見出し画像

女子中高生向けのSTEAM教育 ~CPSを3Dプリントで体験してみる!Part3(2023/7/28)

2021年夏、遊びに行きたいのにいけない、いけない、いけない、が続き何か新しいことに挑戦しよう!と3Dプリンタを購入しました。その後、ほぼ毎日実験しています。こんな面白いものを独り占めするのはもったいない、という気持ちでいっぱいです。

また、リケジョを増やしたい!という思いで、女子向けSTEAM教育に関与したいなと常々思っており、大学のダイバーシティー推進センター企画のSTEAM教育に講師として参加しました。今回、第3回となります。先生、アシスタントの皆様、ダイバーシティー推進センターの皆様に感謝!です。

ちなみに、私が大学生の時には、学科の女子率は4人/200人=2%でした。現在は10%程度ということですので、5倍になったということになります。それでもまだまだだなと。小さいときからモノ作りの楽しさを知ってもらうというのが重要かなと思っているため、STEAM教育に携わりたいと思っていました。

結果、17名の女子中高生の方が参加してくれました。(途中、お一人事情により早退)
一緒に企画を盛り上げてくださった、大学生の皆様、サポートしてくださった事務局の方々に感謝!そして約半日、頭をフル稼働してくれた中高生の皆さんに感謝!です。

当日のルールは以下の通り。

  • 初めにデッサンをする。寸法も書き入れる。ここで設計をすませておく。

  • 色は1色まで

  • 造形寸法は$${120mm^3}$$(複数パーツがある場合には、サポート最小の方向で並べる)

また、当日全体に向けて説明したのは、スケッチ、押し出し、回転といった基本機能のみです。全員、初めて3D CAD(Fusion360)を使うため、視点の切り替えなどこれらの機能を使いこなす以外にも覚えることが多くなり、説明時間が長くなる、アシスタントの力量が求められる(それなりに自分で設計した経験が必要)だったりしたためです。Fusion360上での設計は参加者の方が自ら取り組まれ、そのあとのスライス、プリントはこちらで担当しました。

前回までの反省点を生かしていくつかの準備をしました。

  • 作りたいものの難易度に合わせてアシスタントを割り振る

  • 実現困難なものは企画参加前にデザインの変更をお願いする

  • 大きなものは事前に伝えて寸法を変更する。すべて0.4mmノズルを使用することとし、できるだけ早くお手元に届けるために大きさを制限しました。

  • デッサンに寸法が入っていないものは、CAD入力前に寸法をデッサンに書き込んでデザインを確定させる。

  • 休憩時間をとる。根を詰めてしまう作業であるため4時間座りっぱなしにならないようにした。

  • 設計の意図を最重要視する、ここ最重要!

今回は、事前にデッサンを提出していただいていました。Formを使わないと実現できないデザインや、実質の設計時間3.5時間の範囲で設計しきれない複雑なデザインはデザインを変更してもらうようお願いしました。

前回までの反省として、”自分の作りたいものを作れる範囲で作る”ことができるアシスタントの方が、必ずしも他人の作りたいものを実現できるわけではない、ということがわかっていました。

中高生の参加者が作りたいというもの(バラエティに富んだ、作れるかどうかを考えないもの、これ重要!)を実現するにはかなりのスキルが必要で、難易度の高いモデルは経験豊富な方に担当してもらうこととしました。アシスタントの方々は自身が担当される方のデザインをどのように実現するのかを、それぞれが予習してきてくれました。本当に皆さんの頑張りに頭が下がります。

デザインの難易度や、Formなど特殊機能を用いて設計する必要があるものの判断は事前に別の講師の方がやってくれました。マップにしていただけたので、非常にわかりやすかったです。(青い枠で囲ってあるのが講師、アシスタントそれぞれの担当。デッサンは当日修正前のもの)

また、今年度の自社企画での反省点も生かしました。”設計の意図”を明確にする。どう作るか、の前に何を作りたいのかをはっきりさせることで、アシスタントがモチベーションの維持に協力できます。何を作りたいかがはっきりしないと、これでいいかってことになりがちです。

