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女子中高生向けのSTEAM教育 ~CPSを3Dプリントで体験してみる!Part4(2023/12/16)

2021年夏、遊びに行きたいのにいけない、いけない、いけない、が続き何か新しいことに挑戦しよう!と3Dプリンタを購入しました。その後、ほぼ毎日実験しています。こんな面白いものを独り占めするのはもったいない、という気持ちでいっぱいです。

また、リケジョを増やしたい!という思いで、女子向けSTEAM教育に関与したいなと常々思っており、大学のダイバーシティー推進センター企画のSTEAM教育に講師として参加しました。今回、第4回となります。先生、アシスタントの皆様、ダイバーシティー推進センターの皆様に感謝!です。

ちなみに、私が大学生の時には、学科の女子率は4人/200人=2%でした。現在は10%程度ということですので、5倍になったということになります。それでもまだまだだなと。小さいときからモノ作りの楽しさを知ってもらうというのが重要かなと思っているため、STEAM教育に携わりたいと思っていました。

結果、17名の女子中高生の方が参加してくれました。(途中、お一人事情により早退)
一緒に企画を盛り上げてくださった、大学生の皆様、サポートしてくださった事務局の方々に感謝!そして約半日、頭をフル稼働してくれた中高生の皆さんに感謝!です。

当日のルールは以下の通り。

  • 初めにデッサンをする。寸法も書き入れる。ここで設計をすませておく。

  • 色は1色まで

  • 造形寸法は $${120mm^3}$$(複数パーツがある場合には、サポート最小の方向で並べる)

また、当日全体に向けて説明したのは、スケッチ、押し出し、回転といった基本機能のみです。全員、初めて3D CAD(Fusion360)を使うため、視点の切り替えなどこれらの機能を使いこなす以外にも覚えることが多くなり、説明時間が長くなるためです。よって、アシスタントの力量が求められます(それなりに自分で設計した経験が必要)。Fusion360上での設計は参加者の方が自ら取り組まれ、そのあとのスライス、プリントはこちらで担当しました。

前回までの反省点を生かしていくつかの準備をしました。

  • 作りたいものの難易度とアシスタントのスキルを一致させる

  • 実現困難なものは企画参加前にデザインの変更をお願いする

  • 指定のサイズに入らない作品は事前に伝えて寸法を変更する。すべて0.4mmノズルを使用することとし、できるだけ早くお手元に届けるために大きさを制限しました。

  • デッサンに寸法が入っていないものは、CAD入力前に寸法をデッサンに書き込んでデザインを確定させる。

  • 休憩時間をとる。根を詰めてしまう作業であるため4時間座りっぱなしにならないようにした。

  • 設計の意図を最重要視する、ここ最重要!

  • アシスタントの方に、事前に参加者の方のデザインを設計してもらい当日指導できるようにした。

事前にデッサンを提出していただいていました。Formを使わないと実現できない丸っこい設計図があって無いようなデザインや、実質の設計時間3.5時間の範囲で設計しきれない複雑なデザインはデザインを変更してもらうようお願いしました。

前回までの反省として、”自分の作りたいものを作れる範囲で作る”ことができるアシスタントの方が、必ずしも他人の作りたいものを実現できるわけではない、ということがわかっていました。中高生の参加者が作りたいというもの(バラエティに富んだ、作れるかどうかを考えないもの。これ重要!)を実現するにはかなりのスキルが必要で、難易度の高いモデルは経験豊富な方に担当してもらうこととしました。アシスタントの方々は自身が担当される方のデザインをどのように実現するのかを、それぞれが予習してきてくれました。本当に皆さんの頑張りに頭が下がります。

今回は、もう一人講師の方の絶大な協力を得ました。(弊社の若手ホープ)アシスタントの指導にあたってもらい、担当の割り振りから何までおねがいしました。当日これなくなったアシスタント分のフォローまで。これが一番重要だったと思います。

作品の難易度・必要工数マップ

このマップに実際は足りない視点は本人の経験値・力量でした。実は、すでにFusion360に慣れている方もいらっしゃり、そうすると難易度が変わってきます。また、図面に描かれていない要素(後で足した要素など)もここでは考慮されていません。こういったところが、準備とリアルの差異となり、当日埋める必要があり、埋められる人をアサインする必要があるということです。

今回4度目だったわけですが、回を重ねるごとに完成度が上がっていると思います。私も初めの説明とか、もっと工夫しないとな、と反省しました。きっと次はもっと良い企画になると思います。

