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強く強く、透明に光るまで。【#磨け感情解像度 × #おびコレ _Vol.2】

私設賞・note非公式コンテスト「#磨け感情解像度」の運営パートナーを務めるサトウカエデです。

おびコレ形式で投稿作品をご紹介するまとめ、Vol.2です。

おびコレとは?
twitterシェア時につけるツイート主独自のコメント」を、書籍カバーの帯になぞらえてnoteの帯と呼び、帯の世界と可能性を探究してみようという、2019年10月に開催されたillyさんによる【自主お題企画】「わたしの好きなnoteの帯コレクション」 略して #おびコレ です。

開催から13日、60作品もの投稿をいただいております。今回紹介するのは、20作品。78文字から2万5千字まで。扱う感情と表現の豊かさにコメントを書いている私も(感嘆の)ため息が出ます。

まとめのなかでは、Twitterでシェアした方の帯もご紹介しています。帯と合わせて、多彩な作品をお楽しみください。

※作品への帯の内容、および本記事でのコメントは一切審査には関係ありません。

君と往けない理由を書いた by 嘉晶(Yoshiaki)|noteと絵描きさん

「君」の存在があったから、「私」のことがわかったんだろうな。もっと言うと、「君」がいなかったらここまでのことは思わなかったのだろう。そんなことをぼんやり考えながらこのnoteを読んだよ。きょうこ/伝統工芸が好きなライター
これは、届いたのだろうか。お互いの目に触れることがあったのだろうか。たしかに共有した感情がある。あのとき伝えられなかったものを、ここに。解釈ができているか...難しいけれど、大好きです。だいすーけ@note学園2年A組3番

「君」がいないことだけ、それだけが明確な説明で、「僕」の姿は6月の雨みたいな言葉に潜んでる。詩の連続のような文章が、読み手の想像力をいざないます。

一読しただけでは見過ごしてしまうような語り手の仕掛け。「私」と「君」と「僕」の姿を想像しながら読むと、さらに奥行きのある世界観が見えてくるようです。

私には、あなたに当てた手紙、手紙を読むあなた、そして君への返事、というシーンが流れていくのですが、幾通りにも読めるような光があります。

「遺書」に書かれた感情は、後悔でもあり別離の悲しみでもあるのかなあと思ったり。


万年筆とバケットリスト by 折星 かおりさん

"刺さらないと思うのなら、磨け。"
『好き』をとことん見つめ続けることは、時に苦しいけれど、原動力になりますね。前を向き続ける姿にエールを。
入谷 聡 (illy)

ノートに見つけた数年前につづった言葉から、たどる思考。振り返ることで、胸の中にあった「書くこと」への想いを再確認する過程が文章でつづられています。

なりたい自分、やりたいことをあえて口にする。進みたい、と綴る部分の言葉が光ってます。かおりさんが大事にしている想いに気づいたきっかけが、「書くことが好き」と知っている二人の友人からのプレゼントである万年筆とバケットリストというのも素敵です。

読んでスキをつけて、心の中で応援しました。


変わりたいけど変われなかった日のドロップキック by カラストラガラさん

「休みかたがわからない」
身に覚えがあり過ぎる。
“なにもしない”という過ごしかたを知ってから、酸素を深く吸えるようになった気がしている。
はる@物語で原体験を伝える人
小説読んだみたいな没入感があって、涙が出た。わたしも海行って半日ぼーっとしたいなぁ。chisa 

前半部分の仕事に没頭して体を痛めつける部分、「休めない」理由を「根本の恐怖に気づけ無いから」と書いていて、元・やすめない族としてはなるほど……と思いました。

「5月の眩しい空の日」は、潮の香りがする海と、休みの日を楽しむ気持ちが感じられます。そのあとの、ハンバーガーとトンビ。ちょっとした事件ですが、それを不運と感じない海の描写がすがすがしく美しいです。

"逆光の雲は、手で触れば登れそうな存在感があった。"

何もしないことがもたらす心の解放感。読んだ後、ほんと「海っていいですよね」って言いたくなります。


この想いに名前はない by 百瀬七海さん

そうそう、「好き」「良い」という超おおざっぱな言葉じゃ不安定で不十分っていうのは常に思います。《解像》というコンセプトの大元もそのへんにあったりして。入谷 聡 (illy)
最後の一文にぐっときます。
名前のない感情。
あるなぁ、わたしにも。
はる@物語で原体験を伝える人

