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今すぐ我が家の「再エネシフト」を進めよう

■Zoom取材がライターのニューノーマルに

プロフィール欄の通り、私はライターの仕事をしています。先日、久々に現場に出かけてのインタビュー取材がありました。どのぐらい久々だったかというと、ほぼ1年ぶりでした。

この間、他にも何本かの取材をしたのですが、すべてZoomやMicrosoft Teamsを通したリモート取材。「何時に御社にうかがいましょうか」とクライアントさんに聞いたところ「来ていただく必要はありません」と、ZoomのUrlが送られてきたこともありました。

私はずっと “取材=現場に行くもの” という常識にとらわれていました。しかしそんな常識は、この1年で完全に覆されました。

リアルな現場に出かけて直接顔を合わせての取材はやはり良いものだと思いつつ、オンラインでもまったく不自由は感じません。

インターネットに代表されるICT(情報通信技術)は知らずのうちに身近な存在になり、今や暮らしになくてはならない存在になっています。

■ICTなくしてSDGsは実現しない

ICTはSDGsにおいても「誰一人取り残さない」ための、重要な手段に位置付けられています。

たとえば…

・ゴール4「質の高い教育をみんなに」では、高等教育のひとつにICTの知識習得をあげています。
・ゴール5「ジェンダー平等を実現しよう」では、女性のエンパワーメントにICTの活用をうたっています。
・ゴール9「産業と技術革新の基盤をつくろう」では、後発開発途上国の誰もが当たり前にインターネットを使えるようになる目標を掲げています。

企業の取り組みにおいても、ICTの重要性は変わりません。たとえばコンビニチェーンの「ローソン」は、2050年までに「食品ロスゼロ」を達成するため、AIやIoTを活用した仕入れ数予測を導入するといいます。

他のさまざまな企業でも、SDGs経営を進めるにあたってICTは必要不可欠な技術になるでしょう。

「持続可能な未来」とICTは切っても切り離せない関係といえますが、ここに意外な落とし穴があります。

■ICTで200倍になる電力消費をどうする?

2019年3月に『情報化社会の進展がエネルギー消費に与える影響』という報告書が発表されました。発表したのは文部科学省所管の研究機関「科学技術振興機構」です。

https://www.jst.go.jp/lcs/pdf/fy2018-pp-15.pdf

この報告書は、省エネ対策をしない場合、世界の電力消費量が2030年に現在の約2倍、2050年には200倍になるという衝撃的な予測をしています。電力消費量を極端に押し上げる原因は、めまぐるしいICTの普及です。

コンピューターの省電力化も進んでいるので、さすがに200倍は避けられるかもしれません。しかしICTの需要が増大することだけは確か。何らかの対策が必要です。

もしこれらの電力を従来のように火力発電所(天然ガス、石炭、石油)や原子力発電所でまかなうとしたら…。地球上はCO2などの温室効果ガスや放射性廃棄物に埋め尽くされ、「ICTで幸せになる」どころではなくなってしまいます。

一体どうするべきなのか?

■使う電気を再エネに切り替える

現在のところ考えられる解決策は、再生可能エネルギー(以下:再エネ)の利用拡大しかありません。再エネは「自然エネルギー」とも呼ばれ、温室効果ガスの発生や資源枯渇などのリスクを低く抑えることができます。

具体的には以下のような種類があります。

・太陽光発電:無尽蔵といえる太陽エネルギーを活用。
・小水力発電:小川や農業水路の水が流れ落ちる力を利用して発電。
・木質バイオマス発電:森林を手入れした際に発生する間伐材を燃料にして発電。
・風力発電:風が強い地域性を活用し、風車を回して発電。
・地熱発電:火山帯など、地下にある天然の熱を活用して発電。

世界では太陽光発電と風力発電の伸びが顕著で、これまで火力発電に依存していたアメリカ、ヨーロッパ、中国でも主力になりつつあります。

とくに太陽光発電については、地球に到達する太陽光1時間分の量で、全世界が1年間に消費する電力をまかなえるという試算もあります。これはあくまでも計算上の数値であり、実現のための技術はまだ確立されていませんが、とてつもないポテンシャルがあることだけは確かです。

日本政府のエネルギー政策においても、再エネを「将来の主力電源」に位置付けるとしています。
企業の中にも、2030年または2050年までに事業で使う電気を100%再エネにシフトする目標を掲げ、取り組みを進める事例が増えています。

■「みんな電力」にシフトしてみて

実は私たち個人も、家庭で使う電気を再エネに変えることができます。

2016年4月の「電力小売全面自由化」により、誰もが自分の意思で電力事業者を選べるようになりました。もはや原発や火力に頼る大手電力会社と契約を結ぶ必要はなく、草の根から再エネへのシフトを進められるのです。

我が家は2017年に、東京電力から「みんな電力」に切り替えました。みんな電力は2011年に設立された電力小売ベンチャーで、全国100ヵ所以上の比較的小規模な再エネ発電所と契約し、そこでつくられた電気を私たちに届けています。

我が家は、群馬県川場村の木質バイオマス発電所でつくられた電気を購入しています。きっかけは私が住んでいる自治体の東京都世田谷区が川場村と提携し「みんな電力」に切り替える世帯を募集したことでした。

その仕組みをまとめた図を、世田谷区のHPから拝借して紹介します。

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川場村は東京から車で2時間ほどの場所にあり、面積の8割が森林という林業の村です。

森林を健全に保つには、手入れが必要です。太陽の光が地面まで届くように、定期的に木を間引かなくてはなりません。そこで発生する間伐材を捨てずに、燃料として活用するのが木質バイオマス発電です。

間伐材を燃やしてつくった蒸気で発電機を回して電気をつくり、その際に出る排熱はイチゴを栽培するビニールハウスの保温に役立てられます。

つまり再エネを活用した木質バイオマス発電によって林業や農業が盛んになり、村の活性化につながるという、一石何鳥もの効果が生まれるのです。

「みんな電力」を通じて川場村の電気を購入するようになって4年になりますが、電気代は少し安くなった気がします。以前使っていた東京電力の請求書が残っていないので正確にはわかりませんが、一部で噂されている「再エネ=高コスト」という経験はしていません。

■「いい再エネ」と「悪い再エネ」に注意

ただし、再エネなら何でもOKというわけではありません。

たとえば木質バイオマス発電には、原料を海外から輸入している例もあります。原料を確保するために現地の人を安くこき使って、森林を根こそぎ伐採しているケースもあるので要注意。これはSDGsのゴール1「貧困をなくそう」やゴール12「つくる責任つかう責任」、ゴール15「陸の豊かさも守ろう」に反しています。

やはり再エネは日本国内で「地産地消」され、地域の暮らしや環境にプラスになっているものを選ぶべきでしょう。その点「みんな電力」は"顔の見える電気の生産者さん"をコンセプトにしており、発電方法のハッキリした電気を購入できます。

大きな変化も小さな一歩から。家で使っている電気のこと、考えてみてはいかがでしょうか。

下の写真は、日頃電気を使っているお礼にと、川場村から届いたプレゼントです。

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