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おやすみ







きみよ

もう
おやすみ

もう
見ないでおけばいい

胸の鼓動が
ずきんと疼くから

涙はこぼさなくていい

今夜
小さな庭のすみっこで
薔薇の花が咲いたのを見たよ
音もなく咲き開いたのを

きみよ
もう 聴かないでおこう
遠い鳥たちの噂話など
あの鳥たちには
見えなくて
聴こえないものがある
どれほど大きく見せても
見えないものがあることを
知らないだけだから

だから
ほら
星空が泣いてるのも
きっと知らない
開いたばかりのバラが
濡れていること
そして
いのちを謳歌していたことも

あと
どれくらい?
ひとつ?
ふたつ?

いいの
もう
数えなくていいの

必ずやってくる
朝というあした
濡れたベールは脱いで
あたたかな光をまとってくるよ

あしたになれば
笑って会える
大丈夫って

そしてね
一日が始まるんだ

だから
ねえ
もう
今夜は
おやすみよ
          きみとふたりだけの物語を語ろうよ
        




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