2023年11月5日〜11月15日


11月5日

美人に「化粧頑張ったんですね」と言うと完全に失礼になってしまう。もちろん「地顔が可愛くないのをうまく隠せてますね」みたいな意味を含んでしまうからである。

しかし、東大に受かった人に向かって「勉強頑張ったんですね」と言ってもそんなに角は立たない。「地頭は良くないのをうまく隠せてますね」とも捉えられはするが、そこまで行くのは考えすぎな気がする。人間のあらゆる評価のうち、容姿だけ「天賦の才でなければならない」という強迫観念がまとわりついているのである。頭を良くするために予備校に行くのはよくて、顔を良くするために整形するのはダメなのはなぜなのか。

一方で、学力を天賦の才だけで片付けるのは失礼に当たると思う。東大の人にすぐ「天才ですね!」とか言うのは安易すぎるだろう。その人が受験のためにしてきた努力を全部無視しているからだ。

でも、美人に向かってひたすら「可愛いですね!」と言うのが失礼だとは思えない。東大生理論で考えれば、美人だって何らかの努力をして美貌を保っているはずで、それを無視した発言なのに……。

東京にはいたるところにとんでもない美人が出没するが、そんな人を見てもまず「努力の人だ」と感じてしまう。その突出した外側を演出できる内側がすごい。自分なんて出かける前の準備は10秒くらいで終わらせるのに、多分何十分も、いや日頃の肌ケア的なものを含めば何時間もかけて顔面を仕上げてるのだろう。それを一言で表すと「化粧頑張ったんですね」なのだが、これを口に出してはいけないことくらいは分かる。容姿に触れるのってハイリスクローリターンだ。もう魂(ソウル)にしか触れない。


11月6日

社会人になって発見したことは多々あるけど、最近は「学校」もしょせん会社だったんだよなと気づいた。

教育関係の仕事をしているわけではないので詳細は知らないが、クラス替えとか、運の要素なんか全然なくてめちゃくちゃ会議して考えてたんだろうな。ピアノができる子を各クラスに1人、とかのレベルではなく、こことここが仲良いとか、あの担任とあの子は相性が悪いとかの要素も考慮してるに違いない。乱暴に言えば陰キャと陽キャのバランスだって絶対忖度してるだろう。教師は顧客である保護者を満足させる必要があるのに、テキトーに仕事するわけないのだ。

子供からすれば先生は全員偉い人だったけど、先生の中にも出世の序列があったんだろうとも思う。自分はなぜか若い担任になることが多かったが、あの人たちもあの人たちで、上司となる先生の目線とか気にしながら頑張っていたのだろう。なんか、みんな頑張ってるんですよね。頑張ってない大人とかいないんじゃないですか? 泣きそうになってきました。危な。生きてるだけで偉いとか言いそうになった。


11月10日

個人的には好きなのですが声を大にして勧めづらい映画を紹介します。おそらく全部サブスク配信が終わっており、TSUTAYAのレンタルとかでしか見る方法ない気がします。そして自分でも確認ができないので内容めっちゃうろ覚えです。ブログで映画紹介する人がうろ覚えなの面白いと思ったので、ネットでもそんなに調べないまま公開しています。

①THE ROOM 閉ざされた森

B級映画あるあるですが、ポスターは内容と全然関係ないです。こんな真空パックプレイみたいなシーンないはず。

あらすじはなんか、昔金持ちだったらしい3人家族がいるんですよね。でもお母さんが要介護レベルで体壊して落ちぶれちゃって、デカい豪邸を売らなきゃいけなくなる展開だったと思います。

その商談をしにお父さんが外出してしまい、何日間か子供とお母さんの2人で留守番するんですけど、子供がまあ20歳くらいで、おそらく知的な障がいがあるんです。この子に母親の介護ができるのか!? みたいな話でした。

父親はちゃんとヘルパーとかを手配してるんですが、子供としては「ぼくがお母さんを助けるんだ!」みたいな正義感があって、ヘルパーを追い返しちゃうんです。家中のカギ閉めて入れなくしたんだっけな……。

その子はもう全部お母さんに褒めてほしいとか、認めてほしいみたいな動機でいっぱい頑張るんですけど、介護ってそんな甘くないんでことごとく失敗するんですよね。起こりうる悲劇は全部起こります。このあらゆる善意が裏目に出る感じ、すっごいイヤでした。殺人犯が出てきて女子供いっぱいチェーンソー血血血みたいなホラーより全然イヤでした。褒めてほしい、信頼されたいという欲望って絶対消えないものなんでしょうが、普通に毒なんだなと思いました。