Kojiさんの「名付け親になって下さい Vol.10」と組み合わせてのご投稿、ありがとうございます。

心に響くものは、その人の心の状況をうつす。そんな感情の揺らぎ、言語化できない想いが見えてきます。

「今日はその想いを、届けたい人のために書いている。」

届けたい感情があって、その先に想う人がいて綴る言葉は唯一無二の特別になるなあと思います。すべてを言葉で説明しきれないからこそ。


アヒルの絵葉書 by たなかともこ@みかんせい人さん

"血液がすごい勢いで上がってくる"
このへんの身体変化描写は、元外科医、さすが。あと燃やす描写が入念で好きです。
入谷 聡 (illy)
血液の濁流と火の描写が緻密で、アヒルの表情が不穏な空気を醸し出す。静かでドロっとしていて、日常がぐらりと揺れる感じ、新鮮でした。奥村 まほ(okumaho)

一貫して続く暗くて静かな描写。頭に浮かぶ「アヒル」と、暗がりの玄関やキッチンのコントラストが、胸のなかにくすぶる消化できない感情を際立たせるようです。

日常に入り込んだ過去のわだかまりが蘇る心理を、血流の流れで表現しているのが新鮮でした。最後、燃やしてきれいになくなるかと思えば、消せないものであることも、こびりついた想いを感じさせます。


鎮魂歌 by 仰かおるさん

こういう作品が入ってくると本当にコンテストは豊かになります。干渉力の高い詩。嬉しいです。入谷 聡 (illy)
やっぱかおるさんはカッコいいな。文字を連ねて情報量を増やすことで解像度を上げるのも一つの手だけど、極限まで削りあげる方法もあるわけで。良し悪しはないけれど、私は削る方に『粋』を感じる(*´ω`*)たけのこ

凝縮力にわあ……とか、わお……とか、とにかく声がでました。

研ぎ澄まされ磨かれ残った言葉たちの歌。「昏い」が示すおそろしいようなものはどこかに散って、「子守歌」のあたたかさが残る。哀歌であるはずなのに、やさしい余韻が残るのは、削りに削って残った言葉たちの豊かさでしょう。

78文字と、現時点で本コンテストの最小文字数です。日頃、チョコレビューを書かれているかおるさんの、違った色の作品が読めたのもうれしかったです。


きみのその目を 貸してくれ! by 田熊 健さん

すばらしい「驚き」の味わい方!父と母で、長男くんの写真を撮る向きが違うという話に唸る。父親仲間として、ベストな子どもとの距離感だと思います。入谷 聡 (illy)

子どもが見ている視線の先を、大人が覗いてみたら……の世界。

息子さんの視線の先を追う丁寧な描写にそのときの光景が伝わってきます。子どもがじっと何を見ていたのか、それを知ったときの田熊さんの驚きに、同じ親として共感。

うちも6歳の娘の目は、大人になった親が見ないものを映しているなあと思います。視線の先と思考のつながり。少し、子どもの目線に合わせてみようかなあと、やさしい気持ちになる作品です。


050.居心地のつくり方 by こくぼ さおりさん

ばななファンらしい穏やかな語り口です。
ラブいぜ。
入谷 聡 (illy)

ソファーの情景が、家のなかを包む安心感をあらわしていて好きです。ソファーにちんまり座る子どもって、かわいいですよね。

安らげる家の描写からつづく夫さんへの愛情。「帰る場所があるってよいな」の一言と、「それをつくるのは何気ない日々の繰り返し」という言葉に込められた、家庭と家族への愛情がさわやかです。


【掌編小説】箱の中から by ちよこさん

『なんか色々押し寄せてきた』というセリフ、シンプルながら「押し寄せ感」があっていいなと思いました。彼女は箱から出ることができるのか?入谷 聡 (illy)
信じるって簡単なようで難しい。でも、その箱から飛び出す勇気を出せるかどうかで、未来が変わる。百瀬七海

「少なくとも金輪際、箱から取り出してもらえないなんてことはなさそうだ。」

人形に例えられた感情が、箱から出れない閉塞感を強くあらわしています。好きだから聞きたくて、好きだから言えない問い。

そんな恋愛感情もあるなあ……と思いつつ、「彼女」はこの先どうするのかと気になります。箱から一歩外に出るのは、怖くなくなったときかな。


3ヶ月ぶりの外食、おめでとう。 by ぽのこさん

幸せとはまさにこういうこと。なんか、なぜだか涙がにじんできました。篭田雪江(かごたゆきえ)
めっちゃかわいい!!!美味しいものを挟んで、お二人が喜びを共鳴させる姿が目に浮かぶ、とっても幸せな文章。いいなぁことふり