目的と試験方法、使用材料

使用条件と使用したフィラメントはこちらです。

目的:将来の女性エンジニアを育てる!
実験環境: 
3Dプリンタ PrusaMini+、Snapmaker J1      
ノズル:PrusaMini+ 604 耐摩耗Kaika(0.4mm)         
ノズル Snapmaker J1 0.4mm      
    交換時期:2022年12月10日      
フィラメント: Overture PLAを中心にいろいろ

クリア(PETG)

艶白(PETG)

シルクピンク

シルクグリーン

マット薄緑

マットホワイト

始めに試用していたのはこちら。(2500円程度で購入したはず)

途中でなくなったのでこちらに切り替えました。初めて使用するフィラメントです。

マット水色

マットピンク


1. Mioさん(中2)

スケッチ&Fusion360での設計

はんだごてホルダーだそうです。はんだごてがまだ冷めない時に置く場所を確保するためだそうです。

かなりの試行錯誤がみられます。いろいろ試して結果にたどり着くのは良いことです。

断面を見ると、蓋がきちんとはまることもわかります。

ちょっと気になったのは、側面の切り欠き部分がすべて同じ台形になっていないことです。

どのように作られたか見てみると、このように台形を押し出した形を側面からくりぬくようにされていました。

きっと、対象にされたいのだろうなと勝手に推測して2つの方法でMioさんの作品を実現してみました。Fusion360を勉強中とのことですので、参考になればうれしいです。
一つ目は、エンボス機能を使ったもの。今回はYZ平面に台形を描きました。それを円錐の曲面を選択して加工します。

yz平面に描いた台形

エンボス加工を使用すると、選択した面(円錐の外側の面)に垂直切り取ったり膨らませたりできます。

エンボス加工
エンボス加工の断面

切り欠いたら、それを円周方向に6個コピーします。

円形状パターン(ソリッドの作成にあります)を使用して、1つの切り欠きを円周上に6個コピーします


もう一つの実施例はこちら、同様にyz平面に台形を描いたら押し出します。

先ほど(エンボス)との違いは、こちらは描いた面に対して垂直に切り取られることです。

Prusaslicerによるスライス

オリジナル作品のスライス結果は以下の通り。本体にはサポートは着けず、蓋の裏側のみサポートをつける設定としました。

プリントした作品

Prusa Mini+を使用し、こちらがオリジナルのデザインです。思った通りのできあがりになっているでしょうか?

こちらはエンボス処理したもの。

こちらが押し出しによるもの。小さな作品ですので違いがわかりにくいですね。

小さな作品ですので手法による違いは微々たるものですが、何かを実現するときにその方法は複数あり、最も自分の表現したいものに近づけるにはどうしたらよいか、というのを考えるヒントになればうれしいです。

総括

作りたい形が実現できたのではないでしょうか。蓋もしまるようにクリアランスもきちんと取られています。3D CADも使われているとのことですので、是非作品の幅を広げていただければと思います。使用する際には、倒れないように重しになるもの(鉛、ガラス玉など)を入れてください。

サポートの必要性: あり
設計変更: なし

3. Nanamiさん(高1)

スケッチ&Fusion360での設計

アクセサリー入れのようです。細部までデッサンされています。当日の加筆修正で、壁の厚みを記入することですべての寸法を決めて3D CAD上で作品を実現することができました。

Fusion360でデザインされたのはこんな感じ。手数も少ないですし、角を丸めたり細かいところまで配慮が行き届いています。

Prusaslicerによるスライス

スライス結果は以下の通り。失敗なく短時間でプリントを完了させるために、可変レイヤ高さをOnにし、またインフィルは10%で済むように直線を選択しています。


可変レイヤ高さでアダプティブ(0.5)とすることで、細かくプリントする必要のない部分のレイヤ高さを0.25mmに

器の底面(ものが入る部分の底)が広いのでインフィルを直線にすることで、インフィルを減らしてもきれいな面がはれます

プリントした作品

Prusa Mini+を使用し、Overture クリームPLAを使用してプリントしました。上面の角を落としたことで直線的ながらも柔らかい印象の作品に仕上がったと思います。

総括

きっと作りたいものが実現されたのではないでしょうか。次回は、回転などFusion360にある様々な機能を用いて、自由度の高いものにも挑戦してもらいたいです!

