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野原でそっと揺れている木は孤独だ

    野原でそっと揺れている木は孤独だ、風は手のひらと葉裏とを連れてくる、いろんな寂しさが吹かれている、静寂の音楽が高鳴ると、見えない四本足が、しなやかに駆け抜けていく、雲の涙に濡れるようにして、茨の冠を頭に飾って、無人の5月が急ぎ足で、心にひづめの跡を残していって、ハイヤ、ハイヤ。

 野原でそっと揺れている木は孤独だ、風は音楽のミューズを招いて、その歌声はたおやかでこぼれるほどの光を降らせて、独唱が終わるとどっぷりと陽が沈んで、雲の涙に濡れるようにして、茨の冠を頭に飾って、無人の5月は、姿のない馬にがぶりと、飲ませるのだ、言葉と詩の泉を、跳ねるのは音符と魚。  

    野原で そっと揺れている木は孤独だ 忘れさせるように 風は羊飼いの帽子を 清潔なる宇宙の思念で 涼しく洗っているのだ 道はかなたまで続くから 羊たちの群れは 一歩ずつ踏みしめながら 天から授かった優しいこの体の白毛が 世界を包んでいくことを 知っている 風の足が 祈りの一列を追う

 野原でそっと揺れている木は孤独だ 野原でそっと揺れている木は孤独だ 野原でそっと揺れている木は孤独だ 野原でそっと揺れている木は孤独だ だけど 野原でそっと揺れている木は孤独だ 野原でそっと揺れている木は孤独だ 野原でそっと揺れている木は孤独だ だけど 野原でそっと揺れている


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