今回初めてテストピースを提供しました。サポートが必要!とか、サポートの下はあれるよ!球形の上面はがたがたになるよ!壁の厚みは薄いと貧弱だし厚くてもやぼったいよ!(5mm,10mmの壁としてよく仕上がってくるので)。これらは言っても伝わらないかなということでサンプルを作ってみました

円錐(比較用に、半球も用意しましたが無くなりました....)
サポートによる影響
左から、Y、T、サポート下部が局面となる形
ブリッジの理解用
ブリッジ背面の観察
壁の厚みはどれぐらいが自分の作品には適しているかを
考えてもらうためのサンプル
0.5mm, 1mm, 2mm, 3mm


麦茶さんのライブで紹介されたケースに、イヤリングとテストピースを詰め込みました。

当日のテストピースセット&イヤリングのプレゼント
こんな風に蓋がしまります
私が当日つけていたイヤリング

イヤリング用のモデルはこちらです。金属パーツは、ボールチェーンの代わりにイヤリングにしています。

https://www.printables.com/model/637342-small-prusa-chirm


目的と試験方法、使用材料

使用条件と使用したフィラメントはこちらです。
信頼性の高い機材であるPrusa機と、信頼性の高いノズルであるKaikaと信頼性の高いフィラメントの組み合わせにより、失敗のリスクを減らします。
残るリスクは、私のモデリングとスライススキルです。

3Dプリンター

今回使用したのは、新規に購入したPrusa Mk4 1台と、Prusa Mini+ 2台の計3台です。

ノズル

新規にPrusa機向けに購入するノズルはKaikaのみになっています。
今回使用したのは、kaika640(穴径 0.4mmノズル)と、テクダイヤ社からご提供いただいた耐摩耗Kaikaです。

3D CAD

個人ユースであれば無料で使えるFusion360が私の味方です。年間収益が ¥145 336 未満で、非商用目的で個人的に デザインなどされる方は無料で使用できます。学生さんであれば機能限定されないバージョンを無料で利用できますので是非ダウンロードして使ってほしいです。

https://www.autodesk.co.jp/products/fusion-360/personal

スライサ

Prusa機との相性も良く、完成度も高く、どんどん機能が追加されるPrusaSlicerを愛用しています。私のnoteでもスライスのTipsを共有しています。チューニングしなくてもそのまま使えるのがPrusaSlicerの強みだそうです。(私はいじりますが)
今回、印刷時間を比較として載せていますので、同等の条件としています。(PrusaMiniとMk4で異なるでしょうが)
すべて、PLA利用、0.4mmノズルでInput Shaper利用 0.2mm STRUCTURAL からできるだけ条件を変えずにプリントしています。

接着剤

PLA素材の接着にはアクリサンデーが最強です。今回もそちらを使いました。樹脂を溶かしてくっつける溶剤タイプです。


フィラメント

以下、使用したフィラメントです。
最近は安定したプリント品質を提供してくれるSK本舗さんのフィラメントを主に愛用しており、そちらにどんどんスイッチしています。(3,800円/kgとちょっとお高め)

シルクピンク

シルクグリーン

マット薄緑

マットホワイト

マット水色

マットピンク

マットイエロー

マット黒

ゴールド


1. みさこさん(高1)

スケッチ&Fusion360での設計

ぬいぐるみ用ソファーだそうです。デッサンですべての寸法が決められていましたのですでに設計が完了していると言えるレベルです。

CAD入力では角も面取りをされ、丁寧な設計をされていました。履歴から手数が多そうに見えますが、フィレットと面取りを個別にされているためです。フィレットと面取りはその順序によって感じが変わってきますのでこの部分だけでもノウハウになります。

Prusaslicerによるスライス

標準の設定から変えずにプリントできます。厚みがそれなりにあるので、時間を要します。

プリントした作品

イメージ通りの作品になったのではないでしょうか。壁が厚いので、ぬいぐるみだけでなく重いものも載せられそうです。

総括

初めての設計としては取り組みやすい題材だと思います。サポートが付かないデザインにされたり面取りをすることで使うときにも支障がない、痛そうではない作品になっています。是非次回はほかの機能も使って、別の作品に挑戦してください。

サポートの必要性: なし
設計変更: なし

2. ふみかさん(中2)

スケッチ&Fusion360での設計

コンタクトケースを置く入れ物だそうです。家族で同じコンタクトケースを使用しているので間違わないように置く場所を決めるのだそう。きちんと寸法もデッサン上で決定されていますのであとはCAD入力するだけです。CAD入力の経験があるとのことで、サクサクと設計を進められました。

