面接で危ない目にあった話

アルバイトでも就職でも、このような面接には気をつけて頂きたいです。

二人一組で面接を受ける事になり、待機していると前の組の面接内容が聞こえ、なかなか圧迫気味な面接官であるようであった。

次の方と呼ばれ、気を引き締めドアノブに手を掛け開こうとした瞬間、突然内側から扉が開かれ引っ張られる形となった。
私はバランスを崩し盛大に回転した挙句、何故かグリコの走る人のポーズで片膝を着き面接官の正面に着地を果たした。

赤外線センサーをゴールテープと勘違いし突き進む頭のおかしいグリコのスパイのような動きをしてしまった。
しかも、入室時に
「しつれぃぼうっ!!」
などと「失礼します」が姿形を変え発せられた為に「失礼坊」という中国にでもいそうな訳のわからぬ妖怪まで生まれた。

面接室に不審な面接者と共に沈黙が訪れた。

しかし、むしろこれは何事にも動じぬ落ち着いた人間性をお見せするチャンスである。
地に落ちた第一印象の起死回生を図ろうと、グリコのポージングから真面目な表情を作り立ち上がったその瞬間、尻の方から布が引き裂かれる音が響き渡った。

尻が破けてしまった。
人間性ではなく、パンツをお見せする事態となった。
背後にいた共に面接を受ける者の視界にその瞬間が直撃し、彼は「うわあっ!!」と悲鳴をあげた。
明らかに私のパンツによる精神的ダメージが入っている。

パンツによる被害拡大を恐れタオルで隠す事にしたが、その際の声かけが
「尻が一皮剥けましたので、タオルで隠してもよいでしょうか?」
などと、私の尻が一つ大きな成長を遂げた様な言い草となってしまった。

どうぞ……と、面接官が許可したのでタオルを出したが、黄色地に大きく「無事です」とプリントされている災害用タオルであった。
何故よりによってこのタオルを持ってきてしまったのだろうか。
しかし他に手立てがない為、そっとタオルを巻いた。

誰も言葉を発さぬ張り詰めた空気の中、私の尻が無事を強めに主張している。
例え尻が無事であろうとも尻付近の布と我々は無事ではない。
特に共に面接を受ける者はしゃっくりも出始め、もうダメそうであった。

面接官は熱心に手元にある履歴書に目を向ける事でこの現実から少しでも離れ、冷静さを取り戻そうとしているようであった。
しかし、面接官の目に私のPR欄に書かれた
「粘り気が強い方です」
という謎のアピールが映った。
「粘り強い」と書いたつもりであった。
面接官は目頭を押さえ沈んだ。

もはや面接官よりも私の尻が面接を圧迫している。

皆が黙り震えるなか一人取り残され、私は窓から覗く空の透き通るような蒼を眺めた。
それは孤独という感情に似ていた。
私の尻も心なしかいつもより冷えている気がした。

しかも資格欄には、とりあえず手当たり次第に持っている武道の段を書き殴ったうえに、特技に
「喉突き」
などと書いてしまったが故に、非常に物騒な履歴書となっていた。
粘り気が強いうえに人の喉を的確に突いてくるなどと、もはや化け物の類いである。
私の履歴書は化け物図鑑の1ページと化し、先程の「失礼坊」の生態が記されている結果となった。

その後、特に圧迫される事なく面接は終わった。


【追記】
「よく見たら粘り気が強いって書いてあんじゃん…!!」
と、面接官の素の部分を垣間見た。
先程の高圧的な面接官と同じ人物とは思えぬ口調であった。
ヤベェ奴が来たと思った事であろう。

企業としては柔軟性を見るために敢えて圧迫面接をする所もあるそうだが、人格否定、暴言、セクハラ、差別発言など、その他諸々あまりにも酷い場合、ハローワーク、労働基準局、労働基準監督署に苦情申し立てや
相談ができる。
が、それらに如何程の効力があるかは私はやってみた事がないので分からない。

また、企業側から言っていないと言われる事が多いと思うので、ボイスレコーダーの持参や録音アプリなどを入れておくとよい。
入った後の明らかに条件が違うなど異議の時に役立つ。
必ずカバンの中やポケットに入れても撮れるかは事前にチェックは必須である。

何よりも、そんな面接官に会ってしまったら、出演料が貰えぬ限りはそんな所に長くいる必要はないので、辞退し退席してよい。

また、例えそのような事があっても、会って数分の者の言葉に傷つく事はない。
嫌な相手に当たった場合は道端のうんこが視界に入ったくらいに思う事をお勧めする。
うんこに一日中思いを馳せる事はないのである。

【追記の追記】
そして、面接の結果であるが、
勿論落ちた!!!!
そりゃ、粘り気が強く気を抜くと喉を突いてくる者が社内にいたら恐ろしかろう。
職場に野生の化け物が野放しと考えれば妥当である。

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