ご夫婦のキラキラした笑顔が見えるような描写が、最初から最後まで素敵です。

おいしい時間を味わう幸せが、隅々まであふれています。そして、「おめでとう」と互いに声をかけてしまう感情が、ほんとうに花束みたいに作品のなかに束ねられています。

塩タンを夫さんが焼く描写では、かわいい擬音語から、ぽのこさんのわくわく感が伝わってくるよう。手を差し出したときの言葉にできない気持ちが、最後の一文に凝縮されている気がしました。


この気持ちにいちばん近い感情は「恋」 by ありのす/瞬殺飯と日々のことさん

ありのすさんちは恋のようなもので溢れてる。るみ姉
子どもに対する感情が恋に似てるってなんかいいなぁ目が笑っている笑顔私もどちらかというと「殺伐」なイメージの方が強いから、こういうエッセイ読むと希望が持てる。小保下グミ

すてきなありのす一家の、「好き!」と叫んでしまうようなエッセイ。

子どもが親にむける愛と、親が抱く子どもへの気持ち。このときめきは何!?って思っちゃう瞬間を味わったことがある親御さんってけっこういると思うんですよね。

恋のようななにか。夫さんへは餃子のときめきで恋の気持ちにボリュームを。日々の生活でニコニコしたり、たまに心がパサパサになったりしたら、ありのすさんの言葉を思い出したい。


『 菊の枕 』 by tsumuguitoさん

菊枕は安眠作用があるそうですね?
よい師を持てたことは僥倖だと思います。<閲覧注意>とはありますが、穏やかな気持ちを共有できる作品かなと。
入谷 聡 (illy)

前半の痛みを伴う描写から、さいごの穏やかな流れにたどり着く歌。冒頭には虐待をモチーフにしたものとありますが、悲しくありつつも平穏な景色が描かれていると思いました。詩のような形式のエッセイだからこそ、ゆっくりと染み入るような読後感があります。

※<閲覧注意>は公開当初にタイトルに書かれていたもので、現在はtsumuguitoがタイトル更新されています。


【あの色の中を泳ぎきれただろうか】 by イテラ・ノンフィクションさん

"静けさの下に燃える炎のような、
悲しみの下を這う怒りのような、
涙の下に渦巻く意地のような、あの色"
記憶に強く沈着した色の描写、強烈です。
入谷 聡 (illy)
事実と空気と自分とテキスト。距離の取り方が個人的に好き。人によっては「透明な淋しさ」を感じるかもいしれないけどそれがよくて。ふみぐら社

記憶のなかにある景色と、忘れ得ない感情の描写が静かでかつ強く伝わってきます。

あのとき、あの場所にいた人でしか感じ得なかった想い。いたからこそ、言葉にして語れる空気。自分が見ている世界がすべてじゃないと、なにかを問われるような作品です。


あなたを前向きにする5つの感情クイズ by はがくん@検索していくぅ薬剤師さん

すごい、辞書のようなnoteありがとうございます(後付けのハッシュタグを拾いましたw)。言葉にすることで認識できる。出発点として大事な語彙たちです。入谷 聡 (illy)
語彙が増えると日常が豊かになる感覚ある〜。マリナ油森

「違うものさしを使って、自分が幸せかどうかを定義することができるからです。」

読んでいる間の感想は、終始「おもしろーい!」でした。27個に分類された感情がなにかを考える時点でわくわくします。個人的にはクイズの3番目の感情の説明が好きです。

感情を知ること、あてはまるボキャブラリーをふやすことが幸せにつながるという話。ちなみにクイズは1つしかわかりませんでした!


忘れ去りそうなきみのことは覚えているよ。 by ハルニレさん

"ゆるしてほしい、知らなかったのだ。きみがそんなふうに、優しく、切なく、孤独に歌っていたことは。"
この「惜しさ」、すごく分かります!温かい異国描写も素敵ですね。
入谷 聡 (illy)

英国・ロンドン。細やかな描写の連続に、知らない異国の風景が立ち上り、どこか懐かしさを感じてしまいました。

「ひょっとすると隣家に暮らしていたのは幽霊だったのかもしれない」

海外で暮らす同居人を思い出す語り口は、ちょっとした小説のようでもあります。静かでセピア色が思い浮かぶ文章ですが、時折さしこまれる表現がかわいくてきゅんとなります。

おなじキッチンに立って、友人と呼ばなかった彼女。その彼女を想う言葉に、こちらまできゅっと胸が締め付けられたり。


数字にできる by ナースあさみさん

おもしろーい!「感情」の対極にあるような存在である「数字」を意識的に使いこなすこと。医療現場にもまれるコミュニケーションのプロならではの視点だと思う。入谷 聡 (illy)
そうか。感情を自分で表すことができない人もいるんだな。
いつもながらのクールな視点。クールだけど、寄り添ってる。あさみさんの大きな愛を感じます。
猫野サラ

ナースのあさみさんだから書ける感情の解像度の上げ方!