設計も早く進み、当初の予定になかったネームプレートも作られました。履歴を見ても手順に無駄も迷いもありません。

Prusaslicerによるスライス

デフォルトのままプリントできる作品となっています。特に工夫したところはありません。細い線がつぶれないようにだけ気を配りました。

プリントした作品

良い感じに出来上がったのではないでしょうか。ちょっとクリーム色っぽいやさしい白のケースとなりました。もしかしたら洗面所で使用されるのでしたら白ではなく汚れがついても目立たない色にしたほうがよかったかもしれませんね。

総括

作りたいものがはっきりしており、迷いなく形にされたと思います。コンタクトケースを穴にいれるということで、クリアランスも考慮に入れた設計にされていました。使えるものというのは難しく、何度か作り直して理想の形に仕上げることも多いです。気に入って使ってもらえてると嬉しいです。

サポートの必要性: なし
設計変更: なし

3. れおなさん(中2)

スケッチ&Fusion360での設計

ティッシュボックスです。大きさの制約があるため、底部分を規定サイズ(120mm*120mm)内の空き地部分に収まるようにされています。すべての寸法が決められています。底部分をスリットに差し込みますが、その部分もきっちり設計されています。スリット部分にサポートが付かない工夫もされています。


CAD入力も無駄な手数がないです。

底はこのような形で取りつきます。ただ、後にも説明しますが、この幅(短い方向)だとずれてしまいます。

Prusaslicerによるスライス

底の部分の板を、本体の空きスペースに配置すると、隙間がなくくっついてしまいますのでばらして印刷しました。大きさもありますので、それなりに印刷時間がかかります。

プリントした作品

裏面から見たとき、板をスライドさせてはめるとこんな感じになります。

スライドさせるためにクリアランスを設けていること、板の幅が少ないことからこのようにずれて落ちてしまいます。

こちらで裏面を覆うサイズ(細い板ではなく)の板をデザインし、それを同梱させてもらいました。オリジナルデザインもありますので比較してもらえればと思います。

総括

デッサンの段階で細かいところまで配慮され、寸法などすべて決めた状態でCAD入力を開始されました。実際に作ってみないと気が付かない問題は発生しましたが、そのあたりは3Dプリンタをご自身でお持ちになれば試行錯誤でクリアできる、そもそも大きさの制約がなければ問題とならなかった部分です。基本的な操作などはすでにマスターされているようですので、是非次回はさらに難易度の高い作品に挑戦いただければと思います。

サポートの必要性: なし
設計変更: なし(ちょっと手直ししました)

4. さほさん(中2)

スケッチ&Fusion360での設計

スマホ立てです。綿密な設計をされています。3DPrintの経験もあるとのことです。ただし、厚みが入っていません。初めに意図した数値を持たないと、それと整合しない時に気が付かない、妥協することになります。

Fusion360も使用されているようで、サクッと設計されました。履歴を見ても、迷いも無駄もありません。時間が大幅に残ったので、柄を追加されていました。同じような柄でいて、ミラーを使って左右対称にするのではなく、一つ一つデザインされています。こういうこだわりが作品の質につながります。さくっとこういったデザインが追加されるのは素晴らしいと思います。
この時点では気が付きませんでしたが実はこの柄に問題がありました。

柄に水平方向の細いスリットがあるのですがそこにサポートが付くことになります。それをうまく取り外すことができないのです。

Prusaslicerによるスライス

こちらは一回目にプリントした時のスライスです。模様にサポートがついています。サイズも大きいのでそれなりに時間を要します。

よく見てみると、前面パネルの厚みが相当あるようでした。これが印刷時間を増やす元です。使用フィラメント:93g、印刷時間6:09です

プリントしてみたところうまくサポートが外せませんでしたので、CAD上で各パネルをばらしてプリントするようにしました。また、前面パネルは不必要に厚かったので薄くしました。
この状態でプリントすると何が起きるかというと

このようになだらかな傾斜部分が積層方向の段差となり表面に現れます。このときも、なだらかな段差のある部分だけ積層ピッチを細かくして工夫しましたが、それなりに見えてしまいます。また、フィラメント使用料は23g程度減らせた(30%短縮)なのに印刷時間は17%程度の短縮で、効率は下がりました。やはり、初めのスライス条件でサポートが付かないデザインにすべきということです。

