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消えたくないから、詩を叫んでる。【#磨け感情解像度 × #おびコレ _Vol.10】

私設賞・note非公式コンテスト「#磨け感情解像度」まとめ隊・隊長のサトウカエデです。

おびコレ形式で投稿作品をご紹介するまとめ、Vol.10です。

おびコレとは?
twitterシェア時につけるツイート主独自のコメント」を、書籍カバーの帯になぞらえてnoteの帯と呼び、帯の世界と可能性を探究してみようという、2019年10月に開催されたillyさんによる【自主お題企画】「わたしの好きなnoteの帯コレクション」 略して #おびコレ です。

今回は、6月28日~6月30日に投稿されたNo.175~194の20作品をご紹介します。コンテストの終盤に投稿された作品たち。読み返し、なんだかじんわりきてしまいます。帯とともに、一度読んだ作品も、見逃していた作品も、どうぞお楽しみください。

※作品への帯の内容、および本記事でのコメントは一切審査には関係ありません。


世の中は不合理にあふれているけれど、それでも、世界は不思議で美しい 映画「はちどり」by mameさん

最近の韓国映画は高評価のものが多いですね。自分の小さいころに設定や情景が重なる作品は、特に愛着が湧きそうです。ーilly / 入谷 聡

想いのこもった映画レビューです。mameさんが14歳だった頃の世界が語られる出だしに、「14歳」という、子どもとも呼べず大人にもなれなかった「何者でもない」時間を思い出します。

そんな中学2年生の風景を見せてくれる映画、「はちどり」。

1994年は、ソウルオリンピックを成功させた韓国が、先進国入りを目指してひた走っていたころです。必死に走り続けるオトナの中で、ただの「中学2年生」でしかないウニは、自分に無関心な人たちに囲まれていました。

ハチドリは、鳥類の中でも最も体が小さく、最小サイズはたったの6センチ。そんな世界の中での弱きものに例えられる主人公。

世の中は不合理にあふれているけれど。
それでも、世界は不思議で美しい。

タイトルにもなっているラストの一文が、世界の姿を映す14歳の瞳のようで、いつか見たい映画リストにいれました。作中でも紹介されているキム・ボラ監督、1981年生まれということでほぼ同世代。映画の草稿から約4年、10稿まで及んだという創作エネルギーの大きさに、秘かに感嘆の息をもらします。


摘花の恋【てきかのこい/掌編小説】  by 高嶋イチコさん

夜中に、これは…駄目だ……と心臓が潰れました。圧倒的な描写が映像を浮かばせて余計に沁みるのです。今「ユイちゃん」なひとに、過去「ユイちゃん」だったひと(私含む)に、とにかく読んで!と捧げたい。左頬にほくろ
"その花弁は、「まだ生きていたい」と訴えるかのように瑞々しかった。"
この《花》があってこそ描ききれる、圧倒的な喪失の哀しみ。鮮烈すぎる。心して読むべし。
illy / 入谷 聡
良くも悪くも佐伯さんが大人で、そんな部分が嫌いで好きで。間違いだったとは思えない正しさ。
え〜〜佐伯さん狡いけど好き、だな……?
大麦こむぎ

悶絶する読者多数の、苦くもうつくしい恋物語。

私はぽつんと胸に広がっていく寂しさを、閑散としたホテルの風景のせいにしてみる。

冒頭が恋人との逢瀬からはじまるわけですが、文章のあちこちから恋のさみしさが見え隠れします。自らを「愛人」と言うユイ。毎週1回、律儀にビジネスホテルで彼女を抱く佐伯さん。

ここに書かれているのは、恋のよろこびではなく、苦さ。好きな人が、けして手に入らない虚しさ。いつかの夜、誰かの身を包んだような愚かしいほどの愛おしさ。

私たちの間にあるものが恋じゃないなら。あなたが今日までしてきたすべての恋を、記憶から抹消してほしい。

それでも、「そんな恋愛やめて正解だね」なんて思えないのは。

実がつく前に摘み取られた花にたとえられる痛みが、あまりにも美しく。ユイが握りしめていた恋心が、けして結ばれることはなくても、たしかに恋としてあったのだと、わたしたちの胸を突いてしまうからかもしれません。

(私はちょっと、佐伯さんをいい人とは呼べない派です……)


Brotherhood?皆まで言いなさんな。 by Peeetaさん

歳の近い男兄弟ふたりのビミョーな距離感!腑に落ちる人も多いのでは?(うちは3つ下の妹がいるけど、似たところもある…かな…?)ーilly / 入谷 聡
ただ僕は、仲の悪さこそ兄弟の美学、だと思っている。
極端に言うと、兄弟愛なんて、そんなものは存在しなくていい。