サポートの必要性: なし
設計変更: なし

4. Anzuさん(中1)

スケッチ&Fusion360での設計

立体カレンダーのようです。今回最も熱を入れてスケッチをしてきてくれました。これなら間違い様がないです。

手数が多いのは、一つ一つの面に文字を書き、押し出すからしょうがないです。角もきちんと丸めてあり、丁寧に作品作りに取り込まれていることがわかります。

履歴から、かなりの手数を踏んで作品を作られたことがわかります。

Prusaslicerによるスライス

もちろんサポートはつきません。特に問題なくスライス完了しました。プリント時間短縮のために、本体とさいころ部分は可変レイヤ高さを使用しています。

プリントした作品

出来上がりはこちらです。

実は、一部手を入れてプリントしなおしています。文字のへこみ幅を0.3mmとしたところほとんどへこまず文字が消えてしまいました。使用するプリンタにもよると思いますが、念のため0.5mmまで増やして(本来なら、0.2mmピッチでプリントするので0.2mmの倍の0.4mmで良いと思いますが)プリントしました。ほぼオリジナルデザインのままです。

総括

作りたい形が実現できたのではないでしょうか。最後まで粘り強く自力でやり遂げられていたと思います。次回は、もっといろんな機能を用いて自由度の高い作品を作られることを期待します。

サポートの必要性: なし
設計変更: なし

5. Mutsumiさん(中1)

スケッチ&Fusion360での設計

ミニチュアの家具だそうです。服が吊るせるように棒が横に走っています。クリスマスのオーナメントのようです。フックは作られませんでしたが、引き出しに模様を入れられました。引き出し部分を入れて12cm*12cmの寸法に入るようにという指定でしたので、寸法を変更してもらいました。引き出し部分がするっと開け閉めできるようにするために、クリアランスを設けたりといくつか考慮が必要な作品でしたが最後まで頑張りました。

こちらがFusion360で設計されたものです。

クリアランスは0.2mmとされていましたが、引き出しの取っ手がないことからするすると動くように、少し広くとるように設計変更しました。
また、引き出しの底が厚かったため底の厚みも減らしました。

オリジナルデザイン。引き出しの底が厚い

引き出しの底を薄くしました。また、いくつか描かれていたイラストを引き出しの背面にも施しました。

スケッチに描かれていたイラスト

Prusaslicerによるスライス

スライス結果は以下の通り。引き出し空いた穴と本体の棒を差し込む部分にサポートが付きます。少量ですので問題ありません。

プリントした作品

Snapmaker J1を用いてマット薄緑フィラメントでプリントしました。
意図を反映できたのではないでしょうか。

狸の一部がなくなっていました..…

実は、引き出しがするすると抜けなかったりしたので、何度か条件を変更してプリントしました。なので引き出しは2つお渡しできます。好きな方を使ってください。

総括

引き出しに配置した模様はいくつか描いたりして、最後まであきらめることなく取り組まれていました。なかなか私の手が行き届かず申し訳なく、終了間際に拝見した時に考え漏れがあったりして、えいや!とこちらで仕上げをしてしまいました。

サポートの必要性: あり(少量)
設計変更: なし

6. Kotomiさん(中1)

スケッチ&Fusion360での設計

カチューシャかけだそうです。上部が筒なのか中身が詰まっているのか明確でありません。下部はきっと円形だと思いますが上から見た図なども書かれているとまぎれがないとおもいます。

設計されたのはこちら。手数も少ないです。

上部の円筒はこのままのプリントだとサポートがたくさんつく(サポートを外した後が汚くなる、無駄にフィラメントと時間を要する)ので、ばらしてプリントすることをお伝えしていました。しかしながら、設計上そのようになっていませんでしたのでこちらで手直しをしました。

リジナルデザイン断面。2つの部品がそれぞれ存在し、交差しています。また、寸法はmm単位で指定するところがcm単位となっていましたので、全体的に1/10の大きさでした。
棒が上部の筒を突き抜けてはまるように手直ししました。筒の厚みが十分ありますので組み合わせたときに安定します。

