを光らせている。
 何処ともなく見つめているネネ婆ちゃん、数分後、遠くからチビと名付けられた6歳にはなっている筈のチビが、狩りに成功して小鳥を咥えてネネ婆ちゃんの方へ真っ直ぐ歩いて来る。
 それに気が付いたネネはチビの方へ顔を向けた。
 獲物を銜えたチビは足早にネネに向かって来る。
 
 私はどうするのかと思った、ネネ婆ちゃんにこれ見よがしに見せびらかそうとしているのかしら ? 
 狩りに成功した事を報告に近づいて来ているのだろうか ? 

 チビはネネに15~6㌢の近さに獲物を置き、ネネに頬ずりしている。
 ネネはチビが置いた獲物をチラ見して、頬ずりして来るチビに身を任せている。
 チビは獲物の匂いを嗅ぎ、又ネネを舐めて頬ずりしている。
 そんな仕草は一分程続いただろうか ?

 チビとネネは見つめあい、ネネは足元に置かれた獲物の小鳥を見つめる、チビはネネを見つめる。
 チビはネネに頬ずり、そしてネネ婆ちゃんはチビの獲物を咥えてチビからら少し離れて小鳥を食べ始めた。

 チビは黒い毛が多いさび猫、長い尻尾は中央で90度に曲がり私が近づくと歯を剥き出して威嚇して来る、付き合いは2年以上になるが一向に触る事も出来ないでいる。

 チビはネネ婆ちゃんが食べている様子を暫く見つめて、又来た道を戻り山の中へ消えて行った。

 ネネ婆ちゃんのマーキングは続き、マーキングが届く壁全部に新聞紙をぶら下げ、これで99.9%オシッコの匂いが消えるスプレーの代金が減る事を願った。
 
 猫の餌は缶詰とカリカリ餌、そのカリカリ餌が無くなり、種類の違う新しいカリカリ餌を買って来て餌のお茶碗に入れた。
 その瞬間、近くにいたネネ婆ちゃんが足早やに近づき、今迄殆ど食べなかったカリカリ硬い餌を、凄い勢いで食べている。
 チビも頭を突き合わせて食べている。

 それからネネ婆ちゃんも、私に懐かないチビも狩りには行かなくなった。
 ネネ婆ちゃんは重くなり、懐かなかったチビは少し触る事が出来るようになり、ネネ婆ちゃんはマーキングをしなくなった。
 実家の家の中は以前のマーキングの匂いにむせ返る事も無くなり、掃除をする時はドアを開けっ放しにしている。
 
 あまり食べない、ネネ婆ちゃんの味覚にあわない餌は無くならない事3ヶ月程、その間、野山の小鳥達は犠牲になり、小鳥達は絶滅したのではないかと思う程だった。
 
 ネネ婆ちゃんはマーキングと言う言葉で、私に怒られながら訴えていた事に気が付いてやれなかった。

「この食べ物はまずいわ、食べたくないわ、美味しい食べ物をお願い、お腹が空いて仕方がないのよ」

 そう言ってマーキングしていたのだろう。


 


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