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私たちが、利益率にこだわるべき理由

今、少々事業成長に時間がかかってもいいから、
半年後の大成長のために、
徹底して今のメンバーに教育をしている。

私がどういう理屈でこれは良いこれはダメと言ってるのか、
同じ観点でディスカッションするためである。

よく「経営者目線」と言う言葉が使われるけど、
私自身その言葉がピンと来てなくて、その言葉は使わない。
(社員に経営者目線を持てと言うと、
その言葉自身に勘違いが生まれると思うし、
経営者自身が社員に向かって経営者目線を持てと言ったら、
私は残酷だと思う)

ただ、持って欲しい観点について共有すれば、
少なくとも誤解が減り、コミュニケーションが円滑になり、
目標達成がより現実的になり、
社内全員の努力が報われやすくなる。

店舗全体の目標で言うと、売上ベースで目標を決めているのだが
(商品によって、利益率がバラバラなので)

商品別でディスカッションした場合には、徹底して利益率・額の話をする。

・私がどうやって商品の価格を決めているか
・なぜ限界利益率にこだわるのか

ざっくりまとめると、
利益率の低い商品を努力して売っても、
社員の頑張りは報われない。
全員でハッピーになりたかったら、ちゃんと利益を取らないといけない。

そう言う話。

例を1個上げると、
自社ブランド商品は、
小売価格で最低7割の限界利益率を取るようにしている。

が、蜂蜜だけは、例外で、小売で3割くらいの限界利益しかない。

日本で販売できるくらの品質・味のレベルで、ストーリーも良いため
すでにかなりの高級路線で販売しているのだが、
蜂蜜はケニア国内では飽和市場なので、市場価格が出来上がっている。
これ以上価格を上げると、
ケニア国内ではおそらく購入客数が減るだろうから、
小売価格をこれ以上大幅に上げるのは難しい。

にもかかわらず、蜂蜜の買取〜精製〜販売までの経路で、
こんなロスが起きて、改善を始めた。

1。買取価格が市場価格よりもかなり高い上、農家自身がマーケットに困っているからうちに買って欲しいと思っているにもかかわらず、うちの買取価格にしばらく合意せず、高値で買取していた。
= 買い叩くのはよろしくないが、適正価格の不理解が起こっている

2。農村での秤が正確ではなく、実際より多めに測って買い取っていて、最悪10%近くのロスが起きていた。
=農村チームと首都チームで、しっかり連携を取り、首都チームが蜂蜜を受け取った際に重量差があれば、きちんと指摘すべき

3。委託している精製先から、不明なロスが起きている。精製後のロスは8%程度の時もあれば、25%にもなることがあった。
=本来なら、ちゃんと記録を取ることも委託先の仕事だと思うが、そこまでは求められない。これまでもこちらで記録を取ってきたが、委託先にも緊張感を持ってもらえるような仕組みに強化すべき

4。スーパーに卸した場合、破損がスーパー側のせいであっても、スーパーは補償しない。
=破損分を稼ぐために、何個の蜂蜜を売らないといけないのか?利益額が1個40円しかないとすると、400円で卸した破損商品をリカバリーするために、10個売らなければならない。まさに利益率が低ければ、スーパーのミスを補填するために、私たちがしなくてはならない不毛な努力が増える、報われない努力をするということ

5。1-3までのロスを踏まえて、最悪シナリオで計算した場合、Sサイズの蜂蜜をスーパーに卸しても、私たちには何一つメリットがないということ(農家さんへのボランティアになる)。その上、スーパーの支払いは60日後であり、あまり儲からないのに60日も売掛にするほど不毛なことはないということ。

農村チームには、買取価格の交渉と秤の検査を。
精製委託先とのやり取りを担当している社員には、強化した仕組みのインストールを。
セールスチームには、「なぜ現状のままでは、スーパーにSサイズ蜂蜜を卸さないのか」の理解を。

数字を用いて、上記全て改善しなければ自分たちの努力は報われないという話をした。
農村の人がハッピーになっても、
安売り=低い利益で売る、をしていては、
頑張って売った人間の努力、報われないんだよ?

だから私は、
しっかり記録しなさいと言うし、
しっかり農家と交渉しなさい、と言うし、
突然蜂蜜のSサイズは、今スーパーに卸さない!
と号令をかけているんだよ、ということ。

気分で突然号令かけてるのではない。
気分で適当な仕事に注意してるのではない。

数字を見て、「全員の努力が報われるかどうか」
を判断基準にしている
、ということを理解してもらうよう、
時間をかけて、何度も説明させてもらっている。

私たちは、良い商品を売っている。
(そのために私は商品開発してんだ!)
だから、安売りしてはいけない。
利益率にこだわらなくてはいけない。

もちろん、
卵や米や、必需品のように作っても作っても需要が絶えないものは、
利益率が低いのも、自然の原理である。

安くたくさん売るという手法もある。

しかし付加価値をつけた「良品」を売るためには、
特に食品において、安売りはそもそも成立しない。

例えば、
「良品=無添加である」というコンセプトでピーナッツバターを売る。

当然、無添加のピーナッツバターは、
半年もすると油が分離してきてしまう。
食べても健康に全く問題はないが、
下の方が硬くなるので、スプレッドとしては使いにくくなる。

だから世界中に輸出されているピーナッツバター は、
Stabiliserとして、
動脈硬化に影響があり、環境問題の一員としても指摘されている、
世界でも最も安い食用油、パームオイルが混ぜられている。

油の分離が防げれば、
コンテナで輸出して、棚に並べられ、
消費者の手に届くまでに時間がかかっても、
製造初日と全く同じ状態を保てるからである。

天然らしさを生かした美味しいものであればあるほど、
早く売らなければならないし、
管理工数も増えるから、当然安売りは成立しないのだ。

「値付けは経営」
という言葉を耳にしてから、8年近くになる。
この言葉の意味がわかり始めたのは、
本当に最近のことだ。

しかし、わかり始めたからこそ、
面白いからこそ、
社員にも知って欲しいし、
同じ観点でディスカッションしたいと思う。

別に「経営者目線」を持って欲しいと思っているのではない。
全員経営者になるべきだとも思わない。
仕事に楽なものはないけれど、
経営者という仕事は責任が重いから、
私は好きでやってるけど、ぶっちゃけしんどいし孤独だ。

ただ、経営をすると、
サプライチェーン全体の仕組み
商品コンセプト
販売するということ
値付け
どれをとっても、一つ一つに哲学が必要で、
その深さと言ったら、計り知れない面白さがある。

努力は報われるべきだし、
経営者が報われない努力を推奨すべきではない。

だから、自分が学んだことは社員にも教えたいし、
全員努力した分は報われて欲しい。

結果、会社は成長すると思う。
そんなに単純ではないけどね。
ケニアでビジネス、難しい。
困難が多い。
ソーシャルビジネス、もっと難しい。
本当に、簡単ではない。

でも、良品・仕組み・値付け。
強固な基礎に基づいてやってれば、結果はついてくるだろう。

全員で「努力は報われる」
そう言えるように、夢を叶えたい。


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