見出し画像

すべつな~月の女神 ルナ

生まれてこの方、ひと様に披露できるような「特技」というものを持ったことがない。
しかしぼちぼち長いこと生きていると、それなりに自己を紹介しなければならない場面に立たされることも少なくなく、その全てを完全に避けて通ることはできない。
ひと昔前までの私は、そんな困った場面では決まってこう言っていた。

「足指の力が強いです」

良く考えなくても、自慢でも何でもないのはわかっているのだが、これくらいどうでも良い自慢話(?)を開陳すると、時に程よく場があたたまることもある。




若かりし頃の自分は腕力も脚力もなく、およそ「力」と名のつく能力の中で他者と肩を並べられるものは「視力」くらいしかなかった。が、もし学生時代に「足指力」を競う競技があったなら、もう少し自身の自信となったであろうほどには自信があった。

ところが。わりと最近になって気付いたが、かつてあれだけ足指力をひけらかしていたにも拘らず、以前よりも明らかに力が衰えていたのだ。

よく見れば左は外反母趾、右は内反小趾というのか小指が外を向いて力が入りにくくなっている。
長年足に合わない靴を履き続けた結果、知らないうちに骨格や関節が歪み、揚句に唯一自慢できた特徴が失われてしまったのだろうか・・



ということで、足に限りなくフィットする履物を求め、「ルナサンダル」と出会った。
月の女神ルナさんとの夜の散歩は、前回の記事で書いた通り。


※ちなみにラテン語で「ルナ」とは月を意味し、ローマ神話に登場する月の女神の名前でもある。



ルナさんの足底はタイヤのゴム一枚でできている。そして足にフィットさせるベルト部分がぞうりの鼻緒の様であり、足指の動きには制限がかからず自由に動くことができる。故に圧迫感を感じることもなく、足裏は直接大地を踏みしめているかのような、限りなく裸足に近い感覚で外歩きが可能だ。
こういったサンダルはビーチサンダルのようにパタパタして、歩いている内に土や砂が入り込むものだと勝手に思っていたのだが、どうやらそうではないらしい。サイズがぴったり合っていれば、異物が入り込まないばかりか、むしろ速く走ることも出来るそうだ。(ルナサンダル公式ページ
ということなので、つま先とかかとの部分をどうにかこうにかカッターで切り落とし、自分サイズにカスタマイズしてみた。やや不恰好なのはご愛嬌。


Neoさんのルナさん


「サンダルの方が速く走れる」というのは、初め全くピンと来なかった。
歩き始めは、ちょっと油断しただけで矢鱈につまづいたのだ。こんなんで走れるものだろうか、と思った。底が薄く足裏が地面に近いことが、裸足感覚を望んでいた筈だったが、あまりのリアル裸足感覚のためにかえって不安を感じてしまった。
それは、普段靴に守られていれば気にも留めないような、ちょっとした傾斜や段差に虫の死骸など、地面の性状やその上に積み重なる異物の感触に敏感になっている証で、普段の足裏感覚がいかに鈍感になってしまっていることか、と気付かされた。
以前、現代人の身体的パフォーマンスがフルに発揮できていない理由の一つに、「身体の先端まで神経が行き届いていない」から、という話を聞いたことがある。つまり、手先足先まで 意識すること が出来ていない、と。
些細な事でつまづいたり、持っていた物を取り落したり、目の前の障害物に頭をぶつけたり、ぼーっとしてうっかりよだれを垂らしたり・・いづれにしてもどこかがちょっと疎かになっていて、それに気付かないまま本体が夢遊病者のように行動してしまっているから起こるのだ。

それはともかく。

ルナさんに慣れてくれば、足裏には本来の野生の感覚が戻ってくるらしく、つまづくこともなくなるばかりか足指で地面を掴む如くに踏ん張りもきき、足だけでなく脚から身体全体への負担が軽くなった気がした。
不思議なことに、どういうわけか呼吸も苦しくならない。
想像の域を出ないけれど、合わない靴を履き続けるリスクは計り知れないとだけ書いておく。

サンダルが良いのか裸足感覚が良いのかはわからないが、足裏の感覚を研ぎ澄ませることは足指の力を甦らせ、怪我の予防にも役立ちそうだ。
一度歪んでしまった身体であっても使い方を正していけば、元通りには成らずとも、その機能はまた良い方向に動きだしてくれると私は信じている。

身体が発信する違和感や不調は、たとえ小さなサインであっても無視してはならない。小さなしずくも繋がれば川にも濁流にもなる可能性はあるし、それをどれだけ放置していたかによって災害の度合いは膨らむものだ。

ここからまた、過去の小さな症状や違和感から己の健康状態を見つめ直すきっかけになりそうだ。だってすべてはつながっているのだから・・

気付かせてくれたのはさすが、月の女神のなせる業、ということで。

ありがとうルナさん(ダル)。<つづく>



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?