プリントした作品

こちらが初めのスライスでプリントしたものです。前面はきれいにプリントできています。

前面から見ると一見奇麗そうですが

しかしながら、サポートが付いた部分がうまく剥がせず、トライしたのですが途中で断念しました。

模様にサポートがついて取り外せません

プリント方向を90度傾けてみましたが今度は別のスリット部分のサポートが外れません。

プリント方向を変えてみましたがダメです

結局このようにプリントしました。(これは3回目のプリント)
前面板は立てたのですが、ヒートベッドに接する面積が小さいからか途中で段差ができてしまいました。

このようにばらしてプリントしました。

ですので、2つ目のスライサ条件でプリントしました。このように、スロープに段差ができます。

水平方向のゆるい傾斜部分は段差が目立ちます

こちらがプリントして組み立てたものになります。組み立てにはアクリサンデーを用いました。

バラバラにプリントしたものを組み立てました

前面の段差をもう少し何とかしたいところでしたが、側面、背面のデザインはくっきり見えるようになりました。

前面の段差は目立ちますが、側面の模様はくっきり出ています

総括

意匠面、構造共によく考えられ、角を丸める、モチーフを追加して完成度の高い作品を設計されました。ウエーブ模様の向きだけ意識されればサポートなくもっと表面も滑らかなものになったと思います。もう少し、設計時点で注意を払えればよかったです。こちらも勉強になりました。
普段から3Dプリントができる環境にあるのだと思います。動くものなど新たな領域に挑戦してもらえると嬉しいです

サポートの必要性: あり
設計変更: なし(設計的にはありませんが、プリントするために分割しました)

5. ここあさん(中1)

スケッチ&Fusion360での設計

ペン立てです。この形から、内部にサポートが付きます。内部にサポートが付くと外しにくい形状ですので、サポートが付かないように設計上で工夫されました。口部分の下にサポートが付きます。これは意匠上必要なサポートと理解しました。

ネームプレートは上に載せるのかな?と思い”かかり”をつけるように設計変更をしようとも思いましたが、ペン立てだとすると蓋をするのもどうかと思いやめました。角に面取りをすることでデッサンとは別物になっています。こういう工夫は、機能を理解するうえでも試行錯誤をするという意味でも良いと思います。

実は、ちょっとした隙間が空いていました。これはスライスした時に気が付きました。

完全にスケッチの線が一致していないために起きました。スケッチで”プロジェクト”を使うことで、以前に書いた線や立体の辺や面を取り込み、一致させることができます。

斜め部分の角度はちょっと急すぎるかな(60度ぐらい)、45度で十分なのにと思いましたが、長いペンを入れてちょうど斜めに入るぐらいにしているのだと納得しました。こういう、設計の意図を見られると嬉しくなります。

Prusaslicerによるスライス

口の下のサポートは仕方がないです。それなりに大きなものながら、プリント時間は2:42とそれほどかかっていません。

プリントした作品

良い感じに出来上がったのではないでしょうか。今、この記事をまとめていてネームプレートがどこかに行ってしまったことに気が付きました。
本体の意図しない隙間を埋めた際に、ネームプレートの存在を忘れてしまっていた(履歴を戻って修正し、元のところまで戻りきっていない)ことに気が付きました。申し訳ないです。プリントしておきます。

総括

思い通りの作品に仕上がったのではないでしょうか?目に見えない工夫もされています。最後まで作業を続けられていましたが、履歴上はすっきりしていますので、そういったところまで気を配られていたのだと思います。是非次回は回転体など他の手法も組み入れた作品を作っていただきたいです。

サポートの必要性: あり
設計変更: あり

8. ゆうなさん(中2)

スケッチ&Fusion360での設計

眼鏡ホルダー機能付きペン立てです。今回結構難易度の高い作品の一つです。有機的な形なので細かいところまで数値が書き込まれておらず、アシスタントの方にもそこを明確にするところからお願いしました。(なんせ、今回の目的は設計なので意図が重要!)


CAD上で設計したのがこちらです。おでこの曲線、くちびるにこだわった様子が見受けられます。結構手数も多いです。それなのに、最後までやり遂げた、設計が破綻していないのは素晴らしいです。ご本人、アシスタントのサポートの努力によるものです。

ただ、一つだけ、時間内にうまくいかないことがありました。スヌーピーの模様をあしらっており、輪郭を押し出そう(押し出して結合)としたのですがエラーになります。

ジオメトリの結合中のエラーというのは結構起こるもので、実際に重なる部分がないのに”結合”とか”切り取り”しようとするとエラーとなります。今回は時間内に原因を見つけることができませんでした。もともと、外側の線があり、内側の線はオフセットで描画しています。きっとオフセットで描いた線に問題があるのだろうなというあたりはつけていました。何本か線が入っているのは、エラーとなる場所を特定するために分割して押し出したりするために入れたものです。