②鏡の中の戦争

ドキュメンタリーです。
IQがとんでもなく高くてロシアかどっかの軍にスカウトされて戦争でめちゃくちゃ人を殺した、と自称するおじさんがずっとイキってるんですが、絶対嘘なんですよね。強烈な虚言癖の人を1時間くらいずっと泳がせる性格最悪映画でした。

取材と称してウソ武勇伝を引き出して、極限まで図に乗らせて、1番気持ちよさそうなところでチクっと矛盾点を刺す。主人公はあわててウソを塗り直して、なんとか辻褄を合わそうとする。そのさまやその間ずっと出てる鼻毛とかをあざ笑う。これの繰り返しでした。

このレベルの虚言癖って余裕で病気なので何度も「もうやめてやれよ……」と思って見てましたが、顔はずっと笑ってた気がします。人によっては1ミリも笑えないでしょう。

誰しも、「善人をやりに行きたい瞬間」ってあると思います。あってください。お年寄りに席を譲るとか絶対必要な善とは違って、不必要に周りに善意をアピールしたくなる瞬間です。たとえば、芸能人の不祥事のニュースを引用して、正義感あふれるコメントをしたくなったときです。そんな折、僕はいつもこの映画を思い出します。どこまで善人ぶろうが、僕はこれで笑える側の人間なんだよなーと思います。あとホリエモンロケットの失敗動画とか、広末涼子のラブレターとかも思い出します。僕はあれを面白がれるタイプなので、正義を語る資格がない。こうして余計なツイートをせずに済むのです。

③最高殊勲夫人

タイトルとポスターからしてめっちゃ最高ですよね。内容もめっちゃ最高です。1960年とかの映画ですが、色褪せることのない圧倒的なハピネスパワー。こんなハイテンションなラブコメの前では全てが無力なんじゃないでしょうか。当時の風俗とかよくわからないですが、恋愛結婚解禁したてみたいな感じなんですかね?  「恋愛は娯楽だから」みたいなスカした令和の価値観を内包している僕でも、人生かけて恋愛ではしゃぐのって楽しいんだろうなと思えました。

セリフもなんかいちいち無敵で結構覚えてます。「わたしヒップが90センチあるのよ!結婚して!」「この世の中、キチガイだけが成功するのよ」「彼女がレモンスカッシュなら、あの娘はハイボールのダブルかなっ★ コッ(舌を鳴らす)」みたいなセリフがあったはずです。舌は鳴らしてなかったかもです。

こんな最高の映画を何で勧めづらいかというと、古いからです。僕はおすすめの映画を聞いて古い映画を出されると「いや古いんかい」と思うので、他人にもしないようにしています。


11月12日

ギリギリでツイートしなかった発言一覧。

・いわゆる「チー牛顔」を形容したくて、同時にそんなつまらないミームを口に出すのは癪だったから「秋葉原通り魔顔」って言っちゃったけどもっとダメだった

・露出狂って自分のこと変態って分かってそうだけど、駅でイチャついてるカップルってそのさまが美しいとでも思ってそうだからより醜いですよね

・コント見てたら銃がモデルガンとかではなくめちゃくちゃ手作りの段ボール製で、ちゃんとしたの用意しろよw と思ったけど日本なら後者の方がリアルか

・中学生のころ、かなり太ってる先生に「ドドンパ」ってあだ名がついてて、デブとかブタじゃないところに、本気でこいつを笑いものにしてやろうというクリエイティビティを感じてた

・「人が死ぬ系のコンテンツとか無理で、恋愛リアリティショーばっか見ちゃうんですよ」と言ってる人がいて矛盾してた

・ダーツめっちゃ上手い人なら、飛んでるチョウチョに虫ピン投げて標本作れるんじゃないかと思ってるんだけど、正月の鉄腕DASHとかでやらないかな

・文章はすごく面白いけど質問箱をやってるからフォローしてない人結構いる

・「許して忘れろ」って、許すか許さないかはお前が決めることじゃないし、忘れるか忘れないかは自分でどうにかできることじゃないし、最悪のアドバイスだな

11月14日


「マジで急に合コンセッティングしたのに、来てくれてありがとね! えーじゃあ俺から自己紹介行きまーす! ユウヤっていいます! 昼は〜、道玄坂の緑の会社で働いてますっ!