Prusaslicerによるスライス

スライス結果は以下の通り。サポートが少々付きます。大きい作品ですのでプリントに時間を要します。ですので、可変レイヤー高さを利用します。

ちなみに、もとの作品通りに2つの部品を組み合わせた状態でプリントすると倍のプリント時間(11h38m)を要します。また、緑色の部分はサポートですので約半分の時間、1/3の分量のフィラメントがサポートに費やされることになります。ですので、このような設計変更が必要だったのです。

プリントした作品

Prusa Mini+を使用し、Overtureシルクグリーンフィラメントでプリントしました。きっと期待通りの作品になっていると思います。発送の際には取り外しておきますので、届いたらアクリサンデーなどでパーツを接着していただけるとよいと思います。

総括

シンプルながら、回転、押し出し、シェルの機能を使ったデザインで使える作品が設計できたのではないでしょうか。何度もスケッチを繰り返されていたようですので、そこで戸惑っていたかもしれません。次回はさらにもっと多くの機能を使って自由度の高い作品を作っていただけるとよいと思います。

サポートの必要性: あり(少量)
設計変更: あり

7. Yuzukiさん(中1)

スケッチ&Fusion360での設計

アイドルグループ(なにわ男子)のマークだそうです。

この作品は、あらかじめ寸法をきっちり決めることがミソです。三角関数を使って角度や長さを決めておかないと一ついじると他が狂うことになります。寸法をたくさん入れてもらっていましたがこの通りではうまくいかなかったのか、後半戦でにっちもさっちもいかない状況に陥っていたことに気が付き、最後はこちらで手を入れさせてもらいました。

プリントしてみて、若干デッサンと違っていることに気が付きました。細かいところが気になります。中央の水平部分の太さがこちらのほうがデッサンに近いと思います。

Prusaslicerによるスライス

スライス結果は以下の通り。サポートは着きません。プリントの難易度も高くありません。

プリントした作品

Prusa Mini+を使用し、Overture PLAマットピンクでプリントしました。プリントした結果は美しい作品に仕上がったと思います。

修正前のプリント品

総括

デッサンの正確性が非常に重要な幾何学的な作品でした。最後の最後につじつまが合わなくなってしまったので手を出してしまいました。アイドルのシンボルマークだそうで、元のデザインがありますのでそれをきちんと測定するなり計算するなりして設計したかったです。
作品自体は元のデザインの完成度が高いですのできれいな仕上がりとなりました。次回は、オリジナルデザインで挑戦してほしいです。

サポートの必要性: なし
設計変更: なし(ほぼなし)

8. Towakoさん(中2)

スケッチ&Fusion360での設計

初回の提出時点から、デッサンにきちんと寸法まで入れられています。オリジナリティの高いデザインです。これはペン立てでしょうか?ペンが入るかどうかが気になるところです。もし、ペン立てであれば、円柱の空洞部分をもう少し太くする(プリント部分の幅を狭くする)ことでものを入れる空間が広くなります。

設計の手数も少なく、角は丸みを持たせることができました。オリジナルデザインであり完成度も高いです。

Prusaslicerによるスライス

スライス結果は以下の通り。特に問題なくプリントできます。プリント時間短縮のため、可変レイヤー高さ機能を用いました。

プリントした作品

Snapmaker J1を使用し、Reprapper PETGクリアでプリントしました。美しく仕上がりました。

総括

オリジナルデザインをきっちり設計し、それをCAD上で実現されたと思います。次回はセンスを生かし、さらに複雑な形にチャレンジしてください。

サポートの必要性: なし
設計変更: なし

10. Yuiさん(中2)

スケッチ&Fusion360での設計

スマホスタンドだそうです。当初はぬいぐるみのようなふっくらしたデザインでしたが、今回はFormを使わないことにこだわりましたので押し出しで作れる形に変更をお願いしました。

スマホを置くくぼみ部分が丸身を帯びていたのはスマホの形状によってはすべってしまい場合もあるかも、また、どのような大きさにするのか決めよう!と相談して、角ばらせて大きさを確定していきました。その後、ご自身で工夫されて3か所のくぼみ部分の角度を変えています。