位置を特定したところ、オフセットで描画した線がこのようにループを描いていることがわかりました。この位置に問題があることがわかりましたので、線を削除して描画しなおしエラーを取り除くことができました。

Prusaslicerによるスライス

このデザインは何か所かサポートが付きます。背面のスヌーピーのモチーフにもついています。とはいえ、サポートは19分なので全体の時間からするとそれほどの量ではないです。あとは、うまく除去できるかどうかです。大型の作品ですので、5:40プリントに要します。

プリントした作品

出来上がったのがこちらです。サポートはきれいに除去できていました。背面のスヌーピーもきれいに浮き上がっています。撮影ミスってうまく表現できていないかもしれませんが。意図した作品が出来上がっているのではないかと思います。

総括

最後まであきらめることなくやり切りました。エラーの原因特定まではいきませんでしたが、そこはある程度使いこなしていないと無理ですので初めてにしては素晴らしい出来栄えだと思います。こういうオリジナリティ高い作品を考え付き、最後まであきらめることなく取り組まれたゆうなさん、アシスタントの方に拍手です!

サポートの必要性: あり
設計変更: あり(エラー個所の修正)

9. べにひさん(高1)

スケッチ&Fusion360での設計

ライトスタンドです。台座の上に明かりを置いて使用するようです。この作品のポイントは、どのように大量につくサポートを避けるか、です。このままだと屋根の下に大量のサポートが付きかねません。

サポートが大量につくことを避けるために、屋根を分割しました。そして屋根と柱の位置決めのために細い柱をたてて、それが屋根に刺さるようになっています。柱の位置がそれぞれ変えてあるので位置関係が一意に決まります。ライトを置く場所は、位置がずれないようにか掘り込みを入れられています。最後まで手を動かして工夫していかれたのはすてきだと思います。

Prusaslicerによるスライス

スライス結果は以下の通り。サポートが少量付きますが、デザイン重視です。

プリントした作品

心配していた通り、柱の上の細い柱が折れてしまいました。FFF方式のプリント品は積層方向の接着が弱いのです。下の段に上の段を積み上げますが、積み上げるときには下の段は冷えて固まっていますので、溶けている上の段の接着力に頼ることになります。それでも2本だけ残りましたのでそれを頼りに接着しました。接着にはアクリサンデーを用いました。サポートがなくなったため、きれいな仕上がりになったと思います。

細い柱が2本折れました

組み立て後です。すっきりとした作品に仕上がっています。

総括

屋根の位置合わせのための柱を立てるなど、細かいところまで工夫して作品を仕上げられました。次は別の手法にも挑戦して、新たな作品作りに取り組んでいただきたいです。

サポートの必要性: なし
設計変更: なし

10. さくらこさん(中2)

スケッチ&Fusion360での設計

犬の名札だそうです。デッサン上はシンプルなデザインでした。

CADで入力された際に、時間があるのでいろいろ工夫されたのだと思います。犬のシルエットがかわいいです。履歴を拝見すると、背景が黄色になっている部分はエラーが起こっています。戻って何かを変更したりしているうちに問題が発生したのだと思います。いろいろ試行錯誤して作品を仕上げたのだなと感じました。

Prusaslicerによるスライス

スライス結果は以下の通り。特にデフォルトの設定をいじる必要はありません。作品も小さいので所要時間も23分と短いです。

プリントした作品

設計通りの作品になったのではないでしょうか?シンプルながらフォントにもこだわられたのだと思います。

総括

デッサンから一部変更した作品になりましたが、できることがわかって手が動いたのでしょうか。アートとしてとらえれば、考えながら手を動かしながら進める、というのもよい進め方だと思います。今回使われた機能はFusion360の一部ですので、まだチャレンジする余地がたくさんあります。でまた挑戦してほしいです。

サポートの必要性: なし
設計変更: なし

11. こはるさん(中1)

スケッチ&Fusion360での設計

小物(ピン)いれです。ウサギの形ですが、細かい寸法が決められていませんのでCADで入力しながら決めていきます。(幾何学的に寸法が入れられるのが一番良いですが、有機的な形では無理なことは多いです)
ただし、鼻がどれだけ出っ張っているかなどは初めに決めておけますのでデッサン上で定義しておいた方が良いかなと思いました。

鼻は楕円形(スロット)ですが、耳の形は楕円形ではないのは意図的なのだなと思い尊重しました。回転こそ使っていませんが、スケッチ、押しだし、ミラー、フィレット、面取りと、様々な機能を使われていることがわかります。