どれだけ仲が悪いのかな……と恐る恐る読み始めました。2つ違いで、高校まで一緒に過ごした弟さんとの関係。同じサッカークラブに入り、部活もともにし、兄弟喧嘩もたくさんした。仲がいいと言ってもいいはずの距離なのに、「仲良しと思ったことは一度もない」と断言するのはなぜでしょう。

答えは、離れても、変わらない。通じ合っているから。お互いに代わりのきかない存在。「弟は、弟だ」という言い切りに、私はそこに兄弟愛を確かに感じてしまうのです。


丸天のうどん/エッセイ by 四宮麻衣さん

初めから終わりまで一定の重しを乗せられて、一瞬の明るみを除き、一定のテンポを乱さずに話が流れていく。健康的な妹の額の汗の光をぬぐう彼女に、卑屈に埋もれず幸あれと願わずにいられない。やすたに ありさ
まだ記憶に新しい父の葬儀を思い出した。
彼女の幼い頃の入院中、お父様と二人で食べた丸天うどん。そしてお父様の葬儀のあとに食べた丸天うどん。妹の産毛の汁を愛しく拭う彼女の愛が私にはいじらしくて仕方ない
。ーverde

お父様が亡くなった際の葬儀の様子を書かれたエッセイです。

淡々と話が進むようでいて、一つひとつのシーンの描写がとても細かく、あれ……こんな邦画見たことあるな…という気分になりました。

最も安い葬儀屋探し、お坊さんの着替え、固くなりすぎたおむすび、長女の喪主挨拶。当時の四宮さんの思考が冷静でいてかつ深く書かれていて、日常で死に触れたとき、生にある側とのアンバランスさを際立たせているようでした。

「がんばろうね」
 唐突に妹が言った。うどんを食べ終え、水を飲んでいた私は、虚を衝かれた思いがした。

最後のうどんを食べて笑う場面、それまでの妹さんへの感情と相まって、かすかに光っているように見えます。


ことばと言葉とコトバ by ソノトキハマダさん

"がんじがらめの心を開いてくれるのも
いつも言葉たちだ"
至言ですね!皆へのエールをいただいたような感じがします。
ーilly / 入谷 聡

ふわふわと掴みどころなく、自由に形を変える、そんな言葉自体をあらわしているような詩です。「じゃがいもみたいな君のあたま」という君への描写が、言葉を使う楽しさを表現しているようでもあり、君への愛情に形を与えたようにも見えました。

がんじがらめの心を開いてくれるのも
いつも言葉たちだということを
忘れないでほしい

自由だからこそ、放つ言葉に気をつける。最後の段落の言葉は、言葉をつづる者として、覚えておきたいなと思いました。


君を知りたい。by  minami ayumiさん

"さあ、今度は私が、溶かす番だ。"
涙を見せられる相手が近くにいるって貴重なことだよねえ。ペイ・フォワード的に返していこうというガッツが眩しい。
ーilly / 入谷 聡

伝えることと、誰かと一緒にいることについて書かれた文章だなあと思いながら読みました。言葉と写真の雰囲気に、泣いている心をほぐすような優しさがあります。

君の前で初めて泣いたあの日。私の中で、何かが溶けた。

書き出しが印象的です。大人になって誰かの前で泣くって、きっとちょっと特別なこと。どんなに近しい人でも、心のなかを見せるのが怖いときがある。それでも、弱い自分を受け止めてくれる人は、強がっていた心の壁をとかしてくれます。

壁を乗り越えて、君を知りたいんだ。

恋人、パートナー、親友。この「君」に当てははまる誰かの顔を思い浮かべながら読むと、少しだけ優しく強くなれる気がしました。


僕にとっての魔法使いがチャラ男だった件 by 椎名トキ/都基トキヲさん

これは、、わかりみ深すぎる〜!!トキさんGJ!美容師さんも素晴らしい!
LGBTとかじゃなくても「なりたい外見」率直に伝えるの、美容院て挑戦する場だよなと思う。
あゆみ/ayumimu
"「そうなんだ。じゃあ彼女の為にカッコよくなって帰りましょーか!」"
めちゃくちゃいい出会い!信頼して任せられる美容師のサロンに通うのは、魂のピットインですね。
illy / 入谷 聡
わぁ!!!なんてサイコーな美容師さん!!!
えってか、えっ、トキさんの髪型イケメンすぎて!!!!
ーきゆか