くぼみの角度を3種類持たせている

Prusaslicerによるスライス

スライス結果は以下の通り。サポートが少量付きますが、デザイン重視です。

プリントした作品

思った通りの作品になったのではないでしょうか。可変レイヤ高さ機能を使用していたら、上部の積層痕が目立たなくなったかもしれません。サポートはきれいに除去できています。

総括

初めはCADの使い方など戸惑っていたようですが、一つ一緒に考えるとその後自分で工夫を凝らし、また最後まで粘り強く取り組んでいました。思った通りの作品になっていたらうれしいです。使用するものは、私の場合も何度か試作することが多いです。なので、一度ではぴったりするものになっていないかもしれません。次回また工夫を凝らした作品を作ってもらえればと思います。

サポートの必要性: あり(少量)
設計変更: なし

11. Reiさん(中2)

スケッチ&Fusion360での設計

クマ型ソファーです。デッサン上、目や鼻の位置や足の太さは決まっていませんが、他は問題ないようです。デッサン終了までに足の太さや形状など決めて進めたかったです。

足の部分はサポートが大量につくことになりますので、設計変更により背面を下にしてプリントするようにされたようです。意図的であれば、よく考えられています。
Fusion360での手数は多いほうだと思いますが、面取りをきちんとされていて丁寧な作りになっています。

Prusaslicerによるスライス

スライス結果は以下の通り。前述のとおり、サポートが付きません。

プリントした作品

設計通りの作品になったと思います。一部、フィラメントの焦げが混入してしまいました。

総括

デッサンから一部変更した作品になりましたが、3DPの特性をよく理解された作品になったと思います。何を載せられるのでしょうか?また次回もオリジナリティ高い作品作りに挑戦していただければと思います。

サポートの必要性: なし
設計変更: なし

12. Renonさん

スケッチ&Fusion360での設計

ギターのモチーフの作品です。元は、別の動物モチーフの作品のデッサンを提出されていましたが、Formを使わない(ふっくらした形は今回対象外)方針でしたので再検討してもらいました。寸法はわかる範囲で入れられています。

非常に手数少なく仕上げられました。

Prusaslicerによるスライス

スライス結果は以下の通り。サポートはつきません。特にプリントの難易度も高くありません。

プリントした作品

Snapmaker J1を使用し、SK本舗 マットグリーンPLAフィラメントでプリントしました。思った通りの作品になっていますでしょうか?

総括

スケッチして押し出すシンプルな作品を作られました。当初デッサンとして提出されたものは実現の難易度が高い可能性があり変更をお願いしましたので戸惑いがあったのかもしれません。是非、次の機会があったらもっといろんな機能を使って遊んでいただきたいです。

サポートの必要性: なし
設計変更: なし

13. Hinaさん(中2)

スケッチ&Fusion360での設計

全長14cmのぬいぐるみの椅子だそうです。足(円柱)の太さや高さなどもデッサンの時点で決められたら(数値を記載しておいたら)良かったと思います。このままプリントするとサポートが大量につくため、足は取り外してプリントするようにしています。足の位置を決めるためにへこませており、はまるようにクリアランスも設けています。

フィレットもかけてあり、丁寧な作業をされています。

足の取り付け位置がわかるへこみがつけてあります。足より径が大きめになっていますので干渉することもありません。

Prusaslicerによるスライス

スライス結果は以下の通り。
プリント時間短縮のために可変レイヤ高さ機能を用いています。

プリントした作品

艶白を希望されたので、当初、PETGの白を使用しました。実は、何度もプリントに失敗しました。PETGは湿度を嫌います。事前にオーブンで乾燥させたりもしましたが表面が滑らかにならなかったので、最終的にシルクPLAでのプリントとしました。足は接着してませんがどんな感じになるか見てみました。良い感じだと思います。思い通りの作品になっていたら嬉しいです。

総括

限られた時間の中で細部までこだわって作られたと思います。次回は別の機能も使って遊んでみてほしいです。

サポートの必要性: なし
設計変更: なし

14. Koharuさん(中1)

スケッチ&Fusion360での設計

ハートの小物入れです。ハートの上部の丸みにこだわっていました。Form機能を使えば丸くすることはできますが、今回はForm以外で実現することとしていましたので押し出し、シェル、フィレットで実現されています。