あっ休みの日ね! 休みの日は〜、海外サッカーとか好きで見てます! あとはお酒めっちゃ好きなんで! 今日もいっぱい飲もうと思います! よろしくお願いしまーす!」


「イェーイ! じゃあ男性陣からまとめていこうか?  俺ケンジっていいます! 広告代理店勤務です! あっ汐留じゃなくて、赤坂のほうね! 笑

なんかみんな、寝る前に『ああ、なんかこのまま2度と目覚めなくてもいいや』って思うことないですか? もう俺15年くらいこの感覚なんだよね。毎晩。で、朝起きるたび『目覚めなくてもよかったんだけどな、仕方ないから生きるか』って思ってて。水責めってあるでしょ? あれに似てるのかなあ。毎晩洗面器に顔沈められて、毎朝髪の毛つかんで引き上げられるみたいな。もうされるがまま。こんなに俺が無力なら、いっそ沈みっぱなしでいいのに……。でもこれはね、ネガティブな感情じゃないのよ。人生がいつ終わっても悔いがなくて。まあ生きててもいいんだけど、痛くないんだったら、死んでもOK。本当に不安な時って眠れないし、寝れてるだけ健康だから別に鬱とかじゃないんだよな。まあ人生に悔いがないっていうより、悔いがあってもいいやって諦めてる、が正しいかな。何かしら予定があったら、明日楽しみだなーとかもちろん思うよ。でもやっぱり根底では、まあ、今日の眠りが永遠でもいいけどね、って片隅にね、あるんだよ。でもここにいる全員がそうなわけじゃないよね。多分、明確に生きる理由とか、何かの責任がある人はそんなの考えない。ただ、自分は起きる理由がないんだよね。生きる理由って言うと大袈裟だけど、起きる理由ね。なんかねえ、この世界はでっかいクリーチャーが人類を監禁しているテラリウムなんじゃないかなあって考えるんだよね。80億人の人類が幸せとかいう安全地帯を求めてフラフラしてる様子を、ありもしないゴールに向かってさまよう愚かな四肢動物だぜって笑ってたりするんじゃない? で、そのクリーチャーが生きている意味も特にないんだよ。『世界』ってのも、人類が考えた概念装置に過ぎないんだよね。森羅万象には意味がないって、この事実にだけ唯一意味があるんだよ。つまりもう、俺が何食って何飲んで何考えても絶対無駄ってこと。だから今日はいっぱい飲むぞ!イェーイ!」


「イェーイ! じゃあ次は俺! リュウセイっていいます! 音楽事務所の〜、某S社で働いてます! でも、夜はMかも!笑」



11月15日

冬って体調がいい日が1日もない。特に最近は低気圧で毎日頭痛がする。

『オーディション』という映画があって、主人公の殺人鬼が「痛いと自分がどんな形をしてるかよくわかるでしょ?」と言っていたのを思い出す。普段は脳のある場所なんて一切意識してないが、頭痛がするときだけは脳がその居場所を高らかに主張してくる。膵臓がどこにあるかとか検討もつかないけど、たぶん膵炎になったらハッキリするのだろう。

痛みとか体調不良は絶対に人と共有できない。死がこの世で最も個人的なことなら、体調不良はこの世で2番目に個人的なことだと思う。3位は口座番号とか。

「気分が悪くなってる間ってね、なんにも考えられなくなるの。すごく利己的な自分に気付くのよ。優しさとか思いやりとか、まったく役に立たないのよ。世界情勢がどうなるとか、環境保護が叫ばれてるとか、そういうことが、意味をなさなくなっちゃう。あー、気持悪い、吐きそう。それが自分のすべてになっちゃうの。

—『ぼくは勉強ができない (文春文庫)』山田詠美著
https://a.co/azajlMK


なので四季の中で冬の自分が最も自己中心的である。最近はほとんど出社せず半分寝ながら働いている。「人の役に立ちたい」とか、普段も思ってないけど今は格別に思わない。

そういえば『オーディション』も好きなのに勧めづらい映画だ。体目当てで新人女優オーディションをしている中年男性が、応募者の中に混じっていたサイコパスにギタギタにされる話です。バチェラーが苦手な人は楽しめる気がします。ただめちゃグロいです。

あと特異体質なのか、こんなときでもM-1 3回戦動画はすべて見れました。

空前メテオ
鬼としみちゃむ
盆と正月
満丸
明るい炎
ゼスト
ナユタ
ジグザグジギー
家族チャーハン
無尽蔵
ロングコートダディ
軟水
十九人
マリオネットブラザーズ
10億円
豆鉄砲
プノまろ
オズワルド
素敵じゃないか
キュウ

好きでした。

今年、ジェンダー問題に切り込む風のネタやたら多くないですか? わざと女性を下げる発言をして「今の時代アウトだから!」とかツッコむくだりもよく見た。審査員みんな社会学者でジェンダーネタの賞レースが開けると思いました。








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