2023年10月24日〜11月5日


10月24日

中学生のころ、県内で1番賢い高校の文化祭に行ったことがある。その高校はクイズ研究会が強いことで有名で、教室を借りて「クイズ王と対決!」みたいなイベントが行われていた。

それに参加するために友達と並んでいたのだが、僕の前の挑戦者グループがかなり痛々しい感じの高校生グループだった。言うなればインテリを冷やかしに来たバカ高校生だ。わざとデカい声で「将来東大行きそうな顔ばっかだな〜!」とか叫んでいて、終始動物園を見に来ているようなテンションだった。

クイズ対決になってもそのグループは、問題が1文字しか呼ばれてないのに思いっ切りボタンを押して「墾田永年私財法!」とかそれっぽいことを言うボケを連発していた。つまらなさの極地に行きすぎてつまらなさのオーロラが見えた。

ただ、クイズ研究会的にはボタンを押す強さが気になったらしく、部員の1人が「あの……このボタン精密機器なんで、乱暴に押すのはやめてください……」とやんわり止めに入っていた。しかしその集団は「フリにしか聞こえんけどそんなんw」などと聞く耳を持たず、1文字目でボタンを爆押しするボケを連発。そのたびに「すみません……ホントに精密機器なんで……」と部員が止めに来て、一生分の「精密機器」を聞いた気がする。


少し前に話題になった『君のクイズ』を読んでその話を思い出した。正直小説自体はあんまりハマらなかったが、なんかこういう記憶のトリガーになっただけで本には価値があると思う。

楽しかった記憶はすぐ忘れるのに、こういう胸糞悪い出来事はいつまでも覚えてしまうのはなぜなのだろう。便器のこびりつき汚れみたいだ。「いいことだけ思い出せ」ってやなせなかしも言ってるのに。


10月25日

ダウ90000蓮見さんの勧めてる「遅映画」かなり共感できた。あらゆるコンテンツって流行ってるときより数ヶ月遅れて見るくらいがちょうどいい。

「リアルタイムでみんなで盛り上がる」って、個人的にはもうそんなに価値のある娯楽じゃない。わざわざ流行りに乗ろうとしなくても、インターネットを見れば日本中の根暗がリアルタイムのニュースに大騒ぎしているではないか。そこにわざわざ喧騒を上塗りしにいく気持ちがわからない。僕は映画や本は好きだけどテレビドラマが好きになれず、これは「実況」の文化が合わないからだと思う。

「感想戦を回避したい」気持ちも痛いほどわかる。なんで感想で戦うんだ。流行の最中にあるものを享受する最大のデメリットは、自分が体験した直後に他人の感想がなだれ込んできてしまう点だ。僕は映画館でエンドロールが終わったあと、他の客が「あの映画〇〇だったね〜」とか言ってる会話を聞きたくなさすぎて誰よりも早く席を立つ。

あと流行ってる映画を見ると、「なんでこれが流行ってるんだろう?」といういりもしない商業的な視点がジャマしてくる。本当に純粋に作品だけを楽しみたいなら、やはりギリギリまでノイズが排除されたタイミングで見た方がいいと思う。

映画じゃないけど、僕は『逃げるは恥だが役に立つ』を去年初めて見た。放送当時(7年前くらい)は社会現象になるほど流行っていた記憶があるが、あのタイミングで見ててもただ「社会現象に巻き込まれた」だけで「ドラマを見た」ことにはならなかったと思う。

いやー、『逃げ恥』ってホントいいドラマですよね。自分は『コンビニ人間』や『正欲』みたいな、社会不適合者が社会不適合であることを理由に歪なマッチングを果たす話が好きだ。もっと具体的に言えば偽装結婚というテーマにかなり惹かれてしまう。ああいう夫婦って、「結婚しないと世間体が保てない風潮」に負けてもいるけど、結婚ごときで保ててしまう「世間体」の概念を嘲笑ってもいる。社会をうっすらバカにしてる設定が好きだ。


10月28日

「抗ガン剤で髪が抜けた友達のために自分もスキンヘッドにする」みたいな動画があるが、「慰める」って、それくらいの覚悟がないとやっちゃダメな行為なんだと思う。あの動画は感動とかではなくて、弱ってる人を中途半端に慰めることで英雄ぶりたい人たちへの忠告なんじゃないか。

落ち込んでいる状態の人に落ち込んでない立場から声をかけるのってどう頑張っても構造的にマウントになる。同じ位置まで落ちないと慰めようもない。

「どしたん? 話聞こか?」的な声かけが下心としか捉えられないのも、「話聞く」程度のことしかしようとしてないからである。たとえば失恋した人に声をかけたいなら、まずは自分もパートナーと縁を切るべきだろう。「彼女がオナラをしてしまいました。あなたならどうする?」みたいな問いの答えは、「自分も屁をこき返す」一択である。無理なら脱糞か失禁してもっと惨めな状態になればいい。

それでも私は言葉で誰かを慰めたい、慰めという形で弱者を利用して、優越感を得たいと思う人がいるかもしれない。そんなときは慰める前に「今から綺麗事言うけど騙されてくれる?」とか頼んだらいいと思う。