一つだけ手を入れたのは、顔の輪郭だけフィレットが入っていなかったところです。顔の輪郭が箱部分にうまくつながっていないのでフィレットしようとするとエラーになります。フィレットや面取りの難しさです。ですので、輪郭を少々丸っこく修正し、きっと作者が意図したであろうシルエットに仕上げました。


Prusaslicerによるスライス

スライス結果は以下の通り。サポートが多少ついていますが2分ですので誤差の範囲です。機能性重視のものではないので、サポートをつかないことを最優先にするのではなくデザインを大切にし、すっきりサポートが外れてくれればそれでよいと思います。

プリントした作品

設計通りの作品になったと思います。ウサギと乳白色のやさしい仕上がりがマッチしていると思います。エラーになっていたところはこちらで手を入れさせていただきましたが、意図された形になっていますでしょうか

総括

初めての挑戦でしたが、思い描いていた形が実現できたのではないでしょうか?最後まで粘り強く手を動かし続けられたと思います。CADにも制約があります。なぜうまくいかないのか考え、試して実現したい形に持っていくのも面白いものです。是非続けてほしいです。

サポートの必要性: あり
設計変更: あり(エラー修正)

12. あやのさん(中1)

スケッチ&Fusion360での設計

ペン立てです。3つの高さの異なる6角形の組み合わせです。壁の厚みまでデッサン上で決められています。底の厚みまで入れられれば完璧でした


CAD入力で苦労されていたのはシェルで穴をあけたときに思った厚みにならなかったところです。3つの6角形を結合させてしまった後で厚み2mm指定シェルすると、中央の厚みが4mmになることを期待する部分も2mmになって段差ができてしまいます。シェルは結合する前にすることを理由を添えて伝えるとその後は特に問題なく設計が進みました。

Prusaslicerによるスライス

スライス結果は以下の通り。サポートはつきません。特にプリントの難易度も高くありません。

プリントした作品

マットピンクの甘さとすっきりとした形の対比が素敵だと思います。こういうシンプルな形は、バランスをとるのが難しいものです。

総括

スケッチして押し出しフィレットをかけるという、一見シンプルですが手順によっては別の結果になってしまう作品です。どうしてそうなってしまうのかという理由を説明すると、それを理解して進められていました。ぜひ次は別の機能も使って新しい作品作りに挑戦してほしいです。

サポートの必要性: なし
設計変更: なし

13. あいらさん(高1)

スケッチ&Fusion360での設計

竹のような筒を重ねる形をデッサンしてこられました。ペン立てだと思います。こういったシンプルなものは細部にこだわる必要がありますがそれがされていたと思います。当日必要な寸法がほぼすべて図面上に記載されていました。これにより、CADは単なる入力手段となります。そして、入力した結果をいろんな方向から見て手を加えることもできるようになります。


手数は少ないです。初めからゴールの形を定めていたからでしょう。口の面取りにはこだわりを持たれていました。
使うものですから、ペンがきちんと入ること、立つこと(軽いと倒れる)、ペンが指でつかみあげられることなどを考慮することが必要です。

Prusaslicerによるスライス

スライス結果は以下の通り。特にスライス条件を見直す必要はありません。口の部分の形にこだわると壁が厚くなり、結果としてプリント時間は約7時間となりました。

プリントした作品

設計通りに出来上がっているのではないでしょうか。使えているとよいなと思います。

総括

シンプルな形ですがこだわりをもって作られていました。今回は、スケッチ、押し出し、面取りの機能での実現ですが、次は別の機能も利用して新しい作品んに挑戦してもらいたいです。

サポートの必要性: なし
設計変更: なし


14. ふうかさん(中1)

スケッチ&Fusion360での設計

テニスラケットのキーホルダーとのこと。初めのデッサンでは手の部分が円筒でしたが、前面にサポートがついてしまうので、背面を平らにすることによりそれを避ける設計変更をお願いしました。イニシャルのFもフォントにこだわって入れています。

フィレットを部位ごとにわけてかけているので手数が増えていますが、丁寧な仕事をされています。特に問題は見つかりませんでした。

Prusaslicerによるスライス

サポートが付きにくい形状に仕上げられましたので、特にスライスにおいて注意を払うところはありませんでした。作品が小さいこともあり、1時間弱でプリントできます。

プリントした作品

プリント結果はこちら。手のFがよいアクセントになっています。

裏側はサポートが付きにくい形状に変更されています。手の部分を円筒ではなく面で切り取る、ガットの部分も底面に接するようにしてあることでサポートが最小限になりました。