手数は少ないですが、外側の形に影響を及ぼさない部分でフィレットを入れたり丁寧な仕事をされています。

プリントして気になったので、モデルに少しだけ手を加えて再プリントしました。気になったのはキー(かみ合わせ)部分が1.5mmしかないので簡単に脱落してしまいます。

かみ合わせ 1.5mm
かみ合わせ2.5mm

なので、重なる部分を2.5mmに拡張しました。これだけで安定します。こういう部分はプリントしてみないとわからないことが多いです。ご自身でもプリントできる環境が整えば、いろいろ試してみることができます。

Prusaslicerによるスライス

スライス結果は以下の通り。容器の部分が丸みを帯びており、平面に近い部分がありますのでサポートが付きます。上部の傾斜が緩くなっているのでその部分の積層痕をできるだけきれいにするために可変レイヤ高さ機能を用いました。

プリントした作品

上面の滑らかさを重視した設定にしているので綺麗にプリントできています。

緑色のほうはかみ合わせ部分を2.5mmにしたものです。縁についたサポートもきれいに外れていますし、かみ合わせ部分も深くなっていますので扱いやすくなっているはずです。

総括

シンプルな機能の組み合わせと細かい配慮で素敵な作品になったのではないでしょうか。次回は新たな機能も組み合わせてできることを増やしてもらえればと思います。

サポートの必要性: あり
設計変更: ほんの少し


15. Kasumiさん(中3)

スケッチ&Fusion360での設計

犬がデザインされたスマホスタンドです。3つのパーツから成ります。細かいところまでよく考えられています。犬のシルエット以外は寸法が入っています。

前日にFusion360を試してみられたとのこと。ほぼ独力で仕上げられました。一点だけアドバイスしたのははめ込み部分のクリアランスだけ。手数も少なく効率的に設計されています。また、角にはフィレットをかけてあり丁寧な作りです。

Prusaslicerによるスライス

スライス結果は以下の通り。プリント時間短縮のために可変レイヤ高さ機能を使用しています。

プリントした作品

PrusaMini+を使用し、Overture クリームPLAを使用してプリントしました。スマホスタンドだと思います。使えるものになっているとよいと思います。しっぽの部分の細い線も素敵です。

総括

シンプルながら細部まで気を配った、使える作品だと思います。次回は回転など別の機能も組み合わせて発展させられるとよいと思います。

サポートの必要性: なし
設計変更: なし

16. Hanaさん 

スケッチ&Fusion360での設計

Nのロゴの入ったチャームのようです。

シンプルな作品ながら、角にはフィレットを入れて丁寧な仕事をされています。

Prusaslicerによるスライス

スライス結果は以下の通り。特に問題なくプリントできそうです。

プリントした作品

Snapmaker J1を使用して、SK本舗 マットPLA水色を使用してプリントしました。予想通り、きれいにプリントできました。使用されたフォントもよい感じですし、形も美しいです。

総括

シンプルながら美しい形と細かいところまでの気配りがされた作品になりました。次回は、回転などFusion360にある様々な機能を用いて、自由度の高いものにも挑戦してもらいたいです!

サポートの必要性: なし
設計変更: なし

16. Miwaさん 

スケッチ&Fusion360での設計

カメをかたどったスマホスタンドです。足の形が複雑で苦労されていました。足の形を図面上で定義していなかったがために、どのような形にするのか悩まれていたのだと思います。
初めは丁寧に一つ一つ説明していきましたが、慣れたら一人でサクサク設計を進められました。目をへこませるとか、足の形とか自分で実現したい形がはっきりしていて、最後まであきらめずに設計されていました。

実は、ベース部分とその上の立ち上げの部分、アーチ部分など複雑な構造です。初めは戸惑っていましたが、手を動かしていくうちにどんどん一人で進めていかれました。一つだけ気になったのは、アーチ部分がフィレットを掛けたことによって端面が鋭くなっていたことです。その部分は少しだけ手直ししました。

