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『恐れながら 社長 マーケティングの本当の話をします。』読了。マーケティング部だけではマーケティングはできない

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『恐れながら 社長 マーケティングの本当の話をします。』という本を読んだ。

今の組織における部分最適されすぎた(=バラバラに機能分散されすぎている)マーケティングの問題を、組織の観点からも指摘している内容だった。

そして、その文脈の中でカスタマーサクセスやSDGs、果ては現代の広告代理店の闇な部分の話まで触れられており、トピックの幅の広さから視座をあげられる とても興味深い内容だった。

目次の第一章のタイトルがいきなり衝撃的で、「マーケティング部をなくしましょう」という提言から始まっている(!)

これは、中を読んでいけば納得できる内容だし、マーケティング部をなくして、そこからどうするのかまでしっかり代案が出されている。(で、腹落ちする)

また、この本の中では「全体最適」という言葉が頻出するが、昨今のマーケターってなんぞや問題に近い視点だった。

マーケティングの定義と、一般的なマーケティング部の乖離

この本で書かれているマーケティングの定義は、

「生活者の中に商品やサービスへの価値を生み出すために、商品開発から販売現場まで設計・管理すること」

とされている。

また、著者の小霜和也さんは広告代理店ご出身で広告クリエイティブにも明るい方なので、昨今のデジマ・オンリー思考ではなく、制作現場の観点からも広く本質的なマーケティングの話を展開してくださっている。

で、本書で書かれている、「マーケティング部をなくす」ということの本質は、「マーケティングの4P」すべてを網羅するのは1つの部門(マーケティング部)では無理なので、従来の広告や販促を担う部門という機能を持つ部署なのであれば、「マーケティング部」ではなく、「広告宣伝部」という名称にした方が実態に近づくのでは?という意図と読み取った。

実際、昨今のマーケティング部は、(特にB2Bやベンチャー界隈)では、「いかにデジマを駆使して月次KPIを達成し、CVやMQLを獲得するか」という近視眼的なミッションが一般的になっているように感じる。

しかし、上記のマーケティング定義のように、マーケティングには商品開発価格戦略、や販売経路も含まれるので、必ずしも月次でなんかしらの効果(CVやMQL)が出るものではない。

そして、この4Pに基づいたマーケティングを俯瞰的に見ることができるのは、企業のTOP(社長)しかいないでしょ。という結論になっている。

全体最適とジグソーパズル

ここで、全体最適と個別最適という概念にも触れておきたい。この個別最適と全体最適という考えに関しては、私見ですが、

全体最適を適度に分解すれば個別最適は生れるが、個別最適を寄せ集めても全体最適にはならない。

という持論を持っている。

これはジグソーパズルで考えるとわかりやすい。
ジグソーパズルを生産する工程をイメージできるだろうか?簡単に記すと、
・完成形の画を印刷する
・台紙、中芯(厚紙)、表面(完成形の画)を合紙する
・パズルのピースをかたどった抜き型で一気に半抜き加工する
といった流れになるだろう。こうすることで、無駄な隙間や歪みのないきれいなジグソーパするが出来上がる。

一方で、パズルの一ピースを一個ずつ作っていく作り方ではどうなるだろうか?
・全部で何個のピースが必要なのか?
・最終的にきれいな一枚絵になるのだろうか?
・歯抜けにならないだろうか?
なんていう不安やモヤモヤを抱えながら、それでも自分の担当の1ピースを作って「できたっ!」って言って、完成した気になっているのではないだろうか?(で、結局寄せ集めてみたら歪みまくって完成しないジグソーパズルが出来上がる)

このように、全体図を描いてから(全体最適)、個別に分解していく(個別指摘)をすれば、きれいなパズルが出来上がるのに、企業においては部門ごとにバラバラな目標やKPIを設定し、1ピースだけ作ってあとは良しなに ってないだろうか?

Managerial Marketingの観点ではこの全体最適から考えざるを得ず、本書が指摘しているようにマーケティング体質の企業になるにはTOPが全体図を描き、それに合わせた最適なマーケティング観点の組織づくりやミッション・目標なんかが必要になるということだと思う。

マーケティング体質企業のマーケとカスタマーサクセス

本書では、いわゆるマーケだけではなく、企業の主要機能としてカスタマーサクセスにも触れられている。

本書ではカスタマーサクセスの重要な機能として、

顧客が潜在的に抱えているサクセスに気づかせてあげるということです。顕在化した課題については、顧客は自分でググったりしてすぐに解決してしまいます。

とある。
これは自分のカスタマーサクセス像に似た考え方だと思った。つまり、カスタマーサクセスに求められるのは、課題の抽出・発見であり、既存顧客の課題解決はセルフサービスであるべき(代走ではなく伴走という考え方)といえる。

また、このマーケティング文脈の書籍の中でカスタマーサクセスに触れられている理由もしっかりと考えるべきで、ここでもマーケティングの4Pが重要になる。

従来型のマーケティング4Pにおいて、Prductは製品/サービスを指していたが、カスタマーサクセス文脈においては、Prductは「(製品/サービス“も”用いた成功」として扱われるべきであるということだろう。

そもそも、昨今のマーケティング部って、既存顧客無視しすぎ問題があって、(“新規”の商談創出はがんばるけど、既存顧客との商談創出は他人事になっている感ある)それが主流なのであれば、「マーケティング観点を持ったカスタマーサクセス」とか、「カスタマーサクセス観点を持ったマーケティング」とかという、機能ではなく部門定義によって解決できるのではないかと思った。

まとめ、、、必要なのは全体最適から考えるマーケテイング

いろいろ気づきや共感する部分が多く、当然全部は書ききれないのだが、改めてマーケティングの広さと深さに触れられる本だった。しかし、この理想のマーケティング体質の企業になるには、TOPの覚悟が必要。
なんとなく、この本は社長が手に取る本というよりは、今のやり方にモヤモヤしている課長クラスの人が匿名で社長の机に置いておくための本のような気がした。(社長、気づいて!というメッセージ)

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