総括

細部まで気を配ったデザイン、3Dプリンタの制約を理解のうえ設計された作品だと思います。ぜひ使ってください。

サポートの必要性: なし
設計変更: なし

15. すいうさん(中1)

スケッチ&Fusion360での設計

小物入れでしょうか。耳と目のバランスも良く、かわいらしい作品だとと思います。こういう作品は、耳の形など真円でなかったりするので出来上がりと必ずしも感じが一致しません。

デッサン上はなかった目が付きました。きちんと蓋とボディがかみ合うように設計されています。こういう丸みを持った形状だと、底面付近、てっぺん付近が乱れます。作りたい形なのでしょうがないと思いますが本当はこういった丸みを持った形は避けたほうがよいと思います。

かかりも作られています。上下方向にもクリアランスが欲しかったです

Prusaslicerによるスライス

頭頂部が奇麗になるようにと、可変レイヤ調整をかけています。なので頭頂部はレイヤが細かくなっています。また、図には表れていませんが、できる限り内部のサポートを減らして蓋の内側のざらつき(サポート除去後に残るあと)を減らしたかったので設定を変更しています。

プリントした作品

小さい作品ですが、蓋ともきちんとかみ合うようになっていますし、目に表情があって楽しい作品になりました。頭頂部は積層痕ができる限り目立たないようにしたつもりですがやはり段差が見えます。(写真は光の加減で表面が荒く見えますが、頭頂部以外はきれいにできているはずです)

総括

ご自身の考えが具現化できたのではないでしょうか。今回使われた機能は数少ないですが、Fusion360+3Dプリンタはまだまだ可能性がありますので是非続けてもらえればと思います。

サポートの必要性: あり
設計変更: なし

16. なつみさん(中1)  

スケッチ&Fusion360での設計

小物入れです。こちらの作品も、有機的な形状です。デッサンは情報が足りませんが、大まかな寸法は入っていますのでこれでスタートします。立つように底は水平になっています。あとはどれだけイメージを形にできるかです。

CADに入力したのがこちらです。単なる球形ではなく、上部と下部で形に変化をつけています。

かみ合わせも設計されています。

Prusaslicerによるスライス

スライス結果はこちら。蓋は、耳の下と内側、ボディは底面付近にサポートが付いています。かなりサポートを減らしたつもりですが、それでも結構な量のサポートが付きました。また、特に頭頂部は目につきやすいので積層ピッチを細かくして積層痕が目立たないようにしています。

プリントした作品

プリントした結果がこちらです。この作品は正面と背面の区別がありませんので、好きなほうを正面にして使っていただければと思います。垂直方向に丸みを帯びている形なのでどうしてもサポートの跡が付きやすいですし、積層痕が目立ちやすいです。次回設計されるときにはそのあたりも考慮に入れられるとよいと思います。

総括

回転、押し出し、シェルなど様々な機能を利用し作品を作られました。箱モノは、面のオフセットをかけたりと通常より工程が多くなりますが最後までやり遂げられたと思います。また次の機会に別の形に挑戦してもらえればと思います。

サポートの必要性: あり
設計変更: なし


18. れいかさん(中1)

スケッチ&Fusion360での設計

スマホスタンドです。はじめは目標とする形にあいまいさがありました。どのように使うかを意識しながら目指す形状を考え、デッサンに起こしました。

スマホを実際に傾けて動物の体にもたれかけさせるとのこと。また、置くときの角度も同じ角度を2つにするのではなく、少し立てた感じと寝かせた感じがあったほうが良いねということで、角度を変えています。
周囲はすべてフィレットをかけたりして細かいところまで気を配った設計にしています。

Prusaslicerによるスライス

スライスは標準の条件でかけました。大きな作品ながら3.5時間程度とそれほど時間がかかっていません。やはり外周面積が狭いからでしょうか。

プリントした作品

プリント結果はこちらです。

きれいに仕上がっています。

スマホで写真を撮っているため、撮影用のスマホを用意できませんでした。本をスタンドに立ててみます。こちらは立てたとき。

こちらは少し寝かせたときになります。例えば、お友達と一緒に見ようって時にはあまり立った状態だとみにくいと思います。次回このような使うものを設計するときにはそういった観点でも考えてもらえればと思います。