こんな感じにちょっとだけ手直ししています。余計なことならすみません。

Prusaslicerによるスライス

スライス結果は以下の通り。実は、カメの甲羅の中はすべてサポートが付きます。空洞にする必要がなければ(スマホが置ければよいのであれば)埋めてしまった方がプリント時間が短かったかもしれません。

プリントした作品

Snapmaker J1を使用してReprapper PETG クリアフィラメントを使用してプリントしました。実際にスマホを置いてみて、使えることを確認しました。思い通りの出来上がりになっていると嬉しいです。

ちなみに、無駄になったフィラメントはこの分量。アーチ部分だけ取り外せるデザインにするよう指導すればよかったと少々後悔しています。

総括

実は、押し出したり回転させたりカットしたりと工程が多い作品です。最後まであきらめることなくしっかりやり遂げました。

サポートの必要性: あり
設計変更: なし

17. Mayuさん

スケッチ&Fusion360での設計

カップケーキ形の小物入れでしょうか?Formを使用する必要はありませんが結構複雑な形です。

大変申し訳なかったのですが配慮が行き届かず、思い描かれたものには到達していませんでした。

断面を見るとこんな感じ。上部のサクランボも落ちてしまいます。

こちらでデッサンをもとにデザインしてみました。サクランボにはフィラメントを軸の代わりに突き刺せるようにしています。

断面はこんな感じ。

蓋はこのような形にしました。かなりデッサンに近いものになったのではないでしょうか。

もし、ご自身でやってみたいと思われるのであればFusion360のプロジェクトファイルを差し上げます。

Prusaslicerによるスライス

実はこの作品の蓋は何度もプリントに失敗しました。
こちらは初めのスライスです。

サポートの条件はこちらです。ラフトを追加してインターフェースレイヤーを確保していますがそれでもうまくいきませんでした。

そこで、ギザギザ部分をべた塗りでサポートをつけることにしました。

プリントした作品

PrusaMini+でプリントしました。
指定は艶白でした。オリジナルデザインを艶白でプリントしました。

蓋はずり落ちてしまいます。

一方で、ご本人のデッサンをこちらで具現化しようとした記録がこちらです。

プリント失敗。とげとげ部分がうまくプリントできません
おおむねうまくいったのはこちら。サポートは元の設定。フィラメントは白マット。実は一部欠損しています。
成功したバージョン。サポート条件変更後

サクランボの軸はフィラメントを利用して表現することにしましたがちょっと太いかもしれませんね。接着剤は使用していませんので、接着したいときにはアクリサンデーなどを使って接着いただけるとよいと思います。

シルクホワイト


マットホワイト

何度もスライスし、プリントのために試行錯誤をする作品でした。自分がデザインすることがないタイプの作品ですので、勉強させていただきました。

総括

実現が難しい作品でした。次回はもう少し初心者のレベルに合わせた作品が提案できればと思います。今回難易度の高い作品に挑戦され、消化不良だったと思います。是非、他の機能も使いこなして新しい作品を作っていただければと思います。

サポートの必要性: あり
設計変更: あり


反省と総括

今回は、3回目の試みとして、前回の反省点を生かして進めることができました。アンケートを拝見すると、モノづくりや工学への興味を持てたという方が複数人いらっしゃり、目指しているところに少し近づけたかなと思います。講師・アシスタントの方々のサポートと、ホスピタリティ、事務局の方々の完璧な準備とサポートのおかげだと思います。
実は今回アシスタントの方が全員新しくなり、活躍を期待していた講師の方が欠席となったりと前回より厳しい条件での開催でした。参加者の方々の豊かな発想に基づく作品作りをサポートするためにはアシスタントが熟練度を上げることが重要です。
次回はその辺りを強化していきたいです。

今回も、良い経験をさせていただきました。自分が普段作らない発想の作品を実現するために、スライス条件の条件を変更したりと勉強させていただきました。
是非継続、発展させたいです。3Dプリンタ、プログラミング、動くものなど発展の方向性は様々です。

ますます、STEAM教育に本腰入れたくなってきました。同志で意欲的な方と、活動を広げていきたいです。
本業は、もちろん!6G・IOWN成功に向けて、動きを加速させていきます!



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?