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焼き台の特性

自分が関西の焼鳥有名店を二日間食べ歩きをしたのが6年以上も前。
その時に驚いたのが焼き台の違いです。

焼き台が違うというよりも、焼き台の上に乗るものが違います。
東京の多くの焼鳥店が鉄の棒を2本焼き台に乗せてその橋渡しに乗せて焼鳥を焼きます。

こんな感じです。
この鉄の棒は鉄橋と呼ばれたり、鉄芯と呼ばれたり店によって呼び名は様々ですが、正式には「鉄久」らしいです。。。

しかし関西の多くのお店はこの鉄久ではありませんでした。
下の写真のような格子状のものの上で焼鳥を焼いているのです。

それか、このように傾斜のついたもの。

安定感は抜群でしょうね。
でも中の炭を動かし辛そうです。。

何で東と西で焼鳥文化がこのように違う道を歩んだのかは僕には分かりません。

6年前の自分は「この方が早く焼けるからこうしているんだな。大阪人はせっかちなんだな。」ぐらいにしか思いませんでした。確かに熱伝導は確実にこちらの方が早いでしょう。

しかし今、冷静になって思う事はこの焼き方で育たなくて自分は良かったなという事です。
串打ちの重要性を見失っていたかもしれないからです。

関東流の焼き方では串打ちのバランスが悪いと焼いててクルクルと回ってしまい焼きづらいです。だからしっかりと重心を捉えて串を打たねばなりません。

クルクル回らないように重心を捉える。
そう思って誰もが串打ちを始めるのですが、本当に大切なのはそこでは無いのです。

バランスが整っていないと狙った火入れが出来ないのです。

自分は関西の焼鳥店を何十軒も食べ歩いてませんので、否定的な事を言っている訳ではありません。
串打ちが汚く感じたお店もありませんでしたし、事実、美味しかったですから。
特に鶏肉自体の美味しさは全体的に負けている気がしました。
養鶏文化は西の方が優れていると感じました。

ただ焼鳥をやる上での最低限のスタートラインとしてクルクル回らない串を打たないといけないという条件を突き付けられている関東流の方が修行する上では良いのかなと思います。

そして現代の焼鳥の主流ともなった、肉を皮で巻くスタイルの串。

この形が主流になると、もはや関東流の焼き方じゃないと美味しく仕上げるのは困難です。
例えば網の上で焼いたとしましょう。

手前や先の部分の皮目をバリッと焼く事が構造上困難なのです。

自分は皮を巻いた串は鉄久へ挟み込むように置きます。

その方がフライパンへ皮目を押し付けて焼くようにバリッと仕上がります。
逆にネタによっては、笹身やレバーなどのデリケートな部位は鉄久へ肉が触れないように置きます。ほんの少し離すのです。このように。

これはしっかり焼けた部分があるほうが好みだと言う方もいらっしゃるので答えは分かりません。
しかし笹身では気にならなくても、レバーだとしっかり焼けた部分が苦くなります。

そういう意味で関西流の格子状の上で焼くと笹身やレバーは火入れが強い部分が焼き跡として残ってしまいます。

それと格子状はそこまででは無いでしょうが、焼鳥のような小さなポーションの串を網の上で焼くと、コロコロと回しているうちに肉へ振った塩が剥がれてしまい味が安定しません。

自分の御近所にもとても美味しくてリーズナブルな焼鳥店が有るのですが、そちらはネタが大きいせいか網の上で焼く串も多数。ですので塩加減は結構ブレていらっしゃいます。

格子状や網の上で焼く事を否定している訳では有りません。
その特性に合わせた串のデザインをされているのだろうか?と疑問に思ったのです。

そして何より自分は鉄久の特性を活かし切れているのか?

まだまだ焼鳥は先の世界がある気がしています。

季節によって食材が変わる和食とも違う。
ガストロノミーのように進化するフレンチとも違う。

「焼鳥」という道の先はまた違った形で存在するはずです。

串打ち、塩振り、焼き。
その全てをリンクさせる事。
「焼き一生」と言われる世界ですが、「串打ち一生、塩振り一生、焼き一生」なのかなと自分は思います。
全て大切な事です。

焼鳥はあまり深く考えながら食す必要は無いと思いますが、こんな視点もあるのだと少しでも感じて頂けたのなら幸いです。

※「関西流」や「関東流」などの言葉を勝手に使わせて頂きましたが、その焼き方が主流というだけであって関西でも鉄久を使うお店は沢山あります。その逆もしかりです。

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