美容室難民だったトキさんが、魔法がつかえる美容師に出会ったエッセイです。

シンプルに、美容師さんの一言がかっこいい。前段で繊細につづられるトキさんの悩みから、「理想の姿」を伝えることの不安がひしひしと伝わります。そのぶん余計に、チャラい美容師さんの言葉が心を軽くしたんだなあと響く。

目の前にいる人を、その人の言葉を、そのまま受け止めるのってとても大切で、意識しないとできないなって私は思います。だから、仕事のプロとしても、人としても、この美容師さんは本当にかっこいいなと。

なりたい自分になれる魔法は、未来の自分も幸せにする。

最後の一文に、幸せのおすそ分けをもらった気分になりました。


僕とメガネの小さな大苦闘 by nomi3さん

"心ない一言を向けてきた人たちには、非常に申し訳ないけど、それなりに不幸な人生を歩んで欲しいなと思ったりしますが"
色々面白いww
illy / 入谷 聡

平熱の文体の中に、笑いのツボが差し込まれるエッセイです。小学生の時に抱いたメガネコンプレックスにまつわるあれこれに、頷きつつ、所々の笑いの落とし穴に見事にハマってしまいました。

暗いところで本を読んで視力が落ちるのは、子どものメガネにはよくある話なのかも。絶望と呪いがこもったメガネの一言に、メガネをかける小学生をとりまく残酷な世界が描かれます。

「無自覚の「クルーシオ」を喰らった気分でした。

ついたあだ名から推察するに、nomi3さんは私より少しお若い方の模様。メガネをかけながら「自分じゃない誰か」を憑依させているnomi3さんを想像して吹き出しました。最後には、コンプレックスも昇華されたようでなによりです。

記憶を失ったnomi3さんが取り戻した『犬夜叉』話もいつか読みたい。


ただひとつの許せる感情 by フクイチさん

"理性の溶鉱炉があかあかと燃えたぎる。この熱こそが執筆の出発点です。"何かを書きたくなるのは、心が揺れたとき。それは高炉の奥にあるタービンが回りはじめた合図。何度も頷きながら読みました。kaoru
「裏方」の考え方よく分かる。
すべての感情をただ羅列するのを良しとせず「憎しみ」や「悲しみ」は「希望」を描く裏方であるべし、という私のスタンスと共通するものがある。
マリナ油森

文章における感情の立ち位置はどこか。フクイチさんの「エネルギー源」という答えがかっこいいなと思いました。

感情は執筆の出発点。溶鉱炉の例えに、フクイチさんのタケノコの里の記事とか、調べに調べて新しい事実から笑いを生み出す緻密さにかける情熱を垣間見た気がしました。

フクイチさんは感情をエネルギーに事実を文章にする。私はひっかかった感情を眺めたり触ったり光を当てたりして物語にします。もしかしたら、根っこは一緒なのかもしれません。


「感情解像度」の解像度 by kaoruさん

圧倒された…!
ここまで深掘りをするとは…考えうる限りすべての疑問に答えを出している。完成に至るまでの道程を想像するとクラクラする…。
是非、読んで欲しい。
森本しおり
本旨ではない部分だろうけど、すごく惹かれた。
"人が外面世界に相対するとき、そこに自分が占める割合は0.00001%にも満たない。自分のことでさえ精一杯なのに、ゼロから理解しなくてはいけない部分が99.99999%だなんてお手上げだ。"
三橋 七緒

本コンテストのテーマに、真っ向から切り込んだ広く深い考察です。読んでいて、すごくおもしろかったです。私のなかでも「感情解像度とはなにか」「磨くとはどういうことか」への答えみたいなものが一応あるのですが、それが深堀されて新しい視界が開ける気がしました。

まず、「世界を刻む道具としての言葉」という入り口がいいですよね。言葉ってなんだっけっていう話。英語の「sad」と日本語の「悲しい」は微妙にずれているという部分、言葉は本当に世界を区切る壁でありドアだなと勝手にイメージしました。

内面世界を分ける言葉、外面世界に託されれる高解像度の感情表現、なぜ人は感情解像度を高めようとするのか。わかりやすさと、磨かれた言葉が持つ意味。どれも、本コンテストに参加された方であれば、興味深く読み進めるのではないかと思います。漠然とした不安を秩序化し、わかるための言葉。

言葉は磨くほどに密度を増し、無限の解釈という光を放つ。

内面に手を伸ばし、ぴたりと重なる言葉を探す。広大な海から何度でも。せざるを得ない、突き動かされる、向き合ってしまう。線が重なる奇跡を求めて、磨く。kaoruさんの解釈が、言葉が、とても、美しいです。


