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コンテクストプランニングとコミュニケーションプランニング

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昔読んだ気もするが、このタイミングで改めて読み直してみた。
何より驚きなのが、この本が書かれたのが2012年であるということ。その時点での「次世代」に、8年後の2020年で全く追いついていないというのが実情ではないだろうか。

いや、むしろ、当時よりもAdTechやMarTechの様々なツールやサービスが登場しており、マーケティングに関連する役割や機能が高度に細分化・効率化されたことにより、このような「プランニング」に携わっている“マーケター”が減ってきているのではないだろうか?という懸念もある。

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chiefmartec.comが出している『マーケティングテクノロジーランドスケープ』によると、2012年から2020年の間に、いわゆるマーテクサービス/ツールはなんと20倍以上にも膨れ上がっている。
もちろん、この期間にも様々なプロダクトは生れては消えを繰り返しているの。

また、特にB2Bマーケティング界隈では、TheModelのような体系化されたやり方や、“各社共通月次KPI"が跋扈していることもあり、ますますプランニングという領域は蚊帳の外になっているのではないだろうか。

こんなタイミングだからこそ、なおさらこの本に書かれているプランニングの要諦は改めてつかんでおきたいと思った。

『コミュニケーションプランニング』その前に

コミュニケーションプランニングというと、どうしても広告代理店の専門領域のように思われがちだが、広告主や、(あまり代理店と接点がない)B2Bマーケ従事者にとってもこのプランニングは必要になる。

従来のステレオタイプな「コミュニケーションプランニング」というと、どうしてもメディアの選定やCMクリエイティブから入ってしまいがちだが、この進め方をしてしまうと「手段」が「目的」にすり替わってしまい、消費者(顧客)と企業(サービス)の本質的な会話は生れない。
そもそも、プランナーがクリエイティブやメディアから入ってしまうと、そのプランナーの頭の中にないというだけで、可能性のある手法が存在しないということになってしまう。

では、どうすれば「コミュニケーションプランニング」が成り立つのか?そのヒントは、マーケティングの基礎中の基礎(なのに置いてけぼりになりがち)の「顧客ニーズ」に沿った「コンテクスト」にある。

コンテクストって何?

コンテクストとは、その時々での文脈や背景ととらえる。
このコンテクストが不在、もしくは不明瞭なままだと、企業やサービスが勝手にコンテクストを作り出してしまい、あたかも観客不在の紙芝居のようなマーケティング活動になってしまうことだろう。

よっぽどイノベーティブで世の中に存在しなかったカテゴリーでもない限り、従来サービスや競合サービスなどの類似サービスにおいても価値交換(売り買い)が存在していたはず。

その価値交換において、どのようなコンテクストでそのサービスと顧客が会話していたのかを知る必要がある。

また、新たな会話を作りだすことで、従来とは異なるコンテクストを開発したり、気づきを与えることも可能となる。

※このコンテクストの解釈や開発という観点は、個人的にはジョブ理論にも通じるものがあると思っており、その際や共通点をこれから見つけに行きたいと思っている。

コンテクストをもとにした企業と顧客の会話

本書の中のこんな一説がある。

プランニングにおいて「ある商品を世の中に“埋め込む”ためにはどうすれば いいか?」という視点が重要であると。
これはどういう意味なのだろうか?

これの理解のためには、コンテクストの理解が必要であり、そのためには企業(サービス)と消費者の会話が必要なのだとおもう。

従来のマーケティングやコミュニケーションは、企業側が「伝える」人であり、消費者は「受け取る」人であると決めつけられていた。しかし昨今ではSNSをはじめとして、消費者側からいくらでも「伝える」ことが可能となっており、企業と消費者間の伝える・受け取るの関係式が双方向になっている。
となると、企業と消費者が会話をするためには、企業が一方的にメッセージを出すのではなく、企業が消費者のいるところに出向くというスタンスも必要になる。ここでようやく、会話が生まれるのだと理解した。

これは、コミュニケ―ションプランニングだけではなく、例えばSEOについても重要な考え方であると思った。
これまでのSEOは、企業サイトが検索されたいキーワードで上位表示させておくことで、自社サイトへの集客を強めようという意図が強かった。
しかし、昨今のSEOの主流(SEO3.0)では、SERPSに限らずWeb上でのプレゼンスすべてを最適化し、消費者がいる場所すべてに顔を出していくという発想が必要になっている。(僕が大好きなこちらのnote×2を貼っておきます。

SEOのその先+これが本当のコンテンツマーケティング。WPO = Web Presence Optimization という考え方について

BtoBサイトのSEOはこう変化した!「点」のSEOと「面」のSEOというお話

このように、企業を消費者の会話の中に存在する文脈(コンテクスト)にそのサービスが自然に存在する状態にすることが、世の中に“埋め込まれた”状態といえるのだろう。

コンテクストを解釈することと、コンテクストを開発することによって、この“埋め込まれた”状態を作ることこそが、「コンテクスストプランニング」といえそうだ。

コンテクストプランニング 4つのフレーム

では、そのコンテクストを解釈したり開発すするためにはどのような思考が必要なのだろうか?

その答えも本書に具体的に記載されている。『4つのコンテクスト』というフレームがある。

・消費者文脈 = Consumer Con-text

・パブリック文脈 = Public Context

・所属産業文脈 = Industry Context

・ブランド文脈 = Brand Context

これら4つを(できれば)同時に満たす文脈があれば、そこからストーリーが生まれ、そのストリーを伝えるためのコミュニケーションチャネルにようやくたどり着ける。(そしてその先には当然、コンテンツが必要)

マーケティングに必要なコンテクストプランニングとコミュニケーションプランニング

プランニングを始めるためには、いわゆる与件といわれる、その時々のコンテクストがある。しかし、やはりこのコンテクストというものは必ずしも万人が言語化できるような代物ではない。
そこで、「オーダー」「オファー」という二つの与件のレイヤーが出てくる。

・オーダー:事実や実績によって比較的固まっている与件のこと

・オファー:なんとなくの方向性や希望はあるものの、固まりきっていない与件のこと

実際に自社のマーケティングやクライアントのマーケティング支援においても、このオーダーとオファーが混在しているケースは実に多い。また、マーケティングという言葉の概念の幅も人それぞれなので、マーケティングを広くとらえている人にとっては、オファーだらけになることもあるだろう。

コンテクストプランニングは、このオファーをオーダーに変換していく作業というとらえ方もできる。
前述の4つのコンテクストをベースに、オファー内容を明らかにし、それを実現するためにコミュニケーションを設計していくという方法になるだろう。

さて、昨今のマーケティングにおいて、ここまでの思考を経て施策を実行できている人はどの程度いるのだろうか?
月次KPIに追われて、当月MQL数、CV数、新規コンテンツ制作数とかに全集中してしまってはいないだろうか?

自分が日々従事しているマーケティング活動を見直して、“マーケティング・オペレーター”になってしまっていないかを改めて確認してみてはいかがでしょうか?
その際に、この『次世代コミュニケーションプランニング』という本が一助になることは間違いないだろう。(※帯には広告・PR人向けっぽいコピーがあるが、マーケティングにかかわる人すべてが対象といえる)

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