11月1日

誹謗中傷をやめさせたいときに「画面の向こうの人は傷ついてるんですよ」とか「言葉は凶器なんですよ」とか言う人、平和ボケにもほどがある。

誹謗中傷してる人は傷つけたくて誹謗中傷しているんじゃないのか。凶器だとわかった上で言葉で刺しにいっているのではないのか。そんな人たちに「傷ついてる人がいるんです!」って、会話になってなさすぎる。やってる側からしたら「ハイそうですけど……」で終わりだろう。

何なら、「死ね」とか気軽に送る人に対して「本当に死んだらどうするんですか!」と言うのも無意味だと思う。本当に死んでも気にしない相手にしかそんなリプ送らないだろうし、多少食らったとしてもツイ消しして2日くらい落ち込んだらまた鼻クソとかほじってるんじゃないか。

やっぱりこういう人たちは無断で晒しものにするくらいの対応が1番正しいと思う。この動画本当にすごい。芸人が「炎上してめちゃくちゃDM来たんすよ!笑」とか簡単にオトすパターンって結構あるけど、その裏のグロテスクな部分を全部出しちゃっている。

しかし普段から誹謗中傷を送ってるような人って、脳の作りが常人と違うのではないかと思う。語弊を恐れずに言えば才能がある。今僕が「とにかく目の前の人を言葉で傷つけてください」と指示されても「死ね」って連呼するくらいしか手が出ないが、"一回「死ね」と送ってその時間差で「自殺しましたか?」とジワジワ送り続ける"って、何食ったら思いつくんだ。で、なんでそんなに時間をかけれるんだ。


そういう意味でこのコントって「いじめ」とか「加害」の本質的なところを突いてると思う。人を傷つけるのもまた人の心を動かす行為であり、ある程度センスや努力を要するだろう。いじめっ子の方がなんだかんだ人生うまくいくのはこういうところに起因してそうだ。


11月2日

便宜上「お笑いが好きです」とかよく言うけど、とにかく世界の見方が変わるものならなんでもいいのかもしれない。自分はもう、人生で起こるイベントは全部起こり切っててあとは繰り返しか下位互換しかないと思ってるので、捉え方次第でまだ遊びしろはあると提示してくれるものが好きだ。誰しも当たり前だと思ってる概念とか言葉を再解釈して、新しい視点があるとわかっときの閃き。とにかくこの瞬間に出会いたい。

たとえばホラー映画の、何にでも恐怖を見出そうとする姿勢とか最高だ。「人体」という一つのフォーマットをいじくり回すゴア描写大喜利なんてグロいより先に感動が来てしまう。だって「人体」って、人類誕生してから何百万年も同じなんですよ。なのにまだ新しい壊し方が思いつけるって何なんだ。ニッポンの社長の2本目見たときも思ったけど。


ホラーで言うと『カラー・アウト・オブ・スペース』が最近見た中ではよかった。映画内でアルパカの化け物が出てくるのだが、このビジュアルがすごい。複数匹のアルパカが合体してぐちゃぐちゃになって、首がいっぱいあるヤマタノオロチみたいになっているのである。これマジ、ヤバすぎ。「アルパカって上半分ヘビみたいだな」って気づかないとこんなの作れないですからね。アルパカって上半分ヘビみたいって思ったことありますか?

またお笑いの話に戻るが、最近凄すぎると思ったネタです(1個目のやつは空前メテオさんのネタ)。

僕は「猫」「ちんちん」「帰りたい」とか聞いたところで、「猫ですか」「ちんちんですか」「帰りたいですか」としか思えないが、まだこんな気づきが眠ってるのだ。めちゃくちゃ大袈裟に言えば、じゃあ生きてる意味あるかと思う。


11月5日

以下noteの8月5日の部分でも書いたのですが、今年友達とM-1に出て、さらにその活動で出会った方との繋がりでたまにお笑いライブに出させてもらっています。

M-1は1回戦でありえないくらいスベって落ちたのですが、その後「社会人漫才王」という大会にエントリーしたところ準決勝に進出しました(来てくださった方本当にありがとうございます)。


結果、決勝戦には進出できずでした。しかし! 45組中上位30組に入れたコンビは敗者復活戦に挑めるという女神みたいな制度のおかげで首の皮が一枚繋がっています。

準決勝進出者は普段のライブでご一緒する方が多くレベルの高さも知ってるので、敗者復活に進めただけでも十分すぎます。あとキャパ250くらいの激デカ劇場でやるらしいので今から緊張しています。

結果は最高なものではないのですが、この大会(や調整のライブ)を通して面白い方にたくさん出会えたので正直なんの悔いもないです。多分完全に落ちてても悔しくなかったと思います。それほどいい経験をしました。社会人になったら友達が減る、みたいなことをよく言われるのですが、僕は指数関数的に増えています。今までも会社がつまらないとか毎日刺激がないとか色々思ってたけど、単純に面白さを競う場所に飛び込めばよかったんですね……。

ダラダラ書きましたが結論、よかったら敗者復活戦来てください! 僕らがつまんなくても、厳しい戦いを勝ち抜いた20組が出るので誰かは面白いはずです!




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