Stay Safe and Eat Well 【日本語ver】 by Akkie(きききストーリー)さん

"それまでは
大好きな人たちと 肩を寄せあおう
画面や受話器を通して 繋がろう
一緒にいられることを ただ噛みしめよう"
時代の歌っていう感じ!料理がいい味。
ーilly / 入谷 聡

世界中がロックダウンとなり、家に閉じこもり人と会えない日々をつづった詩です。はじめは英語で作成されたそうで、こちらは、韻を踏むリズムが素敵です。

人と人が簡単に会えない日常に世界が放り込まれたのは、ほんの1、2か月前の話。もちろん、いまでも会えない距離がそこかしこにあります。完全に「普通」が戻ってきたとはいえない日常のなかで、一日でも早く抱き合って再会できる日が戻ってくることを願いつつ。

離れていてもつながれる喜びがわかるからこそ、ストレートに胸に響く詩でした。


お互いを思いあう感情に名前をつけるとしたら、僕らはなんと呼ぶのだろう by 星月リアさん

いわゆる「男女/恋人/両想い」にも多様なパートナーシップの形が当たり前ともいえる現在、思いの伝え方も多様なんだなとあらためて気づきます。illy / 入谷 聡

バイセクシャルの男性とノンケの男性の二人組が作るYou Tube「バイとノンケの物語-恋つば-」から読み解く、あいまいで微妙な感情の揺れと関係性のお話。

星月さんが大学時代に想いを打ち明けなかった男性との関係とあわせて、誰しもが、名前をつけるのに迷ったり、あえてつけたくないと願ったりする相手がいるのかなと想像しました。

もしその関係と感情に名前をつけるとしたら。それはきっと、二人だけの特別なものであるはず。


魔物の名は。 by きいろいお道具箱さん

「1、ツーベース」
まじでこれメモの解像度上げたい!!
illy / 入谷 聡

「こんにちは」の普遍的な書き出しに続くアクエリアスの引用が、話題をジャンプさせる感じがあっていいなと思いました。冒頭、20キロ走行していたのに、いきなり目的地についちゃう感。

意気揚々とメモ帳に「1、ツーベース」と書きなぐります。

試合のあと、「すげぇもん観たな」しか言葉が出ず、感動を簡単に言語化したくない気持ち、なんかわかります。すぐに言葉にしてしまっては、感情が薄れてしまう気がするんですよね。

そして、最後に笑ってしまいました。感情の鮮度が命なときもあるなあと。


「ぼんやりした不安」に込められた願い by Haruka/Mamiko Moriさん

「不安は願いを知るヒント」という視点、いいですね。少しずつ変えていく。illy / 入谷 聡

芥川龍之介の「唯(ただ)ぼんやりした不安」。たしかに、いま私たちが生きている世界のなかでは、その輪郭を感じる人は多いのだろうなと思います。

そのぼんやりとした不安を、もっと以前から感じていたHarukaさんが違う視点から感情を分析しようと試みたのが、「不安は自分の願いを知るヒント」という考え方。

ネガティブな感情を抱えた内面に向き合うとき、感情をマイナスのものとして避けたり、抑え込んだりするのではなく、その奥にある違う自分を探しにいく姿がいいなと思いました。嫉妬や不安を感じたとき、覚えておきたい。


【小説】 「ロング・アイランド・アイスティー」 by 広瀬ケンさん

"理由が大事。人に説明するときには。わかりやすい方がいい。できれば1行で。"
わかってもらいたい。でも本当はそんな簡単な枠を当てはめてほしくない。その矛盾が美しいと思います。あと、タイトルも。
kaoru
タイトルを見てバー店員として読まねば…と妙な責任感に駆られ、読み始めました。水商売の女の子が来ることもしばしばですが、彼女たちの纏う寂しさを文章から感じました。一言で纏めるのはアレですが、エモい。コメノツブ

なんとなく、寂しい感じのする女の子の小説です。

人に説明するときには。わかりやすい方がいい。できれば1行で。

わかっていて、あえて1行で説明する言葉を使っている。そんな女の子の姿を浮かび上がらせるお話は、ぼんやりとした6畳のアパートと雨に濡れる夜の街を思わせるのに、時折、鈍く光って鋭い。

綺麗すぎるものは嘘が多い。言葉も物語も女の子も。

何事も軽く1行でまとめる彼女が、あえて口にしようとしない遠い過去とそこにある今。その対比は、「後悔」みたいな単語ではまとめられない。

ロングアイランド・アイスティーって、紅茶を使わずに味と色合いが楽しめるカクテルなんですね。本物と偽物、余韻を残す終わり方。寂しい気がすると感じるのは私の勝手で、ほんとうは全然違うのかもしれません。


