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1枚買ってもらえたポップアップ

このイベントの一番のターゲットは、
主催者が経営するレストランのディナー客。

ここ数年、ホリデーシーズンが始まると
年末までの間、週に何度か
ポップアップ・イベントを開催しており、
大晦日を目前に控えたこの日は
年内最後のイベントで、
レストランも既に予約で一杯でした。

閑静な住宅街の小さな商業エリアですが、
周辺には複数の飲食店や雑貨屋等があり、
ウィンドーショッピングをしている人もいて、
人通りは思ったより多く、
期待でワクワクでした。

外が明るいうちは、
人が来ても売れる様子はなく、
隣のブースの人同士おしゃべりをしながら、
のんびり楽しく時間が過ぎていきました。

そのうち日も暮れてきて、少しずつ、
ディナー後の人や次の時間帯の予約の人が
来てくれるようになりました。

人だかりができるブースもあり、
お酒が入っているせいもあってか、
徐々に買い物をする人が増えてきました。

私の所にも人は来てくれるのですが、
商品を見て触って、
質問をしてくれても、
財布の紐は堅いまま。

少しおしゃべりしては
立ち去られるという、
残念な状態が続いていました。

「残り時間は十分あるさ」と
自分に言い聞かせ、
次のお客さんを待つのですが、
どの人も
見るだけ見たら、隣に行く。

色がきれいとか、
デザインが素敵ねとか、
言ってはくれても、買いません。

自分なりにディスプレイを直したり、
笑顔を作ってみたり、
積極的に話しかけたりしてみても、
効果ナシ。

前回の記事にも書きましたが、
お客さんから
あなたが作ったの?」と聞かれ、
その質問に
キチンと答えられない自分がいて、
その事が気がかりだったので、
売れないのは
そのせいなのかなぁ?と、
考えるようになっていました。

そんな事を考えながら立っていると、
ふと、自分のブースだけが
売れていない事に気づき、
急に、身も心も、懐も、寒く感じられ、
ここに1人ポツンといることが恥ずかしく、
無性に情けない気持ちになりました。

この日のイベントについて
友人知人には事前に伝えず、
1人ヒッソリ来ていたのですが、
密かに
「誰にも知らせず来て良かったな」など
ネガティブな事を思い、
それでも
ブースに立ち寄ってくれる人には
笑顔で対応するという、
本音と建前が裏腹の状態で
居心地の悪い数時間を過ごしました。

あっという間に時は流れ、
レストランの閉店時間が近づき、
焦りの気持ちと
「ゼロ」
の文字が脳内に出始めた頃。

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やっと1名、
お母様へのギフトという事で
若い男性のお客さんが
スカーフを1枚買ってくれました。


その後、あえなくイベントは終了となり、
この日の正規の売り上げは、
この男性が買ってくれたスカーフ1枚のみ。
(手ぬぐいか風呂敷が売れるだろうと
思っていたのに。)

実はこの男性、
ディナー前に各ブースを見ており、
私の所にも来てくれていたのですが、
その時は何も買わずに
レストランに行かれたのです。
そしてディナーを終えて
お店から出てきた時に、
反対方向に歩いて行くのかと思いきや、
わざわざ戻って来られ、
スカーフを購入してくれたのです。

思い起こすと、もしかして、
レストランの中から私の周りで
閑古鳥が鳴いているのが聞こえて、
それで戻って来てくれたのかな?
などと妄想してしまう、今日この頃ですが、
その時は情けなくて
惨めな気持ちでいっぱいだったので、
そんな事は考えつきもしませんでした。

この方が買ってくれた
スカーフ1枚のおかげで、
このイベントに参加して
何かは売れた
、と言え、
その時は「売上ゼロ」でなかった事で
自分の面目は保たれた、みたいな、
非常にくだらない事を思ったのを覚えています。

と同時に、年末の寒い夜に
二度も足を運んで下さり、
お母様へのプレゼントを
買って下さった、この男性に対し、
心から有難いと思いました。
数年経った今でも、
この方には心から感謝しています。

たかが1枚ですが、されど1枚。
たったの1枚だからこそ、逆に、
何か意味がある様な気がしました。