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養生って何?「心食動休」の養生

最近、「養生」という言葉を、耳にする機会が増えました。特にコロナによって健康意識が高まり、本屋さんでは、養生・薬膳・漢方に関する売り場も広がったように感じます。

普段、「養生が大事だよ」「季節の食養生ってこんなのだよ」ってお伝えしてますが、改めて「養生」という言葉の意味をネットで調べてみました。

‘養生とは、本来のあるべき姿でいられるよう保護すること’

「養生」が使われる場は、2つあり、一つは建設や引っ越し。もう一つは健康。

建築の作業中で使う「養生」は、作業途中で周囲に傷がつかないようにシートで保護すること。(完成形のものに、本来あるべき姿でいられるように傷をつけないこと)

そして健康に関しては、自分の本来の姿・からだの状態でいられるように、バランスを大きく崩してしまう前に、バランスを整え保護してあげること、という意味になります。

薬膳は、季節や自分の体質に合わせて、食材を選んで作るごはんのことをいいます。その考え方のベースには中国の古代医学「中医学」があります。病気になる前に、自分のからだの中の小さなバランスの崩れに気づき、それにあった食材をとり、病気を予防し、日々、健康に元気に過ごそうという考え方です。まさに薬膳は「本来あるべき姿(健康)でいられるように保護すること」=養生ですね。

さて、今日お伝えしたいのは、養生は、「食」だけではなく、他にもいろいろありますよーというお話です。

4種類の養生


食養生も含め4つの養生を、ご紹介します。


[心養生]
心を穏やかに。健やかに。
趣味など楽しむ時間

[食養生]
季節・体調・体質に合わせてバランスよく

[動養生]
適度にからだを動かす

[休養生]
睡眠・入浴・瞑想など休息する時間


薬膳のお弁当作りをしていると、「食べるだけで健康になれるなんて、とてもいい!」とか「からだにいい、健康になれる食べ物を教えてほしい」と、お客様に聞かれることも多いです。その言葉の裏側には、(きびしい言い方かもしれませんが)「食べるだけで、簡単に、楽をして、健康でいたい」という心が見え隠れしている気がします…ww。もちろん、それは半分は満たしていますが、半分は足りていません。

食事はもちろん、とても大事です。そして同じくらい、上記に上げた4種類の養生も大切です。というのも、「食」だけで、未病(病気になる前の段階。プチ不調)を治すこと病気を防ぐことは難しく、4種の養生それぞれが相乗効果で健康に導いてくれるからです。

心食動休の養生もバランスよく

例えば、冷え性の人には、食養生では温性の食べ物(生姜・にんにく・にら・かぶ・玉ねぎ・ねぎ・唐辛子・鶏肉・かぼちゃ…などなど)をおすすめします。

温性のものを摂り、からだの中から暖めるのはもちろんですが、同時に湯船にゆっくりつかる。たっぷり休息する。気や血流をよくしからだを暖めるために軽い運動をすることも、同じくらい大切になります。

食だけに気を使っていても、忙しくて毎日シャワーで済ましている。運動不足で気血の巡りが悪くて冷える。ゆっくり休めていない。などでは、せっかくの食養生のよい効果も半減してしまいます。食養生と合わせて、動養生、休養生も意識することで、より早く冷えを解消できるかもしれないのです。

また別の例で、例えばストレスをためがちで気が滞り、目の充血に悩んでいる方には、からだの上部の熱を冷ましてくれる、菊花・セロリ・ミント・あさり・しじみ・ひじき・ちんげんさいや、気の巡りをよくしてくれる、柑橘系の物・みつば・春菊などの香りのある野菜をおすすめします。

しかしストレスタイプの方には、まず第一にストレスをためないこと、ストレスを発散させることが大切です。なので、趣味に没頭してリフレッシュする時間や、ジョギングなどからだを動かして心身をリセットすることをおすすめします。上記の「心養生」や「動養生」が、「食養生」よりも早く効果があり大切だったりするのです。

「食養生」は4つの養生の中の一つ。日々の生活・養生の中の一部という感じで考えていただけたらいいかと思います。

心食動休について

【心】

・心はからだの主人。五臓だと、からだの司令塔です。心の状態が、からだにも現れますし、からだの不調により、心も元気が出ないということにもなります。「心身一如」という言葉の通りですね。

いらいらする、気持ちがあせる、気持ちが沈む。生活していたらいろんな心の状態になると思います。自分なりに心の状態をフラットに穏やかに戻せる工夫を考えてみて下さい。休みの日には、自分の好きなことをする、趣味に没頭するなど、自分の心が少しでも、「楽しい」とか「リラックスする」を感じる時間をぜひとってみてください。

(ちなみに私の最近の心養生は、家に帰ったらまず「チャングムの誓い」を見ることです。韓国で大人気だったドラマ、宮廷女官のお話です。好きなドラマに没頭することで、仕事モードだった頭、今日感じたストレス、身体の疲れを切り替えてます。)

また、とても忙しくて心に余裕がないときにも、他人に親切にすることで、自分の心にも余裕が生まれるそうですよ。こんなことも、一つの心養生に取り入れてみてください。


【食】

中医学では、「先天の気」と「後天の気」というものがあります。先天の気は、両親から受け継ぎ、もともともっている「気(エネルギー)」です。これは、生まれるときには決まっていて、人それぞれに個人差があります。後天の気は、生まれてからの生活の中で作られていくエネルギーです。後天の気は、おもに食事から作られます。先天の気が少なく虚弱体質な方でも、日々の食を適したものにして、後天の気を養えば、日々健康に元気に過ごすことができます。

(気の話は、この免疫力のときに少しふれました)

食養生は、季節の旬の食材を食べたり、自分の体質に合わせて食材を選んで食べたり(例えば冷え性の人は暖かい物を。暑がりな人は、からだの余分な熱を冷ますものを。水が滞りがちな人には、水はけのよい食べ物を)などがあります。


【動】

適度にからだを動かすことも大切です。これは、日中に仕事などで活動することも含まれます。からだを動かすことで、滞る気血をからだに巡らせて冷えやストレスや脳疲労の改善にもなります。またからだを動かして気分をすっきりさせることは、心養生にもつながります。


【休】

毎日の生活では、活動する陽と休息する陰のバランスが大事です。日中、仕事・勉強・遊びな、どしっかり活動したら、夜はゆっくり休みましょう。眠れない・眠りが浅い人は、寝る前のスマホやPCを控えたり、不眠によいとされる、ゆり根、蓮の実、棗、牡蠣などがおすすめです。
しっかりと休むことで、また次の日、元気に活動できるからだになります。また湯船につかってリラックスしたり、瞑想をして頭をすっきりさせたりするのも休養生になります。

養生はいい加減に

最後に。養生はできるところから取り入れ、細く長く続けることが大切です。なので、あまり生真面目に、「あれを食べなきゃ」「運動しなきゃ」「早く布団に入って眠らなきゃ」と、「やらなきゃいけない」で心を縛ってしまうののも本末転倒です。生真面目すぎて、思うように養生をできなかったことを自分で責めてしまうと、心養生「心を穏やかに」が、いつまでたっても満たされなくなってしまいます。心はからだの司令塔です。何よりも心が健やかでいられるように、今日できなくてもまぁいいや。明日からまたできることを少しずつしよう、ぐらいの気持ち、養生を楽しむくらいの気持ちで、過ごせたらよいなぁと思います。