隠し持っていた『作品=長編小説』をnoteで(小分け&横書きで)全文公開してみて思うこと。 by 湖臣かなたさん

長編小説と相性の悪いnoteというプラットフォーム。それでも「あきらめない」の繰り返しの先に、きっと光は見えると思います。illy / 入谷 聡

長編小説をnoteで読まれるようにするの、なかなかハードル高いですよね。縦スクロールで読む。途中に「おやすみ」できるしおりがないから、プラットフォームとして相性悪いのかなと思ったりします。

多くの人に読んでもらいたいわけじゃない。ただ、必要としてくれる人のところに届けるには、知ってもらうには、「数字」の力が大きいことを痛いほど&うんざりするくらいに知っている。

完結までたどり着くのに時間がかかる長編小説。だからこそ、面白いと思う人に届いて欲しい気持ち、共感します。柔軟に動き続ける先に、「届く」がどうかありますように。


『贋作』 by い〜のさん

いやこれ写真の使い方上手いっすね。捨てては向き合い捨てては向き合い、滲む文字の先にある「贋作」ではない自分。illy / 入谷 聡
とても響きました、
解像度は高く、それでも、どこまでいっても贋作、その点に何かが極まっていて。。。
あゆみ/ayumimu

写真とあわせて完璧を創り出す詩の作品です。

前半の2つの詩。完成しない苦悩。思い出のなかにある記憶。誰かが、戻らない夏の日を想って、忘れても覚えておくために綴る詩なのかなと思って読みました。

記憶の中で生きたい。
君の記憶をなぞる日々を。
離せない想いを綴る。
あの夏が遠くなる。

この部分が大好きです。君と夏。遠くなる夏。けして繰り返すことのない日々。完成された世界観に浸ることも、その奥を覗きにいくことも許される、凝縮された作品です。

まとめのタイトルは、こちらの作品から引用させていただきました。


画素数を上げる by はるまきさん

"今まで記号でしかなかった文字が、急に意味を持った言葉に見えた"
これぞ、「学ぶ」ことの喜びの核ですね。だから学び続けることをやめられない。
illy / 入谷 聡

海外生活を送られていた(いる?)はるまきさんの、勉強中のインドネシア語の意味を理解した瞬間、記号が言葉に見えた感覚、「画素数が上がる」と表現するの、まさにそうだなと思いました。

作中で紹介される音楽の要素の話。これは、画素数を上げる力がある人にしか見えない世界ですよね。

たんなる記号でしかなかったものが意味を持つ瞬間、人は世界を知るんだろうな。音楽の世界の解像度も興味深いです。



優しい世界のトイレはきっと by セックスレシピの作り方さん

"言いたい事を飲み込むと、その言葉が石になる"
厳しい経験を身体の中で反響しつつ、それでも目線が母親の方に向くところに、強い優しさを感じました。
illy / 入谷 聡

小さな子どもを連れたお母さん。トイレの個室。多動性障害を疑われたくらい活発だったという幼少期の、胸につかえる思い記憶。

「早くしなさい!」

子ども目線で語られる不安とか恐怖に、胸が痛くなりました。子どもを急き立てる親が大変なのは共通事項なのかもしれないけれど、ここに書かれた小さな女の子の心境を読むと、それは免罪符にならないなあ……と思ってしまいます。

怒鳴り散らすお母さんという存在への怖さが、いつか消えますように。簡単に消えなくても、彼氏さんの言葉がずっとお守りでありますように。


なまえ by ジュンイチさん

名前に込められた意味は、ときにアイデンティティの核みたいになることありますよね。ジュンイチさんの場合はすごくかっちりはまったみたいで、読んでいて嬉しくなりました。illy / 入谷 聡
素敵なお話。名前っていいよね。
こころがあたたかくなりました〜
とがりチヨコ

素朴なあたたかみの伝わる文章です。

名前の由来、学校でたしかに宿題にでますよね。小学校の頃、いじわるな男子に名前をからかわれたりしたの思い出しました。

台所で料理をするお母さんの描写。告げられた名前の由来。やっていたお姉ちゃんが、にこにこ笑う潤一さんを発見する描写が素敵です。自分だけの名前っていいな、と思うエッセイでした。


***

以上、20作品の紹介でした。

次回、ラストのまとめ記事Vol.11を飾るのは、カラエ智春さんです!

そして7月12日18:00には結果発表……(予定)ですので、磨きぬかれた言葉で表現される多彩な感情の作品を、引き続きお楽しみください。


▼過去の作品まとめ記事はこちらからどうぞ。


▼応募作品の一覧は、下記のマガジンからご覧いただけます。



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