本コンテストは、感情そのものを解像度高く表現しようという作品もあれば、解像度の上げ方に言及する作品もあって、ほんと豊かで読んでいてい楽しいです。

見えない人の気持ちを、数字に「できる」って書く部分にあさみさんのやさしさを感じます。いくつもある感情を伝える方法の、ひとつの手法。あさみさんの作品で読めてよかったな。


東京 by KH1992さん

"だけどもう少しだけ、見せてくれ。以前、惹かれたあの夢を。"
ハードボイルドな文体だなあ。事変のサウンドが響くような錯覚の中で読みました。都市は孤独を引き立てる。
入谷 聡 (illy)

「何気ない夜明けが、ふいにもたらす、とうに捨ててしまった自らの姿。」

眠らない街の東京で眠れない人。孤独や後悔、焦りという感情が、闇のなかから浮かんでは消えていくよう。夜からだんだんと朝に向かうような思考の描写が、東京の街の明かりと重なっていいなと思いました。


家族からフルーツが送られてくると、私がイラっとする理由。 by とりのこさん

これは!感情の解像度が高い……!この記事を読んで首がもげるほど頷く全国の妻たちの顔が見える、見えるよ……。麦谷 那世@エブリスタ・野いちご・note
首もげる。遠山エイコ

とりのこさん、Twitter連携されていませんが、シェアされている感想で、首がもげるほど頷いている人々が複数名いたことをご報告いたします。

ひとり暮らしのとき、皮をむくのが面倒でバナナばかり食べていたのを思い出しました。夫さんへの愛情もふくめ、「イラっとする気持ち」が正直に書かれていて、なんか隣でうなずいちゃう文章です。


あじさい by 伊藤緑さん

2万5千字を50分で一気に読みました。読める。読めちゃう。すごい。宗一と静恵の「感情描写」は、一切登場していないはずです。一切の「説明」がない。そして確かに #磨け感情解像度 参加作にふさわしい、鮮やかな色彩がどこまでも美しい作品でした。入谷 聡 (illy)
【オススメ】
読んでたらつい、夜ふかししてた。(通常20時就寝)
南葦ミト

2万5千字のご投稿、ありがとうございます。伊藤さんの投稿をスマホでスクロールしようとして、一瞬で諦めパソコンの大きいディスプレイで読みなおしました。

あじさいを前に出会った「女」と「男」。感動的やドラマティックという言葉はふさわしくありません。宿での出会い、ビールを飲む夕食、夜のベンチ……と、静かな映画を見るように徐々に浮かび上がる二人の姿に、こちらが受け取る感情が増えます。

けして心を説明することのない文章。独特のリズム、描写。だからこそ、生が躍動する「生々しさ」がそこにあります。

力強く、引き込まれる。人が生きていることそのものが、物語を内包するとつくづく感じる作品でした。読めてよかったです。


短歌〜鏡心の短歌 「白い花」(18首)まとめ by 
鏡心の短歌☆麻千子〜鏡心の風〜さん

複数の短歌を束ねた形態の作品、実はかなり期待感あります。31文字の制約による可能性。「濡れた靴」「光る靴」のような着眼点をどこに持つか。入谷 聡 (illy)

心を編むのに短歌もいいですよね……。とくにひとつのテーマに複数の短歌が重なっていると、31文字が表す感情が増幅する気がします。

18首の中で、私はこれが一番好きです。

「とりあえず 何かあったかいもの 食べようか 私がいつでも 私の傍に」

自分にやさしくしたいなあと感じます。


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前回のまとめはこちら

まとめが多すぎてどれを読むか迷っちゃう!という方は、仰かおるさんがまとめた個人的推し5作品なんていうのもどうぞ。

読んでスキな作品が見つかる→スキを伝える→書いた人が嬉しくなる。これぞ幸せの無限ループです。私設賞参加の楽しみ方の一つだなあと思います。



引き続き皆さんの投稿をお待ちしています!私設賞「#磨け感情解像度」の詳細は、下記をご確認ください。

▼応募作品の一覧は、下記のマガジンからご覧いただけます。


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