サポートの必要性: なし
設計変更: なし

はなさん

スケッチ&Fusion360での設計

今回、直前でキャンセルが発生したので急遽参加されました。
過去に一度Fusion360で設計されたことがあります。一度触ってもしばらく3DCADに触れないと忘れてしまいます。さらに高度な作品を実現するためのステップアップを目的とした講座を設けてもよいかと思いました。
作られた作品は、八角形の蓋物です。一つはまっすぐの筒状、もう一つはひねりを入れてあります。ひねりはスイープ機能を用いることにより実現できます。

上級向けの解説をしますと、今回何人かで見受けられたのですが、蓋とボディのクリアランスを取っているのですが、上下のクリアランスがありません。何が発生するかというと、つなぎ目に隙間ができる(ふたが浮く)かもしれないということです。

上下のクリアランスなし
上下のクリアランス追加

もう一つの問題としては、ひねりが加わっていることで壁の厚みが非常に薄いところが出てきています。最小の壁の厚みが0.6mmほどですので、もう少し全体の厚みを増やしておく(内容量が減る、使用するフィラメントが増えるという欠点があります)、もしくはかかりの部分だけ厚みを増やしておく必要がありました。

Prusaslicerによるスライス

スライスは標準の条件で行いました。一つ当り2.5時間要していることになります。

プリントした作品

プリントは本人ご指定のシルクゴールドとしました。設計通りに仕上がっていると思います。高速印刷のためか、角が丸まっているので見ていて痛そうな感じがせず安心して使えます。本来は意図して設計に反映すべきものです。蓋はきっちりはまっていますが、上下方向のクリアランスを設けておけばもっと確実だったと思います。(特に、ひねりのあるほう)

総括

3D CADはしばらくぶりということで、かなり忘れてしまっていたようです。でも、素敵な作品が出来上がりました。
学生さんはFusion360を無料で利用できますので、ぜひ活用いただき、また、3Dプリンタで遊ぶ機会を設けてもらえればと思います。

サポートの必要性: なし
設計変更: なし

あやみさん

スケッチ&Fusion360での設計

あやみさんは通りがかりに見学に立ち寄られた大学生さんです。キャンセルがあり、空席がありましたので参加をお誘いしました。プリンの小物入れで側面に顔がある作品です。飛び入り参加ということで十分なおもてなしができなかったので、本来はソリッドで作成するところをサーフェスを使われてしまったようです。すみません。
それでも、目をエンボスで押し出したりしながら本体と蓋(?)を作られていました。きっと蓋だと思いますので、このままだと簡単に落ちてしまいますのでかかりをつけた蓋もこちらで追加しました。

オリジナルデザイン
かかりを追加した蓋

Prusaslicerによるスライス

ほんの一部サポートが付きました。底面付近は丸い形状ですのでこの部分はサポート痕が汚くなりがちです。それでも、形にこだわるのであれば後処理で頑張ってきれいにしてもらえればと思います。

プリントした作品

かわいらしく出来上がったのではないでしょうか?こちらはご本人のオリジナルです。

蓋仕様にしたものです。

実際に蓋をしたところです。かわいい。

総括

初めてのCAD体験、楽しんでいただけたら何よりです。きっと若い人がサクサクてを動かされるのに驚かれたのではないかと思います。ぜひ継続していただき、どんどんモノづくりにはまってほしいと思います。

サポートの必要性: あり
設計変更: あり(蓋への変更)

反省と全体総括

今回は、4回目の試みとして、前回の反省点を生かして進めることができました。
アンケートを拝見すると、難しかったと答えられる方もいらっしゃいましたが、それは当然だと思います。私もはじめたときには、オンライン講座を約一週間かぶりついて見て、手を動かして勉強しました。でも、できなかったことができるようになるのはうれしい、モノづくりの幅が広がるのが楽しかったことを記憶しています。
今回は導入編でしたが、皆さんが作りたいものを、ほぼ初めての手段である3D CAD+3Dプリントを通して実現されたことになります。モノづくりの楽しさを再認識していただけていたらいいなと思います。
また、アンケートからは工学への興味を持てたという方をお見受けして、目指しているところに少し近づけたかなと思います。講師・アシスタントの方々のサポートと、ホスピタリティ、事務局の方々の完璧な準備とサポートのおかげだと思います。

今回も、良い経験をさせていただきました。自分が普段作らない発想の作品を実現するために、スライス条件の条件を変更したりと勉強させていただきました。
是非継続、発展させたいです。3Dプリンタ、プログラミング、動くものなど発展の方向性は様々です。

ますます、STEAM教育に本腰入れたくなってきました。同志で意欲的な方と、活動を広げていきたいです。
本業は、もちろん!6G・IOWN成功に向けて、動きを加速させていきます!



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